教師の夫は「月収27万円」ですが、毎日残業で「割に合わない…」と言っています。時給で見ると“アルバイト並み”って本当ですか? 長時間労働に「見合った報酬」を受け取れているのでしょうか?

配信日: 2025.07.27 更新日: 2025.10.21
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教師の夫は「月収27万円」ですが、毎日残業で「割に合わない…」と言っています。時給で見ると“アルバイト並み”って本当ですか? 長時間労働に「見合った報酬」を受け取れているのでしょうか?
近年、教員のなり手不足や離職者の増加が社会問題になっています。その背景にある理由の1つが「長時間労働や重責に見合った報酬を得られていないから」です。
 
教員は「休みが多くて、給料もいい」というイメージをもつ人は少なからずいるでしょう。しかし、実際には時間外労働や休日出勤があたりまえになっています。
 
教員の給料を時給で見たら「アルバイト並み」と指摘する人もいますが、それは本当でしょうか? 本記事では、教員の給料を時給換算し、仕事と生活の両立について考えていきます。
舟山こうた

FP2級、小学校一種免許

教師は本当に「安定した職業」なの? 小・中学校教師の給与を紹介

教師は「安定」といわれるほどの報酬をもらっているのでしょうか。実際に給料をどれだけもらっているかは、各自治体や学歴などによって異なります。総務省の「令和5年 地方公務員給与実態調査結果の状況」によれば、東京都の場合の平均給料月額は、以下の図表1の通りです。
 
図表1

年齢層(歳) 平均給料月額(円)
20~23 21万4270
24~27 23万7873
28~31 27万507
32~35 30万7446
36~39 34万3325
40~43 37万9028
44~47 40万2293
48~51 41万8279
52~55 43万1301
56~59 43万8559
60~63 31万8357
64~67 30万6929

総務省 令和5年 地方公務員給与実態調査結果の状況 より筆者作成
 
また、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」によると、大企業に勤める人の給料は、以下の図表2の通りです。
 
図表2

年齢層(歳) 平均給料月額(円)
~19 19万2900
20~24 23万4000
25~29 27万800
30~34 30万7300
35~39 34万2200
40~44 37万3400
45~49 39万2700
50~54 41万7400
55~59 42万9300
60~64 31万3800
65~69 27万7000

厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査の概況 より筆者作成
 
図表1と図表2を比較すると、小・中学校の教師は、大企業に勤める人たちと同等の給料をもらっていることが分かります。そのため「教師は安定した職業」という世間のイメージは、妥当といえるでしょう。
 

教員の時給はいくら? 長時間労働に見合った報酬なのかを検証

「安定」のイメージがある教員の給料は、時給換算するといくらになるのでしょうか。文部科学省の「教員勤務実態調査(令和4年度)」によれば、小・中学校教員の1日あたりの在校時間は、以下の図表3の通りです。
 
図表3

図表3

文部科学省 教員勤務実態調査(令和4年度) より筆者作成
 
勤務日数を平日22日、休日8日と仮定し、図表3のデータを基に計算すると、教諭の月間労働時間は以下の通りです。

【小学校教師】10時間45分×22日+36分×8=241時間18分
【中学校教師】11時間1分×22日+2時間18分×8日=260時間46分

20代後半から30代前半の平均給料である月収27万円を例に挙げると、小学校教師の時給は約1119円、中学校教師の時給は約1035円です。実際は、6月と12月にボーナスが支給されますが、月の給与だけで時給換算すると、決して高いとはいえません。
 
厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧 令和6年度地域別最低賃金改定状況」によれば、東京都の最低賃金は1163円のため、教師の給料はアルバイトと同等もしくはそれ以下といえるでしょう。
 

教師が定時上がりできない理由とは?

教師の給料が時給で見ると低いのは、長時間労働が原因です。なぜ、定時で上がることができないのでしょうか。教師は授業以外にもさまざまな業務を抱えています。具体的には、以下の7つです。

●授業で使う教材の作成
●テストの作成や採点
●生活面の指導や支援
●保護者への連絡や情報共有
●学校行事の企画や運営
●会議資料作成などの事務作業
●部活動指導

教師は、これらの業務を授業の時間以外に取り組まなければなりません。限られた勤務時間内に全てを終わらせることは難しいため、多くの教師が定時で退勤できない状況が続いています。
 

仕事に求めるものとは? 「やりがい」と「生活」の両立を考える必要性

教師の給料を時給換算した結果、長時間労働に見合った報酬とはいい難く、場合によってはアルバイト以下であると分かりました。教育現場で働く教師の多くは「子どもの成長のために」という強い使命感をもって日々働いています。しかし、いくらやりがいがあっても、それに見合った報酬をもらえていなければ、自身の生活が成り立ちません。
 
これは教師に限らず、あらゆる職業に共通していえることです。仕事量に見合う報酬をもらうことで「やりがい」と「生活」のバランスを保つことが、働き続けるために大切です。
 

出典

総務省 令和5年 地方公務員給与実態調査結果の状況
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査の概況
文部科学省 教員勤務実態調査(令和4年度)
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
 
執筆者 : 舟山こうた
FP2級、小学校一種免許

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