更新日: 2024.01.22 その他相続

遺産の分割協議がまとまらないという話をよく聞きます。事前にどんな準備をしておけばよいのでしょうか?

執筆者 : 伊達寿和

遺産の分割協議がまとまらないという話をよく聞きます。事前にどんな準備をしておけばよいのでしょうか?
相続が発生すると、被相続人の財産を相続人が引き継ぐための手続きを行いますが、その中でも重要なのが遺産分割協議です。
 
遺産分割の内容は、相続人間の話し合いで決めることになります。ただし、各相続人の事情や相続人間の感情的な対立によって、話し合いがスムーズに進まないことがあります。また、裁判などに至るケースもあるので、できるだけ円満な相続ができるように準備しておきたいものです。
 
今回は、遺産分割協議がまとまらない事態を避けるために、事前準備のポイントを紹介します。
伊達寿和

執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)

CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。

親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp

遺産分割の大まかな手順

相続の手続きにおける遺産分割は、遺言書の有無で手順が異なります。
 
まず、被相続人が生前に遺言書を作成している場合は、原則として遺言書の内容に従って財産の分割を行います。しかし、遺言書がない場合や、遺言書に記載されている内容が不十分な場合、遺産分割協議をする必要があります。
 
遺産分割協議は相続人全員での話し合いとなりますが、財産を分割する方法や割合について、なかなか決まらない場合もあります。話し合いが長期間続いたり、争いになったりするケースのほか、最終的に裁判所の介入が必要になることもあります。
 
その場合、裁判所において調停を行い、さらに調停でもまとまらないときは審判を受ける流れとなります。
 
裁判所の司法統計年報によると、令和4年の遺産分割事件は1万2981件あり、そのうち調停が成立したものが5729件、調停に代わって審判となったものが3791件です。裁判になると、いわゆる「争続」となってしまい、家族の関係も壊れてしまう危険性すらあります。
 

遺言書のメリット

相続での争いやトラブルを最小限に抑えて、遺産分割を円滑に進めるためには、事前の準備が不可欠です。中でも、相続対策として有効なのが遺言書の作成です。遺言書は、自分の財産を死後どのようにしたいか、その意思を残しておくための法的な手段であり、遺産分割において非常に有効な手段です。
 
遺言書には、大きく分けて次の3つのメリットがあります。
 

・被相続人の意思が明確になり、財産の分割が円滑に進む
・被相続人の思いを家族に伝えることで、家族内での対立や争いを未然に防ぐことができる
・遺言書があると原則として遺産分割協議は不要なため、相続の手続きが迅速に進められる

 
遺言書には、自筆で作成した書面に押印する「自筆証書遺言」、証人2人以上とともに公証役場にて公証人の下で作成する「公正証書遺言」などがあります。作成の手間や費用、遺言の内容の有効性が確保できるかなど、それぞれのメリット、デメリットを比べて作成するといいでしょう。
 

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家族内のコミュニケーションや専門家への相談も有効

家族内で日頃からコミュニケーションを取っておくことも、相続の発生時に争いやトラブルを避けるためには必要なことです。相続人となる家族がそれぞれの状況を知っておき、希望や考えを共有しておくと、協議が円滑に進みやすくなります。
 
一方で、例えば兄弟の仲が悪い、疎遠な家族がいるといったケースではコミュニケーションが不足していることが多く、遺産分割協議でもめる可能性が高くなります。そのような場合は、前述のように遺言書を作成しておくなど、法的な対策が重要になるでしょう。
 
相続は法的な手続きですので、第三者の視点やアドバイスも有効です。相続について不安な点があれば、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に事前に相談し、適切なアドバイスを受けておくことも大切でしょう。
 

まとめ

相続において遺産分割協議は重要な手続きですが、相続人の感情が伴うことがあるため、協議がまとまらないケースもあります。
 
争いやトラブルを避けるためにも、遺言書を作成しておく、家族内で相続についての考えなどを共有する、専門家の協力を得るなど、事前に準備や対策をしておきましょう。
 

出典

裁判所 令和4年 司法統計年報(家事編)
 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

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