30歳で結婚し「専業主婦」になる友人。旦那さんは「年収800万円」らしいですが、今は“共働き”のほうが多いですよね?「過去44年の推移」とリスクを解説
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
「専業主婦世帯」は、減少し続けている
まず、ここ40数年間で「専業主婦世帯」の割合はどのように変化していったかを確認してみましょう。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調べによると「専業主婦世帯」は昭和55年(1980年)の1114万世帯から時代を下るごとにほぼ一貫して減り続け、最新の統計である令和6年(2024年)においては508万世帯と半分以下になりました。一方で「共働き世帯」は、同時期に614万世帯から1300万世帯へと2倍以上に増加しています(図表1)。
結果として、現在においては共働き世帯が専業主婦世帯の約2.6倍も存在する状態になっています。これは劇的な変化であると言えるでしょう。
図表1
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 早わかり グラフでみる長期労働統計
さらに、国立社会保障・人口問題研究所による最新の「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、未婚女性の理想・予想のライフコース、また男性がパートナーに望むライフコースにおいても「専業主婦コース」は大きく減少しています。
図表2
国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査) レポートを一部加工
詳しく見ていくと、「女性の理想ライフコース」については2000年代に一度「専業主婦コース」の希望が増えた時期がある一方、「男性がパートナーに望むライフコース」では一貫して、また急激に「専業主婦コース」の希望が減少していることが特徴的です。
現代において「専業主婦世帯」の割合が急激に減っている理由は、女性自身が専業主婦にならないことを望んでいるという面よりも、男性がパートナーに共働きであることを希望しているという面が強いと言えるかもしれません。
「世帯年収800万円」の専業主婦世帯は、安泰と言えるか?
総務省統計局のまとめた家計調査によると、2024年度平均の「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」において、年収800万円・月(1ヶ月あたり実収入約66万7000円)の世帯は、世帯を所得の低いほうから高いほうに並べそれぞれの世帯数が等しくなるように10等分した「年間収入十分位階級」は、おおよそ上から4番目に位置します。
これは上位から数えて30~40%であり、全体としては「中の上」程度の収入を得ている世帯に当たりますが、すべての収入を夫に依存しているという状況は、労働力の流動化がいちじるしい現代日本においては特に不安定であると言わざるを得ません。
夫が肉体的・精神的な事情により働けなくなるリスクに加え、職場のリストラなどによる収入低下などが考えられる場合は、女性パートナーが子育て中で勤務が困難である場合などは別として、可能な限り収入を得られるようにしておくことが無難でしょう。
ちなみに、以上の年間収入十分位階級で上から4番目の層において、「世帯主の配偶者のうち女性の有業率」は67%に達し、世帯年収が高いほど、その率は上昇する傾向にあります。世帯年収が800万円程度であっても、専業主婦世帯である家庭はすでに3世帯に1世帯程度の少数派になっていることは、現代日本を象徴するような現象のように見えます。
かならずしも生活様式を「多数派」に合わせていく必要はありませんが、結婚後に専業主婦となることを希望する場合は、その際に発生する経済的なリスクを理解するとともに、場合によっては自営・就職を問わずに収入を得ていけるためのスキルなどを養っていくほうが良いように、筆者には思えます。
まとめ
「専業主婦世帯」は1980年代から現在にかけて数を減らし続け、現在は「共働き世帯」の4割未満になっています。また、専業主婦世帯になることを希望する人も、男女ともに減少を続けており、今後はさらに「共働き世帯」が当たり前になっていくと予想されます。
インフレによる生活費の上昇が心配される現代においては、女性が結婚後に専業主婦となる場合であっても、場合によっては働きに出ることや自営業を営むことができるよう、準備を怠らないほうが無難でしょう。
出典
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 早わかり グラフでみる長期労働統計
国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査 第I部 独身者調査の結果
総務省統計局 家計調査 2024年 家計収支編 二人以上の世帯
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント


