10月から昇進で「月収6万円」アップだけど、手取りは「4.2万円しか増えない」と聞きショック!“税金・社会保険料”はどれだけ負担が増えるのでしょうか? 手取り額を試算
しかも、社会保険料や住民税の負担増は時間差で生じるため注意が必要です。本記事では、年収500万円から572万円に昇給した、夫婦共働きで2人の小学生の子どもがいる42歳の会社員をモデルにシミュレーションしながら、昇給額と手取り額の違いについて解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
月収6万円アップで手取りはいくら増える?
月収が増えると、社会保険料の負担が増えます。社会保険料の計算の根拠になるのは、通勤手当や残業代を含めた月収(標準報酬額)です。東京都の協会けんぽの場合、月収が41万6666円(年収500万円)から47万6666円(年収572万円)になることで、各種保険料が次の通り変わります。
・健康保険料(介護保険料含む):2万3575円→2万7025円
・厚生年金保険料:3万7515円→4万3005円
・雇用保険料:2292円→2622円
※通勤手当月1万円、残業代が0円の場合
合計6万3382円から7万2652円と月に9270円も負担が増えてしまうのです。これに加えて、月収が増えることで所得税や住民税も増加します。
所得税や住民税の金額は、家族構成や民間保険・個人型年金制度の加入状況によって変動するので一概にはいえません。仮に民間の生命保険の支払いが年間18万円(生命保険12万円、医療保険6万円)、個人型年金保険制度に加入していない場合の金額を概算すると以下の通りです。
所得税額:10万234円→14万6710円(年額)
住民税額:21万9600円→26万6100円(年額)
※シミュレーションは一例で、金額は異なる場合があります
1年間で合計9万2976円、1ヶ月にすると7748円の負担増となります。つまり社会保険料と税金を合わせると月間1万7018円の負担増となるため、月収が6万円増えても手取りは約4万2982円しか増えません。
「月収が6万円増えたから、支出も6万円増やせる」と考えてしまうと、家計に大きな悪影響を与える可能性があることに注意が必要です。
昇給直後は手取りの増加が大きくなることに注意が必要
月収が6万円増えても手取りは4万2982円しか増えませんが、最初の数ヶ月は手取りが一時的に昇給幅以上に増加してしまうことに注意が必要です。
というのも、所得税の源泉徴収額、雇用保険の保険料は昇給した月から反映されますが、健康保険料と厚生年金保険料、住民税の負担増には時間差があります。
健康保険料と厚生年金保険料は、通常4月から6月の平均報酬を基に決定し、10月から翌年9月まで決まった金額が徴収されます(定時決定)が、次の3つの条件を満たす場合は社会保険料の金額改定(随時改定)が行われる仕組みです。
・昇給または降給等により固定的賃金に変動があった
・変動月からの3ヶ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
・3ヶ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である
随時改定は、変動月(昇給月)から3ヶ月間連続で報酬が増えたことを確認したのちに行われます。仮に10月に昇給した場合、10月から12月までの月収をベースに1月に社会保険料の改定が実施され、2月徴収の社会保険料に反映されることで手取りが減ってしまうのです。
住民税は、前年の年収をベースに決定した金額を6月から翌年の5月まで支払う仕組みとなっています。つまり、昇給が住民税に影響するのは翌年の6月で、このタイミングにも手取り減が生じることも意識しておくべきでしょう。
まとめ
月6万円の昇給があっても、社会保険料と税金の負担増により、最終的な手取りは4万2982円しか増えません。あくまでも昇給額は額面金額であり満額手取りとなるわけではないこと、社会保険料や住民税などは時間差で負担増となることを考慮しながらの家計管理が重要です。
出典
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
厚生労働省 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
日本年金機構 随時改定(月額変更届)
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
