4月で社会人2年目です。先輩から「2年目からは手取りが減る」と言われているのですが、どのくらい減るのでしょうか? 年収は「310万円」でした
配信日: 2024.03.03 更新日: 2024.03.04
会社員の場合、確定申告をした経験がないことも多く、税金について知る機会が少ないかもしれません。会社から受け取る給与明細や源泉徴収票の見方がわからないという人は税金について学んでおくことも重要です。この記事では、社会人2年目の手取りが減る理由を「所得税」と「住民税」の2つの税金を中心に解説します。
執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)
CFP、行政書士
2年目に手取りが減る理由は「住民税」
結論から言うと、社会人2年目から手取りが減る理由は「住民税」が天引きされるからです。具体的に言えば、2年目の6月から手取りが減ります。
会社員として働いている場合、大まかに言えば「所得税」と「住民税」の2種類を納めなければなりません。住民税だけ2年目から天引きとなるのは、所得税と住民税は納付タイミングが異なるからです。図表1の通り、所得税と住民税は納付タイミングが約1年ずれることになります。
図表1
筆者作成
所得税は、社会人1年目でも毎月の給与から天引きされています。ただし、この納付額は年間の支払金額が決まっていない段階なので概算金額です。1年間の支払額が確定する12月に個人の状況に応じた控除を行って正確な税金を計算します。これが「年末調整」と言われるもので、会社員であれば経験があると思います。
住民税も課税対象となる金額は1月~12月の年収から計算しますが、実際の納付は翌年6月からその次の5月までの期間で均等に徴収されます。社会人2年目から手取りが減るのはこれが原因です。
ただし、これは一般的な会社員の納付方法(特別徴収といいます)なので、自営業や、給与所得者でも特別な理由がある場合は納付方法が異なる場合があります(普通徴収)。
年収310万円なら手取りが毎月1万円減る
所得税や住民税はどのように計算するのでしょうか?
簡単に説明すると、年収から税額の負担を軽減する金額(所得控除や基礎控除など)を差し引いた課税所得金額に税率をかけます。実際の計算はもっと複雑ですが、ここでは簡易的な計算で概算を出してみましょう。
税額=(年収-所得控除)×税率
所得税の税率は課税所得金額が大きくなるほど税率が上がる、いわゆる累進課税方式をとっており、5%(課税所得194万9000円まで)から45%(課税所得4000万円以上)の税率となっています。住民税の標準税率は10%です。なお10%の内訳は道府県民税4%、市町村民税6%で、一部地域は配分が異なります。
それでは、実際に社会人2年目に住民税が引かれると手取りがいくら減るのかを計算してみましょう。今回のケースでは年収310万円で、給与所得控除、基礎控除、および社会保険料控除(給与の15%と仮定)を考慮して計算します。なお、住民税の均等割りなどは考慮していません。
年収:310万円
給与所得控除:310万円×0.3(30%)+8万円=101万円
基礎控除:43万円
社会保険料控除:310万円×0.15(15%)=46万5000円
課税所得金額:310万円-101万円-43万円-46万5000円=119万5000円
住民税:119万5000円×0.1(10%)≒12万円(/年)≒1万円(/月)
つまり、年収310万円だと毎月1万円程度、手取りが少なくなる見込みです。
税金の簡単な知識を学んでおきましょう
「あれ、手取りが減っているのはなぜ?」となるかどうかは、税金に関する少しの知識の違いによるものです。なかには住民税が引かれるようになったことにも、気がつかない人もいるかもしれませんね。
会社員でも企業型確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)、医療費控除など、節税する方法がたくさんあります。
少しの知識の違いが、長い時間をかけると大きな金額の違いになることもあります。社会人になったばかりの人は、自分の給与明細をじっくり見るところからでも構いませんので、働いてもらったお金について考える時間を作ってみてはいかがでしょうか。
出典
総務省 個人住民税
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1410 給与所得控除
執筆者:御手洗康之
CFP