更新日: 2023.05.22 年収
【推しの子】アイドルの給料は「20万円」!? 未成年でも「年金保険料」は引かれる? 手取りについても解説
本記事では、アイドルの給料の仕組みを例に、給料から天引きされるものを解説します。天引きされるものには、所得税や住民税、健康保険料、厚生年金、雇用保険などがありますが、月の給料が20万円(年240万円)の場合、これらが引かれた後の手取りはいくらになるでしょうか。アイドルに多い未成年の場合でも説明します。
執筆者:二角貴博(ふたかど たかひろ)
2級ファイナンシャルプランナー
アイドルの給与収入
給与収入には額面金額と手取り金額があります。額面金額から、健康保険や厚生年金などが天引きされたものが手取り金額となると考えましょう。
【推しの子】では、人気アイドルグループB小町の星野アイの月給が20数万円と描写されるシーンがあります。少ないように思えますが、アイドルグループではCDの歌唱印税やテレビ出演料はメンバーの人数で山分けされ、所属事務所の取り分もあると描かれています。
個人で活躍する超売れっ子アイドルのような場合を除けば、アイドルの給料事情はなかなか厳しいのかもしれません。今回は、昼間は全日制の高校に通う未成年アイドルを例に考えてみましょう。
給与から天引きされるもの
給与から天引きされるものには、次のようなものがあります。月の額面給与は20万円として計算しています。
(1)厚生年金保険料
未成年といえども会社に雇用された従業員であれば、原則厚生年金保険料を払わなければならず、加入年齢に下限はありません。厚生年金は、原則65歳以降から年金の受給が可能となるので老後の生活に役立ったり、未成年でも厚生年金加入中に障害認定を受けたときなどに障害厚生年金を受けられたりします。
保険料額は、額面給与の18.3%で3万6600円、労使折半となるので半額の1万8300円が天引きされます。
(2)健康保険料
健康保険は、病気やけがをしたとき、亡くなったとき、出産したときなどに医療給付や手当金で生活を安定させることを目的とした制度で、年収130万円以上で、一定基準以上の週の労働時間や月額賃金があれば、未成年の学生であっても自分で健康保険料を払わなければなりません。
保険料額は、額面給与の10%で2万円、労使折半となるので半額の1万円が天引きされます。
(3)雇用保険料
雇用保険は、労働者の生活や雇用の安定のための保険で、失業した際に給付や職業訓練を受けられたり、育児休業給付などを受けられたりします。ただし、原則として学生は加入しません。本人の負担する金額は、額面給与の0.6%で1200円です。
今回のシミュレーションでは、昼間は高校に通っている高校生アイドルという設定なので、雇用保険には加入せず雇用保険料の天引きもありません。
(4)所得税
所得税は、毎月給与から源泉徴収されます。課税される額は額面金額から年金や健康保険の保険料を差し引いた額に対してです。
上記で見てきた通り、厚生年金保険料、健康保険料は合計2万8300円なので、保険料などを差し引いた額は、20万円-2万8300円=17万1700円となり、この金額で「扶養なし」の場合、所得税は3770円です。
(5)住民税
住民税も所得税と同様に年間の所得に応じて課税されます。ただし、住民税は前年の所得によって税額が決まり、1年遅れて支払う点が所得税とは異なります。未成年の場合、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与収入のみの場合204万4000円未満)の場合は課税されませんが、今回は月の給料が20万円(年240万円)という設定なので、課税されます。
年間の所得が240万円の場合、住民税は年間11万9500円、月額で9958円です。
(6)介護保険料
40歳以上になると介護保険料が天引きされます。今回は未成年のため関係ありません。
天引き後の手取り金額
(1)から(6)を考慮すると、月の額面金額20万円の未成年アイドルが受け取る手取り額は以下のようになります。(1)から(6)のうち天引きされないものは、(3)雇用保険料、(6)介護保険料です。
20万円-(1万8300円+1万円+3770円+9958円)=15万7972円
天引き後の手取り金額は約16万円となります。
天引きされるものの意味を把握しておこう
給与からの天引きは、上記のように法律で定められたもの以外でも、社員が天引きで支払うことに同意したものの場合は天引きが可能です。例えば【推しの子】では衣装代は天引きとされています。このほかにもレッスン料などもあるかもしれません。
なお、給料は未成年でも本人が受け取るもので、親は受け取れないことが決まっています。
本記事は【推しの子】に登場するアイドルを通して、給料の額面金額と手取り金額、天引きされるものについて解説しました。未成年でも必要なお金はしっかり天引きされます。給与明細を見ながら、天引きされているお金の意味やどんな時に役立つものなのかを普段から意識しておくとよいですね。
出典
日本年金機構 厚生年金保険料額表 保険料額表(令和2年9月分~)
全国健康保険協会 令和5年度保険料額表(令和5年3月分から) 東京都
厚生労働省 雇用保険料率について 令和5年度の雇用保険料率
執筆者:二角貴博
2級ファイナンシャルプランナー