昇進で“部長”になったけど、年収は「700万円」…これって“平均より低い”ですか?「日本の平均年収」とも比較
そこで本記事では、部長職の標準的な収入や日本全体の収入水準と年収700万円を比較した上で、部長になるメリット・デメリットについて解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
部長の平均年収と比較
部長職で年収700万円は、管理職全体の平均と比べると、やや控えめな水準に位置しています。厚生労働省が発表した「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、管理職の平均月収と年間賞与は以下のとおりです。
部長
・男性:63万6400円
・女性:54万9900円
課長
・男性:52万2400円
・女性:45万8100円
部長
・男性:220万3200円
・女性:166万7600円
課長
・男性:200万2300円
・女性:160万1800円
上記のデータをもとに計算した管理職の平均的な年収は、部長が男性約984万円・女性約827万円、課長が男性約827万円・女性約710万円になります。
年収700万円を平均年収の数値と比較すると、管理職全体では平均を下回る金額にあると判断できます。したがって、部長職で年収700万円は低すぎるとはいえませんが、控えめな水準といえるでしょう。
給与所得者の平均年収と比較
管理職の標準的な収入を見ると、年収700万円はやや低めな額だといえますが、給与所得者全体の平均年収と比較すると高い水準にあります。
国税庁が公表した「令和6年分民間給与実態統計調査」では、給与所得者の平均年収は478万円、男性正社員に限定すると609万円となっているからです。それぞれを、年収700万円と比べた場合の差額は以下のようになります。
・給与所得者全体の平均年収478万円と比較:約222万円高い
・男性正社員の平均年収609万円と比較:約91万円高い
また、年代別で見ても、一般的に部長職に就く年代である40代後半~50代前半の平均年収は約540万円~約559万円です。今回のケースがこの年代だとすると、同年代の平均を大きく上回っています。したがって、年収700万円は一般的な会社員と比べれば、十分に高い収入であるといえます。
部長になるメリット
年収700万円は、管理職の年収で考えるとやや控えめな金額ですが、給与所得者の平均年収で見ると高水準だということを踏まえて、部長になるメリットを整理してみましょう。
まず、部長のメリットとして挙げられるのは、さらなる昇進・昇格のチャンスが広がることです。部長としての経験を積むと、次のステップである取締役や執行役員といった会社の経営層への昇進ルートが見えてきます。経営幹部のポジションに就ければ、現在よりもさらに大幅な収入増加を期待できるでしょう。
また、部長としてのマネジメント経験は、転職市場で高く評価されます。チームリーダーシップや戦略立案などの実績は、他社でも即戦力として期待される要素です。特に同業界での部長経験は、業界知識と組織運営スキルの両方を兼ね備えた人材として重宝されやすいです。
加えて、部長レベルの転職では年収アップの可能性もあり、ヘッドハンティングの対象となる場合も多いため、キャリアの選択肢が大幅に広がります。このように、部長職は金銭面とキャリア面の両方で大きなメリットがあります。
部長になるデメリット
部長職は一見すると栄誉ある地位に見えますが、給与面や精神的負担の観点から見ると必ずしもメリットばかりとはいい切れない部分があります。部長に昇進すると管理職として扱われるので、労働基準法に基づき残業代の支給対象外となります。
そのため、仕事量増加によって労働時間が延びるのに、時間あたりの報酬を計算すると実質的な収入が下がってしまう場合があります。
また、部下のミスや部門全体の業績不振は部長の責任として問われるので、求められるプレッシャーは相当なものです。したがって、昇進による満足感よりも、日々の責任の重さによるストレスのほうが上回ってしまうケースも少なくありません。
部長職年収700万円を多角的に評価する
部長で年収700万円は、管理職全体で見ると控えめな水準ながら、給与所得者の平均年収と比べれば十分に高い収入です。残業代が支給されなくなるデメリットもある一方、さらなる昇進・昇格への道筋が見えてくることや、キャリアの選択肢が広がるメリットもあります。
目先の年収だけでなく、長期的なキャリア価値まで含めて考えると、年収が700万円だとしても部長職は十分に価値ある昇進といえるでしょう。
出典
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況
国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-
執筆者 : 山口航
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
