扶養内「103万円」でパートしているけれど、父の死後「600万円」の遺産が! 扶養を抜けることになる?「相続と扶養の関係」について解説
配信日: 2025.01.08
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
大きな財産を相続しても扶養を抜けることにはならない
結論として、多額の現金を相続しても、年収の壁の計算には含まれないため、扶養を抜けることにはなりません。なぜなら相続財産は給与所得の対象でもなく、扶養認定の際の収入としてカウントされないからです。
なお、生前贈与についても同様です。例えば暦年贈与の非課税枠である「年間110万円」を受け取ったとしても年収の壁の計算には含まれないため、扶養を抜けることにはなりません。
そのため相続や贈与を受けたとしても、今まで通りパートを続けてよいといえます。相続財産はありがたく受け取りつつも、ワークスタイルを維持することで、将来に向けた資産形成に取り組むとよいでしょう。
税金の関わる年収の壁
ここからは税金に関係のある年収の壁についてみていきましょう。税金に関しては以下の4つの壁があります。
(1)100万円の壁:年収が100万円を超えると住民税が課税されます
(2)103万円の壁:年収が103万円を超えると所得税が課税されます。配偶者控除(38万円)が適用できなくなり、代わりに配偶者特別控除が適用されるようになります
(3)150万円の壁:年収が150万円を超えると配偶者特別控除が満額(38万円)適用できなくなり、以降はパートタイム労働の収入によって徐々に減額されていきます
(4)201万円の壁:配偶者特別控除の対象ではなくなります
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社会保険の関わる年収の壁
続いて、社会保険に関係のある年収の壁について紹介します。社会保険に関しては以下の2つの壁があります。
(1)106万円の壁:勤め先によって社会保険加入の対象になるとともに、健康保険・厚生年金保険の保険料の支払いが発生します。具体的には「従業員51人以上の会社に勤めている」人は対象となる可能性が高いです。
(2)130万円の壁:国民年金・国民健康保険の保険料の支払いが発生します。
まとめ
思いがけず多額の財産を相続したとしても、相続財産は年収の壁の計算には含まれないため、扶養を抜ける必要はありません。そのため今まで通りのワークスタイルを維持して問題ないといえます。
また、年収の壁の種類については、前述したようにいくつかの種類があるため、それぞれの壁を超えて収入を得てしまった場合のデメリットについて把握しておくとよいでしょう。勤務先が従業員それぞれの年収の壁を考慮したシフト組みをしてくれるとは限らないため、給与管理は自身で正確に行うようにしてください。
出典
厚生労働省 『年収の壁について知ろう』
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート