「ボーナスの給与化」で、産休・育休の給付金が“80万円”以上もアップ!? 同じ「年収480万円」の差額はどれくらい? 給与化の「あり・なし」の場合でシミュレーション

配信日: 2025.06.28 更新日: 2025.10.21
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「ボーナスの給与化」で、産休・育休の給付金が“80万円”以上もアップ!?  同じ「年収480万円」の差額はどれくらい? 給与化の「あり・なし」の場合でシミュレーション
近年、ソニーやバンダイなどの大手企業で「ボーナスの給与化」が行われています。「ボーナスの給与化」とは、ボーナスの全部または一部をなくし、その分を毎月の給与に振り分けて支給する方法で、中小企業でも採用するケースが増えているようです。
 
「ボーナスの給与化」は、社会保険の給付金にどのような影響があるのでしょうか? 本記事では、ボーナスを給与化することにより、産前産後休業および育児休業の給付金の額がどれくらい変わるのかを解説します。
橋本典子

特定社会保険労務士・FP1級技能士

社会保険の給付金とボーナスの関係

まずは、社会保険の給付金とボーナスの関係について確認しておきましょう。健康保険や雇用保険の給付金には、出産手当金、傷病手当金、育児休業給付、(失業時の)基本手当など、さまざまなものがあります。これらの給付金は、被保険者の賃金が減少したり無給になったりしたときに、生活の保障として支給されるものです。
 

給付金の計算方法

生活保障としての給付金ですから、その額は「被保険者が、それまで受けていた賃金」を元に計算されます。そのため、この計算に用いられるのは「毎月の給与」であり、臨時の賃金であるボーナスは算入されません。
 

出産・育児期の給付金

例として、出産・育児休業中の給付で考えてみましょう。産前産後休業と育児休業を取得した女性被保険者は、一定要件を満たせば次の給付を受けることが可能です。

●出産手当金(産前42日、産後56日)
●育児休業給付金(産前産後休業後、子が1歳に達する日の前日まで)
●出生後休業支援給付金(一定期間内に最大28日)

これらの給付金額は、次のように計算されます。

●出産手当金:(休業開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均額/30日)×2/3
●育児休業給付金・出生後休業支援給付金:(休業開始日前6ヶ月の賃金/180日)×給付率

どの給付金も、受給額は毎月の給与額によって決定され、ボーナスは計算に加味されません。そのため「ボーナスの給与化」が行われれば、こうした給付金額は増加することになります。
 

年収480万円のケースで比較

ここからは、「ボーナスの給与化が行われた」場合と「ボーナスの給与化が行われていない」場合を比較して、給付金がどれだけ増加するかを、概算で比較してみましょう。
 
比較するのは次の2パターンで、どちらも年収は480万円です。

●月給30万円+ボーナス4ヶ月分(標準報酬月額の平均額30万円)
●月給40万円+ボーナスなし(標準報酬月額の平均額41万円)

 

条件

●女性被保険者が出産予定日に出産した
●子が1歳になるまで育児休業をした
●出生後休業支援給付金の要件に該当し、28日分の加算あり

 

ボーナスの給与化が行われていない場合

出産手当金:(標準報酬月額30万円/30日)×2/3=1日当たり6667円
6667円×98日=65万3366円
 
育児休業給付金:休業開始時賃金日額1万円
1万円×180日×67%=120万6000円
1万円×123日×50%=61万5000円
 
出生後休業支援給付金:休業開始時賃金日額1万円
1万円×28日×13%=3万6400円
 
(合計)出産手当金65万3366円+育児休業給付金182万1000円+出生後休業支援給付金3万6400円=251万766円
 

ボーナスの給与化が行われた場合

出産手当金:(標準報酬月額41万円/30日)×2/3=1日当たり9113円
9113円×98日=89万3074円
 
育児休業給付金:休業開始時賃金日額1万3333.333….円
1万3333円×180日×67%=160万8000円
1万3333円×123日×50%=82万円
 
出生後休業支援給付金:休業開始時賃金日額1万3333.333….円
1万3333円×28日×13%=4万8534円
 
(合計)出産手当金89万3074円+育児休業給付金242万8000円+出生時休業支援給付金4万8534円=336万9608円
 

ボーナスの給与化による差額

計算の結果、「ボーナスの給与化が行われていない場合」の総支給額は251万766円、「ボーナスの給与化が行われた場合」の総支給額は336万9608円となり、その差は85万円を超える結果となりました。
 

まとめ

「ボーナスの給与化」が行われると、出産手当金や育児休業給付等の支給額は増加します。ただし、被保険者にとって必ずしも得になるとは限りません。
 
「ボーナスの給与化が行われていない」場合、産前産後休業や育児休業中でも、ボーナスが支給されることがあります。休業期間中に給与が支給されると、給与額によっては給付金が支給調整されることがありますが、ボーナスはいくら支給されても給付金は調整されないからです。
 
仮に4ヶ月分のボーナスが支給されたとすれば、本記事で算出した給付金の差額を大きく超える結果になります。被保険者にとって得か損かは、会社の制度を総合的に勘案しないと分からないものですね。
 

出典

全国健康保険協会 出産手当金について
厚生労働省 育児休業等給付の内容と支給申請手続
 
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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