共働きで「公務員」の兄夫婦。わが家は「中小企業」で働いていますが、年収はどれだけ違うのでしょうか?

配信日: 2025.09.04 更新日: 2025.10.21
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共働きで「公務員」の兄夫婦。わが家は「中小企業」で働いていますが、年収はどれだけ違うのでしょうか?
かつてより人気が落ちたとはいえ、雇用が安定し、そこそこ高めの年収が期待できる「公務員」は、依然として就職先として希望する人が多い職種です。
 
近年は中小企業でも賃上げが進んでいますが、公務員との給与水準にどれだけの差があるのでしょうか。最新のデータを確認してみましょう。
山田圭佑

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

国家公務員と中小企業の年収には、どれだけの差がある?

まず、公務員の平均年収を見てみましょう。総務省のまとめた「令和6年地方公務員給与実態調査結果等の概要」によると、各種の手当を含めた国家公務員の平均給与月額は40万5378円、地方公務員では36万1724円です(平均年齢は国家・地方ともに42.1歳)。
 
次に、中小企業の月額賃金水準を確認していきます。厚生労働省のまとめた「令和6年賃金構造基本統計調査 調査結果の概要」によると、中企業(常用雇用者100~999人)では32万3100円(平均年齢44.0歳)、小企業(常用雇用者10~99人)では29万9300円(平均年齢45.7歳)となっています。
 
この時点で、公務員と中小企業の従業員との間には20~30%程度の賃金格差が生じていますが、実際にはこの月額給与に加えて賞与の支給があるため、年収の格差はさらに大きくなると思われます。
 
令和7年8月に人事院が出した「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」を見てみると、国家公務員へ支給される賞与は、昨年より0.05ヶ月分引き上げとなり、年間で月額給与の4.65ヶ月分となりました。地方公務員についても、基本的には国家公務員と同様の賞与が支給されます。
 
一方、民間企業においては、賞与の支給額は会社の業績に大きく左右されますが、中小企業は一般的に賞与にまで人件費を大きく割く余裕がなく、賞与水準は公務員の賞与水準を下回ることが多いでしょう。
 
ここでは、中小企業においては年間で月額給与の「2ヶ月分」の賞与が支払われると仮定し、国家公務員、地方公務員、中企業従業員、小企業従業員の年収額を試算してみます。
 
・国家公務員
 
40万5378円×(12ヶ月+4.65ヶ月)=約674万9543円
 
・地方公務員
 
36万1724円×(12ヶ月+4.65ヶ月)=約602万2704円
 
・中企業従業員
 
32万3100円×(12ヶ月+2ヶ月)=452万3400円
 
・小企業従業員
 
29万9300円×(12ヶ月+2ヶ月)=419万200円
 
以上のとおり、月額給与の他に賞与を含めて計算すると、中小企業と公務員の間の年収格差は1人あたり150万円~250万円程度、割合にして30%~50%程度となることがわかりました。公務員で共働きしている世帯と中小企業で共働きしている世帯では、年収で500万円程度の差がついてしまうこともありそうです。
 
民間企業は業績によって賞与支給額が大きく増えることもあり得ますが、それを考えに入れても、依然として給与水準には大きな格差が存在しています。
 

若手退職者が相次ぐ公務員、どのようなデメリットが?

給与水準や待遇としては、中小企業と比較して大きな優位性がある公務員ですが、近年は若手職員の離職が問題となっています。一般的には、業務量と責任の重さに給与水準が見合っていないために早期退職しているのではないかと言われていますが、筆者としては、それは原因のごく一部にすぎないと感じています。
 
筆者も「元・地方公務員」ですが、離職を決めた大きな理由は「給与水準への不満」ではなく、「業務の硬直性・非効率性に嫌気が差したこと」「上から命令される業務が、自分の考える『公益』に沿っていると思えなくなったこと」などでした。
 
このように、公務員であることで得られる金銭的なメリットよりも精神的なデメリットが上回ってしまったため、公務から離れていく職員は決して少なくないとのではないでしょうか。
 
今後は少子高齢化も手伝い、優秀な若手を採用するために公務と民間企業の間で人材の取り合いがますます激しくなりそうです。元公務員の筆者としては、全国の公的機関は表面的な待遇改善だけでなく、職員が業務を通じて精神的な満足感をいかに得られるようにできるかを、真剣に考えてほしいと願っています。
 

まとめ

全国の中小企業で働く会社員の平均的な給与水準と比較すると、公務員の年収は30~50%程度高く、夫婦共働きであれば世帯年収の差は500万円以上になることもあると考えられます。
 
一方、公務員を早期退職する若手職員は増えており、平均よりは高いとはいえ業務量に見合っていない給与水準への不満や、その他の精神的な苦痛を強く感じている公務員は多いと言えそうです。
 

出典

総務省 令和6年地方公務員給与実態調査結果等の概要
人事院 本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み 令和7年8月
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査の概況
人事院 総合職試験採用職員の退職状況について
 
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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