ニュースでは「昇給率5%超」なのに、自分は2%で「年10万円」アップ程度! 40代で年収500万円台だけど、これって普通? 中小企業の“賃上げ実態”とは
特に40代は生活費や教育費など支出がかさむ時期でもあり、期待ほどの昇給がなかった場合の失望感も大きいものでしょう。報道される「5%超の賃上げ」と、現実のギャップはどこにあるのでしょうか?
本記事では、中小企業の賃上げの実態を、2025年の春闘結果とのギャップも見ながら解説します。
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2025年春闘での賃上げ率は5%超え
2025年の春闘では、連合(日本労働組合総連合会)の第5回集計(2025年5月2日時点)によると、平均賃上げ率は5.32%となりました。これは前年の同時期(5.17%)を0.15ポイント上回る結果で、2年連続の5%超えです。
注目すべきは、中小企業の賃上げも高水準である点です。組合員数300人未満の組合では、平均賃上げ率が4.93%と、前年(4.66%)より0.27ポイント上昇し、5%目前となっています。
賃金が5%上昇した場合にはいくら年収が上がる?
実際に「5.32%の賃上げ」が、年収にどの程度のインパクトを与えるのかを見てみましょう。
年収500万円の人が5.32%の昇給を受けた場合、昇給金額は次のとおりです。
・500万円×5.32%=26万6000円
年間で約27万円の収入アップですので、毎月の手取りで1~2万円程度の増額が期待できます。
しかし、これはあくまで春闘での平均値を反映した理論上の計算であり、誰もがこのような昇給を受けられるわけではありません。
過去の賃金上昇率は高くても2%程度
ここからは、過去の推移も含めて現実を見てみましょう。
厚生労働省によると、日本の民間企業の昇給率は2000年代初めから2022年ごろまで、1~2%程度にとどまっています。この2%という水準は、年収500万円の場合では、ちょうど10万円です。
「賃金5%アップ」は中小企業全体ではない
冒頭で、春闘での賃上げ率が5.32%と記しました。ここで重要なのが、春闘における賃上げ率は全企業の平均ではなく、春闘にて交渉を行った一部の組合の集計結果だという点です。
連合の2025年春闘における第5回集計に参加した組合は約3800組合のみですが、日本全体の労働組合の数は2万を超えます。つまり、大多数の組合は春闘の枠組みに入っておらず、この賃上げ率の集計には入っていません。
そもそも、日本の中小企業の多くには労働組合が存在せず、会社に対して組合を通じて昇給の交渉がなされていないのが現状です。
まとめ
春闘では「賃上げ率5.32%」という過去最高水準の賃上げが報じられました。例えば、年収500万円の人が5%の昇給を受ければ、年間で約27万円の収入増となりますが、実際には昇給率が2%程度、つまり年間10万円ほどの増加にとどまるケースも少なくありません。
さらに、「賃上げ率5.32%」は労働組合のある企業のうち、春闘に参加している一部の企業の集計結果にすぎません。日本の中小企業の多くには労働組合が存在せず、春闘にも参加していないのが実情です。
そのため、「5%昇給」という数字は、日本の労働者全体の実態を反映しているとはいい難く、ごく一部の企業に限られた現象だといえるでしょう。
したがって、40代で年収500万円台、昇給率が2%程度というのは、必ずしも低すぎるわけではありません。むしろ、現在の中小企業を取り巻く環境や実情を踏まえれば、現実的な水準の場合もあるでしょう。
出典
連合(日本労働組合総連合会) 中堅・中小組合の健闘が続く! 短時間等労働者の時給引き上げ率は一般組合員を上回る! ~2025春季生活闘争 第5回回答集計結果について~
厚生労働省 令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況
厚生労働省 令和6年労働組合基礎調査の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
