日本の平均年収「478万円」だけど、わが家は「夫400万円・妻300万円」ほど…本当にそれだけ“稼ぐ人”が多いのでしょうか? 最新の統計データをもとに確認
統計の正確な姿を見るには、中央値と平均値という2つの見方で数値をとらえる必要があります。本記事では、この世帯の年収水準が中央値で見た場合、どの程度の水準に該当するのかを解説します。
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平均年収478万円は「実感」とずれる? 統計が示す実態
統計の代表値には、すべてのデータを合計して人数で割る「平均値」と、データを小さい順に並べたときにちょうど真ん中に位置する「中央値」の2つがあります。
年収データは、一部の高所得者(高額な給与という「外れ値」)の影響を強く受けます。平均値はこうした極端な値に引き上げられやすいため、平均年収478万円という数字は、実態よりも高く出てしまう傾向があるのです。
つまり、平均値が高くても、実際にその額を稼いでいる人は少数派である可能性が高いのです。多くの人にとっての「普通」の年収水準を知るには、中央値がより適切な指標となります。
年収の中央値は「400万円台前半」と推定
今回の調査(令和6年分)の給与階級別分布から、中央値がどのあたりにあるのかを推定できます。
1年を通じて勤務した給与所得者5137万人を年収順に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する人の年収は、「400万円超500万円以下」の区分です。
この結果から、令和6年分の給与所得者の年収中央値は、400万円台前半であると推定されます。
さらに、給与所得者全体の約半数(48.1%)は、年収が400万円以下となっています。平均値(478万円)と中央値の間に差があることは、高所得者が平均値を引き上げている証拠であり、日本の所得分布に偏りがあるといえるでしょう。
「夫400万円・妻300万円」はどの層にあたるのか
「夫400万円、妻300万円」という年収は、全体の中央値の観点から見ると、非常に一般的な水準にあることが分かります。
男性の平均給与は587万円ですが、男性の給与所得者全体で最も人数が多い層は「400万円超500万円以下」(構成比16.9%)です 。夫の年収400万円は、この最も人数が多い層の下限に位置し、推定される中央値とも近く、多くの人が属する水準であるといえます。
一方、女性の平均給与は333万円ですが、女性の給与所得者全体で最も人数が多い層は「200万円超300万円以下」(構成比19.0%)です。妻の年収300万円は、女性の平均給与(333万円)に非常に近く、最も人数が多い層の上限に位置しており、女性の中では平均的またはそれ以上の水準です。
世帯合計で700万円という年収は、所得分布の中心層に属する水準であるといえるでしょう。
統計データを見る際に意識すること
年収や資産のデータを平均値で見ると、ごく一部の高所得者に引っ張られてしまい、実態を見誤る可能性があります。したがって、「本当に平均年収478万円を稼ぐ人が多いのでしょうか?」という疑問への答えは、中央値という視点で見れば「ノー」ということになります。
平均値に惑わされず、中央値を基準にすることで、自身の収入が社会全体でどの位置にあるのかを正しく理解できます。
出典
国税庁 令和6年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-
執筆者 : 金子賢司
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