「会社辞めて公務員になりたい」と、新卒入社3ヶ月の息子から相談が。「1年目なのに残業ばかり、毎日定時で帰りたい」と言うけれど、公務員になれば叶う?“元地方公務員”の筆者の体験も交え解説
本記事では、公務員になれば、残業せずに毎日定時で帰れるのかを、元地方公務員である筆者の体験も交えて解説します。さらに公務員と会社員の平均年収なども紹介しますので、参考にしてください。
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公務員なら毎日定時に帰れるのか
公務員には、残業がないようなイメージを抱く人も多いかもしれません。しかし、実際には定時で帰宅できるとは限らず、日常的に時間外勤務を命じられることがあります。
公務員には国家公務員と地方公務員がありますが、どちらに就職しても、時間外勤務があることに変わりありません。例えば、地方公務員の場合、令和5年度の時間外勤務時間は、図表1のとおり年平均141.1時間、月に直すと12時間ぐらいです。
図表1
総務省 地方公務員における働き方改革に係る状況 地方公務員の平均時間外勤務時間数(直近3年分)
直近では時間外勤務の時間数が減少していますが、それでも年140時間台で推移しています。さらに月12時間程度といっても、これはあくまで平均の時間数に過ぎません。
業務の状況によっては、一般的な上限とされる月45時間を超える時間外勤務や、中には月100時間を超える職員もいます。実際に月45時間を超える勤務があった職員は全体の5%ぐらいで、特別に珍しいわけではないと言えます。
元地方公務員の筆者も、働き盛りだった30歳代後半から40歳代にかけては、月100時間以上の時間外勤務を何度も経験しました。忙しい職場に勤務していた際は、そのような職員がまわりに一定数いたのを記憶しています。
ちなみに、国家公務員に関しても、令和5年の時間外勤務は、地方公務員より多い年平均230時間です。職場によって差はありますが、少なくとも「公務員になれば残業しなくていい」という認識は、改めたほうがいいでしょう。
公務員と民間企業だと年収はどう違うのか?
年収については、民間企業から公務員に転職するメリットがあるのでしょうか。地方公務員を例に、民間企業の年収と比較してみましょう。
まず、総務省の「地方公務員給与実態調査」によれば、2024年の一般行政職の平均給与月額は、図表2のとおり40万2761円です。ボーナスを4.6ヶ月分と想定しシンプルに計算すると、年収は40万2761円×16.6月=約668万5000円になります。
図表2
総務省 令和6年地方公務員給与実態調査結果等の概要 団体区分別平均給与月額(一般行政職・R6)
一方で、国税庁が公表している「令和5年分民間給与実態統計調査」によれば、民間企業の給与所得者5076万人の平均年収は460万円です。公務員に比べ、200万円ほど低くなっており、全体で見れば、公務員の年収には魅力があると言えます。
ただ、民間企業の年収に関しては、会社の規模や業種などにより大きな差があり、公務員の平均年収を上回る業種もあるほか、年収が1000万円を超える人の割合も全体の5%以上います。そのため、今勤めている民間企業によっては、公務員に転職しても必ず年収が増えるとは限りません。
年代別で年収に傾向はあるのか
民間企業と公務員の年収について、年代別の傾向はあるのでしょうか。実は年代が高いほど年収が増える傾向は、民間企業も公務員もあまり変わらず、働き始めた20代前半と、年収がピークとなる50代後半では倍近い差があります。
例えば、都道府県の地方公務員の場合、大卒1年目の一般行政職の年収は、300万円を超える程度で、ピークである経験年数30年以上となる50歳代の半分以下です。
民間企業も、20代前半の平均年収は267万円、50代後半はその倍の約540万円になります。年功序列のイメージは公務員のほうが強いですが、民間企業であっても、経験を重ねることで、年収が増えることに変わりはありません。
まとめ
就職した子どもから「残業したくないので会社を辞めて公務員になる」と言われると、親の立場からは「せっかく就職したのにもったいない」と思うかもしれません。さらに、公務員になっても残業があることに変わりはなく、「毎日定時で帰りたい」という希望が叶うかどうかは分かりません。
ただ、公務員へ転職すれば、比較的高い水準で安定した収入を継続して得られ、社会的な信用も高まるメリットがあります。採用試験などで、希望しても公務員に転職できるかどうかは分かりませんが、働き方に関する価値観は世代間で差があるでしょう。
まずは、子どもの意思を尊重しながらご自身の体験談をお話しするなどして、相談に乗ってみてはいかがでしょうか。
出典
総務省 地方公務員における働き方改革に係る状況
人事院 超過勤務
総務省 令和6年地方公務員給与実態調査結果等の概要
国税庁 令和5年分民間給与実態統計調査
執筆者 : 松尾知真
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