【年収】夫「1000万円一馬力」vs「夫650万+妻350万」どっちの世帯手取りが多い? 本当に“分散型”は最強かを検証

配信日: 2025.10.23
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【年収】夫「1000万円一馬力」vs「夫650万+妻350万」どっちの世帯手取りが多い? 本当に“分散型”は最強かを検証
年収「1000万円」と聞くと裕福なイメージがありますが、税金や社会保険料の負担で手取りは思ったほど増えないことも少なくありません。
 
共働き世帯も増え、女性もフルタイムで働く人が増えている中で、「世帯収入1000万円ならば、夫1人で稼ぐ一馬力よりも、夫婦共働きの分散型のほうが手取りが多い」という声もあるでしょう。
 
本記事では、夫婦共に40代で子ども1人を扶養するケース(東京都在住)を想定し、一馬力と分散型の手取りを比較します。どちらの働き方が手取り面で有利かを見てみましょう。
村吉美佳

FP2級、日商簿記2級、宅建士、賃貸不動産経営管理士

夫1000万円一馬力世帯の手取り年収は約717万円

まず、夫が一馬力で年収1000万円を稼いでいる場合について見ていきます。手取り収入は、額面収入から社会保険料などを差し引いて求めることになります。
 
社会保険料は控除前の年収を基準に計算されます。健康保険料には医療分に加え、40~64歳が負担する介護保険料や後期高齢者支援金分も含まれます。これに厚生年金・雇用保険・雇用保険を合わせると、1000万円×約16%≒約160万円 がまず差し引かれる計算です。
 
次に、所得税などの計算のもとになる課税所得を求めます。


・給与所得控除:113万円
・社会保険料控除:約160万円
・基礎控除(2025年より基礎控除引き上げ):58万円
・配偶者控除(子ども1人):38万円

課税所得=1000万円-(195万円+160万円+58万円+38万円)=約549万円

この場合、所得税は税率20%で基礎控除42万7500円となり約67万円、住民税は10%に森林環境税などを加えて約56万円となります。
 
最終的な手取り額は、1000万円-(160万円+67万円+56万円)=約717万円です。

※試算は月給ベースで、ボーナスは含みません。控除や税率は人によって異なります。
 

夫650万円+妻350万円の分散型世帯の手取り年収は約767万円

次に、夫が650万円、妻が350万円を稼ぐ分散型の年収1000万円について見ていきます。社会保険料は控除前の年収を基準に計算します。


・夫650万円の場合:650万×約16%≒104万円
・妻350万円の場合:350万×約16%≒56万円

 

夫の課税所得


・給与所得控除:174万円
・社会保険料控除:104万円
・基礎控除 :(2025年より基礎控除引き上げ):58万円

課税所得=650万円-(174万円+104万円+58万円)=約314万円

この課税所得の場合、所得税は税率10%で基礎控除額9万7500円となり約21.6万円、住民税は約32万円です。
 

妻の課税所得


・給与所得控除:113万円
・社会保険料控除:56万円
・基礎控除 :(2025年より基礎控除引き上げ):58万円

課税所得=350万円-(113万円+56万円+58万円)=約123万円

この課税所得の場合、所得税は税率5%で約6万円、住民税は約13万円です。
 

手取り額


・夫:650万円-(104万円+21.6万円+32万円)=約492万円
・妻:350万円-(56万円+6万円+13万円)=約275万円
・合計=約767万円

同じ世帯年収1000万円でも、分散型は一馬力より約50万円手取りが多くなる試算になりました。

※試算は月給ベースで、ボーナスは含みません。控除や税率は人によって異なります。
 

なぜ夫婦分散型のほうが有利なのか

社会保険料は控除前の額面で計算されるため、高収入ほど負担が大きくなります。年収1000万円の一馬力では、健康保険や厚生年金、雇用保険などを合わせると、額面の約16%が社会保険料として差し引かれる計算です。
 
さらに、所得税や住民税も加えると、手取りでは額面の約3分の1が減ることになります。加えて、所得税の累進課税も手取りに影響します。夫1人で1000万円稼ぐと高い税率がかかる部分が増えるため、夫婦でほどほどに稼ぐほうが課税額を抑えられます。
 
妻の年収を130万円以下に抑えて夫の扶養に入る場合もありますが、その場合は夫の年収を約870万円にする必要があり、所得税や社会保険料の負担が増えます。そのため、世帯全体の手取りは今回の分散型(夫650万円+妻350万円)とほとんど変わらないか、やや減ることもあるでしょう。
 

まとめ

年収1000万円と聞くと裕福なイメージがありますが、年収が多い分、社会保険料などの負担も多くなります。
 
夫が一人で1000万円を稼ぐより、夫婦でほどほどに稼いで合計するほうが手取りが多くなる場合があります。夫650万円+妻350万円の分散型は目標にしやすく、共働き世帯の理想的な働き方とも言えるかもしれません。
 

出典

全国健康保険協会 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
厚生労働省 事業主・被保険者の皆さまへ 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
国税庁 令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)
 
執筆者 : 村吉美佳
FP2級、日商簿記2級、宅建士、賃貸不動産経営管理士

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