最終更新日: 2020.06.26 公開日: 2020.06.28
相続

転機に立つ「冠婚葬祭互助会」。競争激化と葬儀簡素化が影響

執筆者 : 黒木達也

少子高齢化が進み、葬儀を簡素にする傾向が年々強まっています。その中で、少額のお金を積み立て人生最後の一大イベントである葬儀の際に、その積立金を利用し、故人を送る目的で作られた組織「冠婚葬祭互助会」が転機に立たされています。
 
黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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黒木達也

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執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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多額の出費に備えて積み立てる

「冠婚葬祭互助会」は、葬式や結婚式の出費額は多額になるため、日ごろから準備し積み立てることにより、イベントを盛大に行っても困らないよう作られた組織です。昭和20年代の混乱期に多くの互助会が組織され、少額資金を積み立てることで、イザという際に活用してきました。
 
とくに終戦直後は、人々の暮らしが豊かではなかったため、積み立て方式による費用の捻出は、結構人気がありました。子女の婚礼に際して積立金を利用する人もいましたが、多くは身内の葬式費用となっていました。
 
互助会に加入していれば、先払いした積立金に応じた葬儀を、通常価格より安く実施できました。さらに互助会が運営するホテルやレストランで、安く食事や宿泊ができる、という付加的なサービスも受けられます。
 
しかし現在、加入者の多くは親が加入し権利を引き継いだ高齢者が中心で、若い新規加入者は少ないのが実情です。
 
昭和の終わりころまでは、全国的にも互助会が増加し、多くの葬儀も取り仕切ってきました。専用の葬儀場を所有する互助会も多く、利用者のニーズに合った葬儀を提供してきました。葬儀を派手に行う地域では、冠婚葬祭互助会への加入者も多くいました。

新たな企業が葬祭事業に参入

昭和の終わりまでの葬儀といえば、専門葬儀社と互助会が二大事業者として、圧倒的なシェアを有していました。互助会加入者の家族が亡くなると、互助会に葬儀を依頼します。
 
互助会未加入者の家族が病院で亡くなると、専門葬儀社の用意した寝台車で自宅まで送られることが多いため、その際に声をかけられ、思わず依頼したケースが結構ありました。互助会の場合は積立額に応じた金額で賄いますが、専門業者の場合は知らないうちに高額になるケースがよく見られました。
 
しかし日本人の葬儀への意識も変化し、葬儀にあまり費用をかけたくない、という風潮は高まってきました。盛大な葬儀が減り、家族葬が増えています。高齢化の影響で葬儀の総数自体は増えているため、葬祭事業に参入する企業も出てきました。
 
具体的には、電鉄会社、ホテル、生花店、介護事業者、生活協同組合(生協)・JA(農業協同組合)などが得意分野を生かし、葬儀会場の建設、葬儀様式の提案・運営に参入し、競争が激しくなっています。
 
最近ではネットを利用した仲介サービスが、業績を伸ばしています。ネットサービスを提供する会社は、ブラックボックスだった葬儀費用を、可視化し安い葬儀を提案することで、業績を伸ばしてきました。
 
例えば、僧侶を招いた際のお布施の金額、葬儀に用いる祭壇・ひつぎの価格などを比較・明示します。遺族が聞きにくいこともよくわかります。どこに依頼するかの決め手となる、金額の比較が可能です。
 
ただしネットサービス会社の中には、見かけ上の金額は安くても、車両費や遺影代などが別料金として計算されることも多く、結果として高額になるケースもあり、事前に確認する必要があります。
 
互助会でもネット発信には力を入れ始めており、会員以外の利用拡大を目指し、わかりやすい料金メニューを提示しています。家族葬など小規模な葬儀にも対応し、成果をあげている互助会もあります。
 
業界全体でも言い値で料金が決まる習慣がなくなり、可視化された適正価格が定着しつつあります。専門葬儀社も、言い値の請求が通用しにくくなっています。ネットの場合、低価格と明朗会計が評価され、利用者も増えそうな勢いです。

従来モデルが成立しにくい

葬儀の簡素化が進むに伴い、互助会を支えたビジネスモデルが転機を迎えています。互助会の契約件数が年々減るだけでなく、事業者数も減少しています。
 
盛大な葬儀が減り、家族葬など規模が小さい葬儀が増えるにつれ、葬儀費用も減少しています。そのため、若い世代を中心に、新たに互助会に加入し「葬儀に備えて積み立てる」という発想をしなくなってきたのです。
 
互助会にとって頭の痛い問題は、新規の加入者が増えないだけでなく、解約を希望する会員が増えていることです。
 
親の世代が加入契約をして積み立ててきた金額を、子の世代が、葬儀費用のために残しておく必要がないとして、解約希望が増えているのです。新型コロナ危機は、さらなる解約増加に拍車をかけるかもしれません。
 
互助会側とすれば、潤沢な積立金の存在は、経営の安定にも直結するため、会員の解約増加は好ましい事態ではありません。そのため、会員であることのメリットを強調し引き留めようとしますが、解約増の流れは止められていません。
 
中には、高い解約料を請求する、解約をすぐに受け付けない、といった互助会もあり、解約希望者との間でトラブルになっています。

財務状況が悪化し危機感をもつ互助会も

互助会の保有している積立金は、会員から事前に受け取っているため、額が多いと新規の事業展開には非常に役に立ちます。金融機関から借り入れることなく、葬儀場なども自前で建設することが可能です。
 
しかし解約増などで加入者が減ると、積立金が減少し事業展開に支障をきたす事態も起こってきます。
 
急速に加入者が減るようだと、体力のない互助会は債務超過などが起こり、経営上の危機が訪れます。実際、2015年に290社ほどあった互助会は、2019年には統廃合により240社ほどに減少しています。
 
これまで順調に続いてきた、事前に積立金を集め事業展開するモデルが、狂い始めているのです。
 
すべての互助会が危機に見舞われているわけではありませんが、同一地域内での互助会同士の競業もあり、体力が弱い互助会は、廃業や大きな互助会との統合が起こっています。今後も債務超過を起こす互助会が増えることも考えられ、さらなる統廃合が進む可能性もあります。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト

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