更新日: 2021.11.01 年収
年収850万円以上の人がぶつかる「3つの壁」とは~高所得者の税金・年金~
年収850万円を超えるのは概ね1割程度。
他人から見ると羨ましく見える収入レベルではありますが思わぬ落とし穴も。
今回は年収850万円の壁について解説します。
執筆者:マネラボ(まねらぼ)
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1つめの壁。2020年から増税に
給与収入を有する人は、給与収入金額から給与所得控除額というみなし経費を差し引いた金額が所得税、住民税の計算の基となる所得金額となります。
平成30年現在、給与収入が1,000万円を超える場合、最高220万円の給与所得控除額を差し引くことができます。この給与所得控除額が、2020年から給与所得控除額が一律10万円引き下げとなり、さらに給与収入850万円を超える場合の給与所得控除額は195万円となります。
850万円を超える収入を有していても、23歳未満の扶養親族を有する世帯や特別障害者がいる世帯場合には現行と同程度の税負担となります(詳細は割愛)が、それ以外の独身世帯、DINKS世帯、子育て終了世帯等は増税となります。なお、個人住民税は2021年度からの増税となります。
2つめの壁。老後の年金「加給年金、振替加算」
生計を維持する配偶者や子の年収が850万円以上である場合、年金が加算されなかったり、支給されない場合があります。
例えば、老齢厚生年金の配偶者加給年金。
厚生年金に20年以上加入する者が老齢厚生年金を受給する場合、自身の老齢厚生年金の支給開始から配偶者が65歳に達するまで、年間約39万円の加給年金が支給されますが、配偶者の年収が850万円以上である場合、加給年金は支給されません。
なお、年収は前年(前年分が確定していない場合は前々年)で判断されます。
近い将来(おおむね5年以内)に定年退職等で年収が850万円未満となることが確実とされる場合には支給される可能性もありますが、加給年金の対象となる者(例:妻)にある程度の給与収入がある場合には支給されない可能性があります。
なお、加給年金の対象となる昭和41年4月1日以前生まれの配偶者には振替加算が支給されますが、振替加算にも850万円基準が適用されます。
3つめの壁。遺族年金
遺族基礎年金は死亡した者に生計を維持されている子のある配偶者、または子に支給されますが、この配偶者および子の年収が850万円未満であることが要件となっています。
共働き世帯で、夫が死亡したとき、妻の給与収入が850万円以上である場合、妻が死亡したとき、夫の給与収入が850万円以上である場合には遺族基礎年金は支給されません。
なお、遺族基礎年金が支給されないこととなった場合、その後年収が850万円未満に減った場合でも、遺族基礎年金は支給されません。
反対に、年収が850万円未満であり、遺族基礎年金が支給されることとなった場合、その後年収が850万円以上に増えた場合でも、遺族基礎年金の支給が打ち切られることはありません。
なお、850万円の壁は以下の遺族年金でも適用されます。
1.寡婦年金
国民年金の遺族給付。要件を満たす60歳以上65歳未満の妻に支給。
2.遺族厚生年金(報酬比例部分)
厚生年金被保険者である者、老齢厚生年金の受給資格を満たした者等が死亡した場合に要件を満たす遺族に支給。
3.遺族厚生年金の中高齢寡婦加算
死亡した者に生計を維持されており、要件を満たす40歳以上65歳未満の妻に支給。
4.遺族厚生年金の経過的寡婦加算
死亡した者に生計を維持されていた、昭和31年4月1日以前に生まれた妻に65歳以降に支給。
850万円という年収は区切りがよい数字ではないため、あまり注目されませんでしたが、今後は注目度が高い数字になりそうです。
その本人にしてみれば悩ましい問題ですが、年収が高いための悩みのため、他人に打ち明けにくいですよね。850万円以上の収入がある場合、税負担が重く、社会保障が薄いことを念頭におき、必要に応じて、家計や老後設計、保障設計を見直して、改善を図りましょう
Text:益山真一(ますやま しんいち)
ファイナンシャルアカデミー認定講師
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