高齢の親が貯金の大半を投資にまわしています。株価が上がると相続税も上がるのでしょうか? 土地建物も複数あるので心配です
配信日: 2024.11.12
今回は、相続税の基本的な仕組みと株式は相続時にどのように評価されるのか、土地や建物の評価とあわせて考えてみたいと思います。
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
まずは相続税の仕組みについて知っておこう
まず知っておくべきことは、相続税とはどのような税金であり、どのような場合にかかる税金なのか? ということです。
そもそも相続税とは、亡くなった親や祖父母(被相続人)などから、現金や有価証券、土地や建物などの財産を受け継いだとき、その受け継いだ財産にかかる税金のことをいいます。
とはいえ、すべての財産に相続税がかかるというわけではありません。
具体的にいうと、相続財産の額から、亡くなった人が抱えていた借金や負債、葬儀費用などを差し引いた後の額が、基礎控除額を上回っているときにかかるのが相続税です。
基礎控除(額)とは、相続した財産から負債や葬儀費用とともに差し引くことができるものです。基礎控除額は計算で導くことができ、3000万円+600万円×法定相続人数で算出された金額です。
たとえば、夫・妻・子ども2人の4人家族で夫が亡くなってしまった場合の基礎控除額は、3000万円+600万円×3人=4800万円が基礎控除額で、これを相続財産から差し引くことができます。
その他にも生命保険控除(500万円×法定相続人数)や、土地の小規模宅地評価減などもありますので、必ずしも表面的に算出できる財産の評価額に対して、相続税がかかるというものではありません。これは株式も同じです。
株価が上がると相続税は上がってしまうけれど……
相談者さまの質問に立ち戻ると、株価が上がると保有している有価証券の総額も増加するので、おのずと相続税も上がってしまいます。
とはいえ、株式の評価額の算出方法にはいくつかのパターンがあります。最も評価額の低い方法で評価額を算出すれば、相続税をおさえることが可能です。
相続時の株価の評価方法は以下のとおりです。
~上場株式~
保有している株式が上場している取引所が公表している課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人が亡くなった日、贈与の場合は贈与によって財産を得た日)の最終価格によって、評価する決まりになっています。
課税時期における最終価格が、以下の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、以下の(1)~(3)の最も低い価額で評価する決まりになっています。
(1) 課税時期の属する月の全最終価格の月平均額
(2) 課税時期の属する月の前月の全最終価格の月平均額
(3) 課税時期の属する月の前々月の全最終価格の月平均額
ただし、課税時期に最終価格がないときや保有している株式に権利落ちなどがあるときには、一定の修正をする必要があります。
~取引相場のない株式(未上場株式)~
原則的評価方式と特例的な評価方式があります。
原則的評価方式とは、評価をする株式を発行した会社を従業員数、総資産価額、取引金額により大会社、中会社、小会社にわけて区分してから、評価します。原則として、大会社は類似業種比準方式により評価、中会社は大会社と小会社の評価方法を併用して評価し、小会社は純資産価額方式によって評価します。
特例的な評価方式は、原則として純資産価額方式で評価しますが、清算中の会社の株式の場合は、清算分配見込み額により評価します。
取引相場のない株式の場合、どのように計算をするのか分からないというケースも少なくありません。そのようなときには、株式を発行している会社に「相続時の株式の評価額を教えてください」と申し出ると、計算式とともに評価額を知らせてくれることがほとんどですので、相談するといいでしょう。
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株価が上がっているときには、他の資産への変換や生前贈与なども検討する
株価が上がってしまったことが原因で、相続税を多く支払うのは嫌だと考えているのなら、他の資産へ変換したり、生前贈与などを検討したりするのもいいかもしれません。
とはいえ、株価がどのように動くのか予測はできたとしても、実際の値動きは誰にも分かりません。親御さんには株価が上がったときに相続税も高くなってしまうことを伝え、どのように対策を講じるつもりでいるのか、どのように保有し続けたいのか、処分したいのかをヒアリングし、一緒に行動することが大切なのではないでしょうか。
出典
財務省 Q&A ~身近な税について調べる~ 相続税について教えてください。
国税庁 No.4638 取引相場のない株式の評価
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト