「20代で年収1000万円」は本当に存在するのか? 個人の「能力・努力」だけではない…統計から見えた“厳しい格差”とは

配信日: 2025.08.22 更新日: 2025.10.21
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「20代で年収1000万円」は本当に存在するのか? 個人の「能力・努力」だけではない…統計から見えた“厳しい格差”とは
「20代で年収1000万円」―。このような言葉を聞くと、多くの人が憧れや疑問を抱くのではないでしょうか。
 
20代で「年収4桁」というような高収入を得ている人は、日本にどれくらいの割合なのか。そして一般的な20代の平均年収と比べると、その間にはどれほどの格差が広がっているのでしょうか。
 
本記事では、20代における年収のリアルな現状を探りながら、なぜ年収格差が生まれるのか、そして若者が早期の年収アップを目指すためには、どのようなアプローチが有効なのかを考えていきます。
山田圭佑

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

20代で「年収4桁万円」は夢物語か? 実際のデータを確認

国税庁が発表している「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者全体の給与階級別分布で、年収1000万円超となっているのは全体の5.5%に過ぎません。この統計は全年齢層を対象としたものですが、20代に限定するとさらにその割合は低くなります。
 
では、一般的な20代の平均給与額はどのくらいなのでしょうか。同じく国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」をみてみると、25歳から29歳の平均給与は、男性で429万円、女性で353万円、全体では394万円となっています。
 
また、20歳から24歳までの区切りでは、男性で279万円、女性で253万円、全体では267万円です。20~24歳の区切りと、25歳~29歳の区切りで1.5倍近くも大きな開きがあるのは、25歳以上の区切りからは「大学卒」の就業者が多くなるからと考えられます。
 
20代の若者の平均年収からみると、「年収1000万円以上」を達成するには2倍以上の年収増が必要で、達成することは極めて厳しいでしょう。
 
しかし、大手求人サイトDodaの調べでは、このような環境の中でも「20代で年収1000万円以上」を達成している人は、20代全体の0.3%程度存在しているようです。この年収格差は、単に個人の能力や努力だけでなく、後記するようなさまざまな要因が複合的に影響して生まれていると考えられます。
 

「サラリーマンの年収」は「勤めている会社の業界と規模」に大きく影響される

具体的に、どのような職種や業界で20代のうちに1000万円以上の年収が見込めるかというと、外資系投資銀行、戦略コンサルティング、一部のITベンチャー企業のエンジニアやセールスなどが挙げられます。
 
これらの職種は、高度な専門知識やスキル、あるいは成果へのコミットメントが強く求められる一方、大きな成果を達成した従業員への報酬も多額になる傾向があるため、若くして高収入を得るチャンスが大いにあります。
 
また「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、高収入な業界は「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融業、保険業」「情報通信業」となっています。
 
業界全体で考えたとき、「年収800万円超」の者の割合が「電気・ガス・熱供給・水道業」では41.1%と最も多く、「金融業、保険業」では26.7%、「情報通信業」は24.4%となっています。
 
ただし、「電気・ガス・熱供給・水道業」などのインフラ系企業は「年功序列」的な制度が色濃く残っており、20代で年収1000万円以上を達成することは困難と思われます。
 
逆に年収が低い傾向にある業界は「宿泊業、飲食サービス業」「医療、福祉」「農林水産・鉱業」で、医者や事業主でなくサラリーマンとしてこのような業界に所属するのであれば、20代で年収1000万円を達成することは難しいと言えるでしょう。また、会社の規模によっても、年収額は大いに変化します。
 
「令和5年分 民間給与実態統計調査」の「事業所規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額」を見ていくと、同じ24歳~29歳の従業員でも「事業規模が10人未満」の職場で働く人の年収は平均321万2000円、「事業規模が5000人以上」の職場で働く人の年収は平均439万7000円と、120万円近くの開きがあります。
 
従業員数が多い会社であれば必ず高給である保証はありませんし、若くして年収1000万円を達成できるかは会社にもよりますが、大会社ほど高給を従業員に支払える傾向にあることは事実です。就職・転職を考える際は、頭に入れておきましょう。
 
まとめると、若者が起業をするのではなく、サラリーマンとして「年収1000万円」を達成したいのであれば、「大いに利益を稼ぎ出し、若い社員にも成果次第で高給を支払えている業界・会社に所属し、高い成果を上げる」ことが求められます。
 
キャリアを歩む中で、「年収の高さ」を最優先に考えるのであれば、自身が所属する業界や企業の構造、給与に関する水準を改めて研究し、場合によっては業界をまたぐ転職も検討していくべきでしょう。
 

まとめ

「20代で年収1000万円」を達成できている人は、20代全体の0.3%程度とされています。
 
サラリーマンが20代のうちに高年収を達成したいと願うのであれば、就職・転職を考えている企業の収益状況と業界の景況などを深く考え、高給を従業員に支払える会社に所属し、収入に見合うしっかりとした実績を残していくことも求められていくでしょう。
 
場合によっては、それぞれの時代・場所において「稼げる業界」への転職・キャリアアップも選択肢に入れていく必要があります。自分のキャリア人生についてもう一度深く見つめ直し、後から振り返って納得できる行動をしていきましょう。
 

出典

国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-
パーソルキャリア株式会社 doda 平均年収ランキング(年齢別・年代別の年収情報)【最新版】
 
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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