更新日: 2024.03.18 贈与
祖母が「大学4年分の学費に」と500万円くれました。国立大学に合格できたので「250万円」程度で足りそうですが、全額受け取って大丈夫ですか? 税金の支払いなど必要なのでしょうか?
ただ、実際に必要な金額以上のお金を受け取っても問題ないのか気になりませんか? 贈与税が絡んできそうな話ですが、実際のところはどうなのでしょうか。
本記事では、祖父母が出した孫の大学費用の取り扱いと、「教育資金の一括贈与制度」について解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
孫の学費として渡した贈与には贈与税がかからない
基本的に人から人へ財産の移転(贈与)があれば贈与税がかかりますが、社会通念上、贈与税を課すことがふさわしくないと認められる贈与については、贈与税がかからないと定められています。その中には扶養義務者が負担する教育費も該当します。
祖父母は孫の扶養義務者に該当することから、孫に援助した学費に対して贈与税はかかりません。ただし、贈与税がかからないのは「生活費や教育費として必要な都度、直接これらに充てるためのもの」に限られる点に注意しなければなりません。
つまり、例えば国立大学の入学金約28万円の請求があってから、28万円を渡した場合には非課税となりますが、その際に4年分の学費のためにとざっくり500万円を渡した場合には、28万円を除く472万円は贈与税の対象になってしまいます。
必要な都度、または年間110万円以内で贈与する
よって、贈与税の対象とならずに孫へ500万円を贈与したい場合には、大学からの学費の請求がある都度、孫から連絡をもらい支払う形にするとよいでしょう。
もしくは、贈与税には年間110万円の基礎控除が設けられていることから、500万円を年間110万円以内に分割して渡す方法もあります。これであれば、孫から学費の連絡をもらう必要がないので楽でしょう。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
相続対策も兼ねている場合には「教育資金の一括贈与制度」も検討
孫への学費援助が祖父母の相続対策も兼ねている場合、複数年かかってしまう前記の贈与方法では、万一途中で祖父母が死亡してしまうと相続対策が達成できません。このような場合には、「教育資金の一括贈与制度」を検討してみましょう。
教育資金の一括贈与制度とは、親や祖父母から30歳未満の子や孫へ教育資金を一括で贈与した場合、1500万円までが非課税となる制度です。手続きは金融機関の窓口で行う必要があり、専用の教育資金口座を開設してそこに贈与金を入金します。
子や孫が学費などで必要な都度、口座から払い出して使用します。子や孫が30歳に到達すると、教育資金口座の契約は終了し、口座残高に対しては教育資金として使わなかったお金となるため、贈与として贈与税の対象になります。
教育資金の一括贈与制度のメリットは、最大1500万円もの金額を一括で非課税にできる点です。学費として使い切れなかった分には贈与税がかかりますが、複数年で贈与を計画して達成できない可能性があることを考えると、一度に、かつ確実に贈与を終えることができます。
まとめ
祖父母からの学費の援助に対しては、基本的に贈与税はかかりませんが、必要な都度、必要分を受け取っている場合に限られます。4年分の学費にと一括で500万円を受け取った場合、特に学費が必要なタイミングではなかった場合には、基礎控除110万円を差し引いた390万円に対して贈与税がかかるので注意しましょう。
贈与税の対象とならないためには、「学費が必要な都度、必要分をもらう」、「基礎控除110万円以内でもらう」などの工夫が必要です。祖父母の相続対策も兼ねている場合には、「教育資金の一括贈与制度」の利用も検討してみてください。
出典
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士