ボーナスをもらいましたが、額面と手取りの差に正直驚いています。自分が理解していないだけで、増税されているのでしょうか?

配信日: 2025.11.06
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ボーナスをもらいましたが、額面と手取りの差に正直驚いています。自分が理解していないだけで、増税されているのでしょうか?
ボーナスは50万円だと思ってあれこれ支出の予定を立てていたら、「振込額を見てびっくり!」というケースは、多くの人が経験することです。これは「知らない間に増税された」というよりも、「健康保険」などの社会保険制度の仕組みによる控除によって起こるものです。
 
本記事で確認していきましょう。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

額面と手取りのギャップが生じる理由

ボーナスに額面と手取りの大きなギャップが生じる理由として、以下のことが考えられます。
 
まず、増税(税率そのものの引き上げ)が、突然ボーナス分だけ特別に適用されたわけではありません。ただし、額面が大きくなると、税率や控除の影響がより顕著に表れやすくなることも事実です。
 
次に、認識しておかなければならないのが、社会保険料や所得税(源泉徴収)などがボーナスにも課される制度があるため、大きな収入ほど “控除率が目立つ” という構造があるという点です。
 

ボーナスにも「社会保険料」がかかる

ボーナス(賞与)から差し引かれる主な控除として、税金のほかに社会保険料があります。給与と同じく、労働者が支払う負担分が控除されます。対象となる社会保険料には、一般的に以下が含まれます。
 

1. 健康保険料(場合によっては介護保険料を含まれます)
2. 厚生年金保険料
3. 雇用保険料(労災保険は従業員負担分がありません)

 

計算方法について

ボーナスにかかる社会保険料の計算では、標準賞与額(ボーナス額から1000円未満を切り捨てた額)を基準に各保険料率を掛けて出た額が控除されます。
 
35歳独身、東京都在住在勤で、勤め先企業が政府管掌協会けんぽに加入している場合であれば、一般的に図表1のような料率の適用が想定されます。
 
図表1 社会保険 想定控除適用料率

保険・制度 典型的な料率・負担率
健康保険料率(政府管掌/協会けんぽ) 約9.91%
厚生年金保険料率 18.3%
(労使折半なので私たち従業員の負担率は9.15 %)
雇用保険料率(労働者負担分) 0.55%

(筆者作成)   
 
なお、この料率は所属する企業の健康保険組合や地域、年齢などによって異なります。例えば40歳以上は介護保険も加わり、11.5%前後の数字も使われます。厚生年金保険料率は、2025年時点では 約18.3% 程度と見られており、企業と被保険者で折半されます。
 
ボーナス額面で50万円もらった場合、上記の表の料率で控除額を計算すると、
額面50万円 × 保険料率 9.91% × 従業員負担分(折半)
= 50万円 × 0.0991 ÷ 2
= 2万4775円
健康保険料として、約 2万4780円 が控除されます。
 
額面50万円 × 年金料率 18.3% × 従業員負担(折半)
= 50万円 × 0.183 ÷ 2
= 4万5750円
厚生年金としては約 4万5750円 を差し引かれる見込みです。
 
額面50万円 × 0.55 %
= 50万円 × 0.0055
=2750円
 
これらを合算すると、
減算合計(社会保険料合計)= 2万4780円 + 4万5750円 + 2750円 = 7万3280円
が差し引かれ、42万6720円が課税対象額という計算です。
 

所得税の算出と想定手取り額

社会保険控除後の額に対して、賞与に対する源泉徴収税率表が適用されます。令和7年分源泉徴収税額表では、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」が掲載されています。
 
扶養なし・課税対象額 42万6720円の場合、税率は16.336%(またはそれに近い率) 等と想定されます。なお、この税率は、前月の給与や扶養人数で決まります。ここでは、扶養なし、前月の給与を30万円と想定しています。
 
仮に 16.336 % の税率が適用されると仮定すると、所得税額は以下のように計算できます。
 
所得税額= 42万6720円×0.16336 = 約6万9700円
 
最終的に、この条件下では、額面50万円のボーナスに対して、約35万7000円前後 が手取りとなる見積もりです。
 

まとめ

50万円のボーナスが手取りで約40万円になっている! というのは、ショックではありますが、仕組みを知ると「仕組みどおりに控除された結果」と受け止めることができるでしょう。
 

出典

全国健康保険協会(協会けんぽ) 協会けんぽの特定保険料率及び基本保険料率(保険料率の内訳表示)について
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
厚生労働省 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
全国健康保険協会(協会けんぽ) 協会けんぽの介護保険料率について
国税庁 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和7年分)
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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