亡くなった父が乗っていた「車」を引き継ぐ場合、相続税はかかりますか? かかる場合はどのような評価基準になるのでしょうか?
財産の評価は、それぞれの評価方法を基に、時価として算出されます。また、他にも一般動産として、事業用の機械および装置、車両、一般家庭用の家具、什器なども相続税の対象となります。
本記事では、一般家庭用の「車」を相続した場合の評価について確認していきます。
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
一般動産の評価方法
国税庁が公表している、一般動産の評価方法を解説した「財産評価基本通達129一般動産の評価」によると、「一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。」と示されています。
つまり、一般動産の評価は、売買実例価格や精通者意見価格による評価と、使用期間分の償却費を控除した金額による評価の2つに大別されます。
車の評価方法
一般動産の一つである車の評価方法は、具体的には以下の4つの方法があります。
【売買実売価格、精通者意見価格による評価方法】
(1)中古車市場の業者による買い取り価格相場
中古車市場の業者による販売価格相場ではなく、買い取り価格相場により評価します。評価に必要となる情報は、「年式、メーカー、車種・グレード、走行距離、色」となります。
これらを基に、中古車買い取り業者のサイトで買い取り価格相場を検索することができます。ただし、傷や不具合などの個別的な状況によって、減額されることも想定されます。
(2)売却価格による評価
相続する車を使用しない場合には、売却することも多いと思われます。最も分かりやすい評価方法として、その際の売却代金を相続税評価額として計上する方法があります。ただし、売り急ぎや親族等に安価で売却した場合には、適用できないこともあるので注意しましょう。
(3)査定額による評価
ディーラーや中古車買い取り業者の売却査定を基に、査定書の金額で評価する方法です。
【償却費を控除する評価方法】
(4)使用期間に応じた減価償却による評価
車が市場で流通していないなどの理由から売買実例価額を基準とすることが難しいケースでは、特例として減価償却方式を用いて評価します。相続開始日時点までの償却相当額を算出し、その金額を新車価格から控除して算出します。普通自動車の新車の耐用年数は6年(軽自動車は4年)で、償却方法は定率法で計算します。
車の所有者が誰かを確認
自動車検査証(車検証)を見てみると、車の所有者が被相続人でないケースがあります。
一般的には、被相続人が車を現金一括で購入した場合や銀行のローンで購入した場合には、車の所有者と使用者がともに被相続人名義となります。また、販売店のローンで購入し、残債がある場合には、ローン会社が所有者(使用者は被相続人)となっています。
もし、ローンの残債がある場合には、相続人がマイナスの財産として残債を引き継ぐ必要があります。この場合には、残債の一括返済、返済の引き継ぎ、車の返却などの対応方法についても検討が必要です。
さらに、車を相続する者が決まった場合には、車の名義変更の手続きや自動車保険(自賠責保険、任意保険)の契約変更や解約についても非常に重要となります。これらの手続きを怠ると、車の売却や廃車処分ができなかったり、故人名義のままの保険であるため、万が一の際に保険が適用できなかったりすることも想定されます。
まとめ
車を相続した場合の財産評価の方法は意外に複雑で、どの方法が有利になるかなどの判断も困難な場合があります。また、被相続人が車を生前贈与した場合や、車の購入資金を貸し付けたり、贈与したりするケースもあります。
それぞれのケースで相続開始時にどのような影響が出るのかなど、総合的な判断を要することも想定されます。不明な点などがある場合には、自分で判断せず、税務署や税理士等の専門家に早めに相談することが望ましいと思われます。
出典
国税庁 法令解釈通達 第6章 動産 第1節 一般動産
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー