大手企業は新卒で「初任給30万円」なのに、40代の自分は「年収450万円」でカツカツ…“若手優遇の人事制度”が生む「格差の現実」とは? 給与が伸びない理由をFPが解説

配信日: 2025.12.12
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大手企業は新卒で「初任給30万円」なのに、40代の自分は「年収450万円」でカツカツ…“若手優遇の人事制度”が生む「格差の現実」とは? 給与が伸びない理由をFPが解説
社会人になり、年齢とともに自分の給与が上がり続けると想定して生活設計をしてきた方も多いでしょう。しかし近年は、40代の給与は相対的に伸びにくく、若手との差が広がっているとされています。
 
一方で、40代は住宅ローンや子どもの教育費といった家計の支出が最も増えやすい年代でもあり、給与について悩んでいる人も少なくないのではないでしょうか。
 
本記事では、なぜ格差が生まれるのかについて、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点で解説します。
上嶋勝也

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

40代の平均年収は伸びにくい? 賃金カーブの変化が示す現実

国税庁「民間給与実態統計調査」によると、40代前半の平均年収は約516万円、40代後半は約540万円です。年収450万円は平均よりも低く、同年代の生活水準に合わせるのは難しいかもしれません。
 
かつては、年齢とともに自動的に給与が上がる年功型賃金が一般的でした。しかし、現在では賃金カーブが緩やかになり、40代以降の上昇幅が小さく、若手に原資が配分される傾向が強まっています。
 
また、厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」を見ると、月収の伸びは20代で月額4万円程度ですが、40代となると緩やかになり、40代後半以降は1~2万円程度にとどまっており、世代間で伸び方に差があることが分かります。働き盛りの40代が、給与額を伸ばしたい時期に停滞しやすい状況なのです。
 

若手は賃上げの恩恵を受けやすい? 年代別・給与の伸び率を比較

近年の賃上げ傾向は、30代以下の若手年齢層に手厚い傾向があります。企業が働き手として若手社員の確保ができるかどうかが経営課題となっており、多くの企業が初任給を中心に引き上げを実施したためです。三菱商事は2027年入社の総合職の初任給を34万円に設定するなど、伸びが大きくなっています。
 
その他、中小企業でも初任給を直近数年で約5~10%上げている企業も少なくありません。日本商工会議所による「2025年度の中小企業の賃上げに関する調査」では、給与の伸び率が平均4.73%と示されています。
 
一方で、40代以上の社員の平均給与の伸びは比較的小さいことが、賃金構造基本統計調査からも明らかになっており、企業によっては前年比1%未満の昇給という状況もあるようです。若手の待遇改善が進む一方、40代は賃金改定の恩恵を受けにくい構造が目立つようになってきたと言えるでしょう。
 
その結果、30代社員が40代社員の月額給与を追い抜く逆転現象が起きている企業もあると報告され始めています。年収の伸び方が世代によって大きく異なる時代に入り、若手優遇の新しい人事制度と旧来の制度の間にゆがみが生まれ、新たな課題が生まれているのです。
 

なぜ40代だけ給与が伸びにくいのか? 企業の評価制度に潜む3つの理由

40代の給与が伸びにくい背景には、企業側の構造的な理由があります。主な要因は次の3つです。
 

(1)ジョブ型人事への移行

昨今、従来の「年齢=昇給」ではなく、担当業務の難易度や貢献度で給与が決まる仕組みが増えました。40代は業務内容の変化が乏しく、賃金が横ばいになりやすい特徴があります。
 

(2)管理職ポストの不足

管理職の人数は限られており、全員が40代で昇進できるわけではありません。40代になると役職に就けなければ昇給が止まる企業も多く、結果として給与総額は伸びにくくなります。
 

(3)評価基準の変化

現代企業の評価軸は成果重視へ移行しています。若手は新規プロジェクトに参加させやすく、成果も可視化しやすいですが、40代は既存業務から外すこともできず、評価されにくい業務を続けている事例も少なくありません。
 
これらの要因が重なり、40代の給与額停滞につながっています。
 

給与が伸びない時代の家計防衛策3選――40代が今日からできる対策

給与が伸びにくい時代でも、家計を改善する方法はあります。特に重要なポイントは次の3つです。
 

(1)手取りを増やす仕組みを活用

「ふるさと納税」や「iDeCo」は税負担を下げやすい制度です。iDeCoは掛け金が全額所得控除となるため、節税効果が高く、将来の年金として備えられるのが特徴です。
 

(2)転職とスキル習得で「年収テーブル」を変える

社内昇進が難しい場合、外部で評価される専門スキルを身に付ける方が収入を伸ばしやすくなるでしょう。40代でも、年収を上げて転職する事例は少なくありません。
 

(3)固定費の見直し

通信費や保険料の削減は、節約効果が大きい項目です。特に保険は保障内容を確認し、重複している契約を減らせば、年間数万円の削減につながります。
 

年収450万円の40代でも諦める必要はない

40代は、支出の多さと収入上昇が停滞し始める世代です。しかし、給与が伸びない人事制度を改めて見直して転職を検討したり、固定費を見直したりすることで、家計の改善は十分に可能です。自分に合った対策を選び、将来に備えていきましょう。
 

出典

国税庁 令和6年 民間給与実態統計調査
厚生労働省 令和6年 賃金構造基本統計調査
日本商工会議所 2025年度の中小企業の賃上げに関する調査
 
執筆者 : 上嶋勝也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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