昇給しても手取りで「1万円」しか増えませんでした……。昇給額の平均っていくらですか?
配信日: 2023.12.10 更新日: 2023.12.13
昇給について気になる疑問を解決するため、昇給の金額について考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
手取り1万円の昇給は全体で見ても高い方である
一般社団法人日本経済団体連合会によれば、平均賃金方式で労働組合が要求・交渉を行った企業について、2023年春季の賃金引き上げ額の加重平均は、1万923円でした。仮に78%が手取りになると考えると、およそ8519円です。手取りで1万円という額は決して少ないものではなく、むしろ高いものだといえるでしょう。
また、従業員数300人未満の中小企業の平均においては、賃上げ分が明確に分かる企業では5104円となっています。手取り換算すると3981円と、1万円の半分以下です。
中には昇給がない、あるいは総支給で1000円や2000円の昇給になる中小企業も珍しくはないでしょう。
その点を考えると、手取りで1万円の昇給は「手取りで1万円しか」ではなく「手取りで1万円も」昇給したと考えていいでしょう。
昇進に伴う昇給であれば少ない
もし、手取りで1万円昇給するきっかけが、昇進など役職がついたことや、役職の格が上がったことであれば、その金額は少ないといえるかもしれません。
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によれば、部長級の賃金は平均して58万6200円、課長級で48万6900円、係長級で36万9000円、非役職者28万1600円です。これを参考にする限り、役職が一つ上がるごとに平均賃金はおよそ10万円前後増加していることが分かります。
もし今回の昇給が、役職がついたあるいは昇格したことに伴うものであれば「1万円しか増えない」という嘆きも納得できます。
昇給が少ない場合の転職はあり? なし?
「昇給が少ない」と感じたときに、転職が頭をよぎるのは珍しいことではありません。求人情報・転職サイトdodaの転職理由ランキング(2021年7月~2022年6月の転職者から集計)によれば、転職のきっかけは、「給与が低い・昇給が見込めない」が1位で32.8%、次いで2位が「昇進・キャリアアップが望めない」で25.2%となっていました。
ただし転職しても、必ずしも昇給額が高い職に就けたり給与が上がったりするなど、好転するとは限りません。厚生労働省の「令和3年雇用動向調査」によれば、転職・入職によって賃金が増加した方は34.6%となっています。それに対して、賃金が減少した方はそれよりも多い35.2%となっています。変わらないと答えたのは29%です。
これを見る限り、少なくとも全体の半数以上が、転職しても賃金が上がっていないことが分かります。これでは転職しても今後の昇給はあまり期待できません。
昇給が少ないことを理由に転職する場合、転職先の状況についてよく調べるべきです。安易に行うべきではないでしょう。手取りで1万円も昇給できるような職場であるならばなおさらです。
まとめ
昇給が手取りで1万円というのは、決して少ない額ではないようです。むしろ平均より多い金額であり、昇格でもしない限りこれ以上の昇給を望める職場は相当限られてくるでしょう。
昇給額を増やすために転職しても、そもそも給与自体が上がらないことも珍しくはないため、転職には慎重になる必要がありそうです。
「今年は手取りで1万円しか昇給していない」と落胆しているのであれば、一度親や周囲の人に、昇給について話を聞いてみてもいいかもしれません。きっと自分が良い環境にいることを実感できるでしょう。
出典
doda 転職理由ランキング【最新版】 みんなの本音を調査!
厚生労働省 令和3年雇用動向調査 結果の概要「4 転職入職者の状況」
厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況「(7)役職別にみた賃金」
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執筆者:柘植輝
行政書士