親が亡くなったとき、すぐにしたほうがいい手続きって?いつまでにどんな手続きが必要?
配信日: 2020.02.03 更新日: 2020.04.06
人生において度々あることではない「相続」。親が他界した場合の手続きについて、その期限とともに解説します。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP®認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
突然のことで…
親が他界した際、葬儀の手配と並行して役所関係への届け出や相続の準備などを進める必要があります。離れた場所にお住まいの場合は、効率よく動かないと、何度も足を運ぶことになりますので、落ち着いて全体像を把握しましょう。家族や親族と役割分担ができれば、それぞれの負担軽減に繋がります。
まずは、「死亡届」を亡くなられた方の本籍地・死亡地・届出義務者の所在地を管轄するいずれかの市区町村役場に提出しなければいけません。
7日以内と定められていますが、窓口で「火葬許可証」を受け取らないと火葬できないため、早めに開庁時間内に行くことをお薦めします。葬儀社との打ち合わせの際には、日程や段取り、見積もりとともに、代行してもらえる手続きがあるかどうかの確認もしましょう。
葬儀後、故人が生前に遺した「希望する葬儀のカタチ」や「葬儀会社との契約書」が発見されることが多々あります。エンディングノートなどが残されていないかの確認も必要です。遺言書が見つかった場合は、検認という手続きが必要になりますので、開封してはいけません。
葬儀後には、多額の支払いが…
葬儀などの費用を手元資金で賄うことができればよいのですが、なにかと出費が重なるものです。
相続が発生した場合、金融機関の口座は凍結されます。ただし、相続人の資金需要に対応するため、2019年7月1日に「預貯金の払戻し制度」が施行されました。
■ 預貯金の払戻し制度
預貯金が遺産分割の対象となる場合、これまでは遺産分割が終了するまで払戻しができませんでしたが、一定の範囲で払戻しが可能になりました。
(1)預貯金の一定割合については、家庭裁判所の判断を経なくても、金融機関の窓口で、単独での払戻しが認められます。
単独で払戻しをすることができる額=相続開始時の預貯金債権の額×1/3×当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分
(例)預金残高600万円
相続人が配偶者と子2人で長男が払戻しを行う場合(長男の法定相続分は1/4)
600万円×1/3×1/4= 50万円
※1つの金融機関から払戻しが受けられるのは、150万円まで
(2)保全処分の要件緩和
仮払いの必要性があると認められた場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められます。これには2つの方法があり、1つは限度額があることから、緊急的および少額な支払い用途に、もう1つについては比較的大口な用途に利用できます。
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各種届け出や手続きをなるべく早く行う
葬儀で一段落とはいきません。各種関係機関への届け出や手続きを行う必要があります。
■故人が年金を受け取っていた場合
「受給権者死亡届(報告書)」を年金事務所または年金相談センターに提出し、年金の受給を停止します。手続きの期限は、国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内です(日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、原則として、「年金受給権者死亡届(報告書)」を省略できます)。
また、未支給の年金受け取りがある場合の請求、遺族年金についても確認しましょう。
■2週間以内にやること(住民票のある市区町村役場)
・国民健康保険もしくは後期高齢者医療保険、介護保険の喪失届および保険証の返却
・(必要であれば)世帯主の変更届
■その他
郵便物の転送届、クレジットカード解約、運転免許証の返納、金融機関への連絡、生命保険会社への連絡(保険金の受け取り請求)、電気・ガス・水道などの名義変更など
「相続手続き」は、故人の想いを大切に進めたい
故人が生前どんな想いであったのか、何を遺したのかを、遺された家族で共有できればよいですね。遺言書があればよいのですが、増えているとはいえ、その数はまだまだ少ないのが現状です。
相続は、亡くなられた方の財産を遺された方に引き継ぐこと。それはプラスの財産ばかりとは限りません。マイナスの財産(借金)も引き継ぐことになります。すべてを放棄することも可能です。
■3ヶ月以内
前述の相続放棄(相続財産をすべて受け取らないという意思表示)および限定承認(債務を返済した後に残った財産を受け取る。プラスの財産以上の返済はしない)は、3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをします。限定承認は相続人全員で行います。
この時点までに、遺言書の検認(自筆証書遺言の場合、その遺言が有効かどうかの確認を家庭裁判所にて行う)、相続人の確定、相続財産の調査を行っておく必要があります。
■4ヶ月以内
故人に所得があった場合、故人の代わりに相続人が確定申告を行います(所得税の準確定申告)。
■10ヶ月以内
故人の遺した財産を、誰がどのように引き継ぐのか、相続税を払うのか、相続人全員で話し合いをします(遺産分割協議)。遺言による分割、法定相続割合による分割、税効果を考慮した分割、配偶者の今後の生活に配慮する分割などさまざまです。
相続人全員の同意が得られた時点で、遺産分割協議書を作成し、全員が押印します。1人でも欠けた場合は無効となり、期限を過ぎると、税制優遇などの特例を利用することができなくなりますので注意が必要です。
相続税の納付についても期限を過ぎると延滞税がかかります(申告をしなかった場合は無申告加算税。どちらもしなかった場合は両方が課税)。
争族にならないために・・・
非日常的な「相続」ですが、思いのほか、時間と労力を費やします。遺産分割協議が順調に進めばよいのですが、もめる「争族」が数多く発生しています。「感情と勘定のすれ違い」とも言われ、相続人以外が口出ししてくるなどして長引いたり、裁判に発展したりする事例もあります。
日頃からコミュニケーションを取って、想いを伝え、遺し、受けとめる。そして、新しい一歩を踏み出したいですね。
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士