大手企業の「賞与・月給の一本化」が話題に! 賞与廃止の裏には“社会保険料カット”という思惑が? 企業の「ボーナス廃止」への狙いとは
さらに、大和ハウス工業やバンダイといった名だたる企業も同様の動きを見せており、「賞与の月給化」に注目が集まっています。「ボーナス廃止」と聞くと、どうしてもマイナスの印象を受けがちですが、実は企業側には戦略的な狙いがあるようです。
本記事では、「賞与と月給の一本化」がなぜ進んでいるのか、企業の狙い、そしてメリット・デメリットについて解説します。
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初任給35万円も、若手人材の確保に動く大手企業
若手人材の確保をめぐり、大手企業が待遇の見直しを加速させています。例えば、大和ハウス工業は2025年度から初任給を大幅に引き上げ、大学卒で月額35万円とする方針を打ち出しました。
公式サイトでは、「意欲的に能力を発揮できる環境整備」や「中長期的に事業の成長を担う人財の確保」を目的としており、採用競争の激化を見据えた戦略的な対応といえます。
こうした動きは、ソニーグループやバンダイなどほかの大手にも広がりつつあり、賞与を月給に組み込む「給与の一本化」とあわせて、基本給や固定手当など「月例給与」の安定性を打ち出すことで、就職先としての魅力を高める狙いがあるようです。
賞与廃止の裏に“社会保険料カット”という思惑
賞与の月給化には、社会保険料に関する会社負担を抑えたいとの思いもあるようです。同保険料は、毎月の給与に加え、年2回支給される賞与にも別途かかります。つまり、賞与を廃止し月給に一本化すれば、年14回かかっていた社会保険料の計算が、年12回分に軽減されることになります。
特に厚生年金の保険料には「標準報酬月額」の上限があり、2025年度時点では月額65万円が上限とされています。そのため、毎月の給与が65万円を超えても、それ以上は保険料に反映されず、一定の“節約効果”が生まれる仕組みになっているのです。
図表1は、東京都在住・40歳未満・扶養なしの条件で、2024年度の年収1000万円のケースを想定し、月給一本化と従来型(基本給+賞与)それぞれの社会保険料額(2024年度の保険料率で計算)を比較したものです。
図表1

筆者作成
今回の試算では、ボーナスなしのほうが年間で約15万円手取りが多くなる結果になりました。企業側も同額を負担しているため、一人あたり約30万円のコスト削減につながります。
こうした“見えにくいコスト削減効果”も、賞与の月給化導入の後押しとなっているのかもしれません。
「賞与と給与一本化」のメリットとデメリット
「賞与と給与の一本化」には、企業側の狙いがあり、一定の効果が期待できますが、懸念点もあります。ここでは、メリットとデメリットを整理します。
メリット
・社員は毎月の給与が増え、収入が安定する
・賞与にかかっていた社会保険料が減るため、手取りが増える
・年収が高い人ほど、厚生年金の上限により節税効果がある
・企業側は人材確保や社員の定着につなげやすい
デメリット
・業績に応じた評価が反映されにくくなる
・まとまった金額(ボーナス)を前提にしていた支出計画が変わってくる
・毎月の生活水準が上がりやすく、支出も増える可能性がある
・企業にとっては、業績が悪化しても給与を柔軟に調整しづらくなる
まとめ
「ボーナス廃止」という言葉はインパクトがありますが、実態としては“賞与と給与の一本化”という給与体系の見直しです。人材獲得競争が激化する中で、優秀な人材を確保しやすくする狙いや、社会保険料の負担を抑えるといった企業側の戦略が背景にあると考えられます。
今後、こうした動きはほかの企業にも広がっていく可能性があります。求人情報をチェックする際には、初任給の金額だけでなく「賞与があるのか」「給与にすでに含まれているのか」といった点にも注目しておくと、実際の年収や手取り額を正しく把握しやすくなるでしょう。
出典
厚生労働省 標準報酬月額の上限
全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険料額表(東京都)
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク 令和6年度の雇用保険料率
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

















