父が亡くなり「2000万円の預金と家」を相続したものの、半年後に「1000万円の借金」が発覚…今からでも相続放棄できますか?
ただし、相続放棄は条件を満たしていなければ認められません。今回は、相続放棄の条件や、借金と相続税の関係などについてご紹介します。
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相続放棄が認められる条件
相続放棄ができるかは、相続をした時点で借金があることを知っていたのか、また相続の承認をしていたのかで変わります。最高裁判所によると、相続放棄は自分に相続があることを知ってから3ヶ月以内の申述が必要です。もし理由なく3ヶ月を超えた場合は、相続放棄はできません。
しかし、借金があったことを知らなかった、もしくは借金があるか判断できる材料がそろっていないことを証明できる場合は、裁判所に申し立てることで3ヶ月を超えていても相続放棄を認められる可能性があります。
ただし、相続の単純承認をしていると判断された場合は、相続放棄できないケースもあるでしょう。単純承認とは、相続人が被相続人の全ての資産と負債を引き継ぐことです。民法第921条では、以下の行為を単純承認とみなすと示しています。
●相続財産の処分
●定められた期間内に限定承認や相続放棄をしなかった
●限定承認や相続放棄をした後でも、相続財産を意図的に隠したり私的に消費したりする
例えば、相続をしてすぐに実家を売ってしまうと、相続財産の処分となるため相続放棄はできない可能性があります。
相続放棄に必要な書類
相続放棄は、相続を知ってから3ヶ月以内に亡くなった本人の最後に住所があった地域の家庭裁判所へ申述して認められるとできます。申述には、相続放棄の申述をする人物1人当たり800円分の収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要です。
さらに、亡くなった本人の子どもが相続放棄をする際は、申述にあたって以下の書類も用意しましょう。
●相続放棄の申述書
●申立添付書類
●亡くなった本人の住民票除票もしくは戸籍附票
●相続放棄をしたい本人の戸籍謄本
●亡くなった本人の死亡の記載のある戸籍(もしくは除籍か改製原戸籍)謄本
書類によっては役所でないと入手できないものもあるので、相続放棄をしたいならできるだけ早く準備を始めた方がよいでしょう。
借金の有無で税額はいくらくらい変わる?
もし単純承認をしてしまった場合は、相続した金額に応じて相続税の納付が必要です。ただし、税額を求めるときに、借金を始めとする債務は、相続した合計金額から差し引いて計算できます。そのため、後から借金が見つかると、税額が安くなるケースもあるでしょう。
例えば、預金2000万円と2000万円の家で合計4000万円を子ども1人で相続していたとします。相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」なので、3600万円を引いた400万円が課税対象です。国税庁によれば、400万円のときは税率が10%となり、相続税は40万円が課されます。
一方、4000万円の相続後に1000万円の借金があった場合、借金分は差し引けるので相続財産は3000万円になります。基礎控除額よりも低い金額なので、借金があると相続税は課されません。
今回の例だと、相続した財産から借金も返せるなら、税金負担は軽くなるでしょう。すでに申告済みの場合は、更正の請求手続きをすると多く支払った税額を還付してもらえる可能性があります。
なお、借金以外にも葬式費用や仏壇なども相続した金額から差し引いて計算できます。
家の処分などをしていて単純承認をしているとみなされると相続放棄はできない可能性がある
相続放棄が認められるには、相続を知ってから3ヶ月以内に申述しており、かつ単純承認をしていないことが条件です。借金があったことをまったく知らず、単純承認もしていなければ、裁判所に申し立てることで3ヶ月を超えても相続放棄できる可能性はあります。
しかし、相続した家を処分したり相続した預金を使ったりした場合は、単純承認したとみなされるため、相続放棄は認められない場合があるでしょう。
借金は相続税の計算時に相続総額から控除できるので、相続した財産から返済できるなら相続放棄をしなくても相続税が安くなる可能性があります。相続放棄ができないときでも、相続税の再計算をして申告すれば、払いすぎた分を還付してもらえるでしょう。
出典
最高裁判所 裁判所ウェブサイト 相続の放棄の申述
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第五編 相続 第四章 相続の承認及び放棄 第二節 相続の承認 第一款 単純承認 第九百二十一条(法定単純承認)
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版) 財産を相続したとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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