更新日: 2024.11.22 贈与
毎年「110万円までなら非課税だから」と贈与してくれる父。しかし2024年からの「変更点」を見落とすと損な結果に!? 注意点を解説
しかし、2024年1月1日以降は、暦年贈与のルールが変更されているため、最新の税法情報を把握できていない人もいるのではないでしょうか。本記事では2024年から新たなルールが適用されている、暦年贈与の注意点をお伝えします。ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
2024年から変更された「持ち戻し」ルール
改めて暦年贈与について説明すると、1年間(1月1日~12月31日)の贈与合計額が110万円以下である場合、贈与税が非課税となる贈与方法です。
税金を取られずに贈与ができる暦年贈与は魅力的な贈与方法ですが、大きな注意点があります。それが「持ち戻し」ルールです。これは、贈与をした側の人が亡くなり相続を開始するタイミングにて、一定期間分の贈与金額が「持ち戻される」というルールです。
「持ち戻し」が発生すると、生前の持ち戻し期間中に行われた贈与額が相続財産に加算されます。つまり、贈与した側の人が亡くなったタイミングで、結局相続税の課税対象になる可能性があるということです。
この「持ち戻し」ルールの対象期間は、2023年までは「3年間」でした。しかし、2024年1月1日以降は段階的に7年間に延長されることになりました。
例えば、暦年贈与を行っていた人が2031年1月1日に亡くなった場合には、2024年1月1日以降に行った暦年贈与の金額が全て「持ち戻し」となり、相続税の課税対象となってしまいます。
つまり、贈与を初めてから少なくとも「7年以上」存命でなければ、暦年贈与の非課税枠の恩恵を受けることができない点に注意が必要です。
法定相続人以外への贈与であれば「持ち戻し」の対象外
前項で暦年贈与の制度と注意点について解説しました。「持ち戻し」は暦年贈与を行う上で、必ず念頭に置いておかねばならないデメリットです。
しかし、そのデメリットを回避した上で、暦年贈与の非課税枠を利用することは可能です。それが「孫などの法定相続人以外へ暦年贈与を行う」という方法です。
「持ち戻し」制度の対象となるのは、子や配偶者をはじめとした法定相続人への贈与です。つまり、孫に贈与を行うことで、「持ち戻しの対象外」とすることができます。そのため「子どもより孫に渡すほうが、将来の課税リスクを低減することができる」といえるでしょう。
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現在の税制を念頭に、より良い贈与方法の選択を
暦年贈与は節税の方法として非常に有効な生前贈与ですが、2024年1月1日から新しいルールが適用されており、「持ち戻し」期間が7年まで延びています。贈与者の年齢も考慮した上で、「誰に贈与すべきなのか」を検討するようにしましょう。
また、贈与をする上で重要なのが、贈与者の「意思判断能力」です。意思判断能力を伴わない場合、贈与が認められないケースもあります。今後の財産管理について、帰省時などにしっかりと話し合えるとよいですね。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
財務省 令和5年度 税制改正の大綱
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート