大学4年の息子が「将来安泰な地方公務員を目指す」と言います。せっかくなら国家公務員のほうがよさそうですが、給料はどのくらい違うのでしょうか?
しかし、せっかくなら国家公務員を目指すほうがよいように思うのですが、給料はどのくらい違うのでしょうか。
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
国家公務員と地方公務員の給与の違い
公務員の給与は、俸給(基本給)と諸手当から構成されています。基本給は、職務の級と俸(給)号により決定されます。
図表1は、総務省のホームページ「地方公務員の給与の仕組み」2平均給与月額の第7表ですが、一般行政職の場合の地方公務員と国家公務員の平均給与月額の推移です(時間外手当を除いたもの)。
図表1から平均給料・俸給について見ると、国家公務員が地方公務員より約1万円高くなっています。さらに、諸手当(国の資料と統一するために、時間外手当等を除く)を加算した平均給与月額で比較すると、国家公務員が約4万7000円多くなっています。
図表1
団体区分別、職種別による給与月額の違い
ひと口に地方公務員といっても、都道府県と特別区、市町村、指定都市とでは給与に差があります。さらに、市と町村でも異なります。
図表は、総務省のホームページ「地方公務員の給与の仕組み」2平均給与月額の第8表ですが、地方公務員をさらに、都道府県、指定都市、市、町村、特別区と細かく分け比較したものです。
図表2
ここから、同じ地方公務員でも地域差があることが分かります。図表2で最も高い指定都市は、国との差額が約2万7000円、2番の特別区は国との差額が約3万1000円の差があります。最も低い町村は、国より約7万5000円低くなります。
次に、職種別の平均額を見ていきましょう。
図表3は、総務省のホームページ「地方公務員の給与の仕組み」2平均給与月額の第9表ですが、こちらから地方公務員、国家公務員とも職種別の平均給与月額の違いが分かります。
図表3
国家公務員と同じベース(時間外手当を含まない)の比較で見ると、一般行政職は国家公務員が約4万7000円多く、警察官は国家公務員が約5000円多いですが、技能労働職は地方公務員が約2万円多い結果となっています。
令和6年給与勧告は約30年ぶりの高水準ベースアップ
ところで、公務員の給与はどのように決まるのでしょうか。
国家公務員の給与は、人事院の給与勧告に基づいて給与が決定されます。
国家公務員法第28条の情勢適応の原則により、民間企業の水準と給与水準を均衡させることを基本としているため、毎年、公務と民間の給与を調査(職種別民間給与実態調査)して比較を行い、給与勧告がされます。国家公務員の行政職俸給表(一)職員と、民間の類似する職種で給与決定要素(役職段階、勤務地域、学歴、年齢)階層別で、公務員の人員構成により加重平均して比較します。
図表4は、行政職俸給表(一)の給与勧告の実施状況です。
図表4
令和6年の人事院給与勧告により、俸給が民間との格差を解消するため俸給が引き上げられ、期末手当・勤勉手当も引き上げられました。初任給についても、大卒総合職が23万円、一般職が22万円と大幅に引き上げられました。
ところで、国家公務員は、本府省勤務と地方機関勤務で給与の差がありますが、本府省勤務の場合の初任給は28万4800円です。ここで、一般職と約6万円の差があります。
一方地方公務員も、地方公務員法に職務給の原則、均衡の原則が定められています。地方公務員の給与は条令で定められなければならないので、職種別民間給与実態調査(人事院と合同で調査)と人事院勧告の内容から人事委員会により給与勧告がされます。
人事委員会がない場合は、人事院勧告・人事委員会勧告の内容により定めます。いずれも議会の決議により条令で給与条令を改定します。
国家公務員の給与勧告を受けて、地方公務員も令和6年人事委員会による給与勧告により、給与条令が改定されました。
まとめ
一般行政の場合で国家公務員との月額給与の比較をすると、指定都市や特別区であれば約3万円国家公務員より少なく、町村の場合は約7万5000円少ないことが分かりました。その一方で、警察官の場合は、国家公務員との差が5000円程度しかありません。
国と地方では、公務員の仕事の内容が異なります。国家公務員でも、本府省と地方機関では異なります。国家公務員か地方公務員かを比較するより、自分は「何をしていきたいか」に目を向けて職業を選ばれるのがよいでしょう。
出典
人事院 本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み
人事院 国家公務員の給与制度の概要
総務省 地方公務員の給与の仕組み
総務省 地方公務員の給与改定の手順
東京都人事委員会 令和6年人事委員会勧告等の概要
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者




