父が死亡したけど「葬儀代100万円」を用意できない! 相続前でも「父の口座」から払うことはできる? 通帳を預かっていたなら問題ない?「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を解説

配信日: 2025.05.18 更新日: 2025.07.02
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父が死亡したけど「葬儀代100万円」を用意できない! 相続前でも「父の口座」から払うことはできる? 通帳を預かっていたなら問題ない?「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を解説
突然、親が亡くなり、葬儀代として100万円が必要になったものの現金の用意が間に合わない、ということは少なからずあります。そんななか、「父から通帳を預かっているし、そこから葬儀代を払えないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、亡くなった人の口座からお金を引き出しても問題はないのでしょうか?
 
結論から言えば、相続手続きが終わる前でも、一定の条件を満たせば故人の口座からお金を引き出すことは可能です。2019年の法改正で導入された「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」により、限度額の範囲内であれば葬儀代に充てるための払い出しが認められています。とは言え、制度を利用するには事前にしっかり確認しておくことが大切です。
 
本記事では、遺産分割前でも預金を引き出せる「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」について、その内容と注意点を解説します。
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相続前に故人の口座から預金を引き出すリスク

「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を解説する前に、まずは相続前に故人の口座から勝手に現金を引き出すことのリスクについて説明します。
 
金融機関では、預金者が亡くなったことを確認した時点で、口座を凍結するのが原則です。そのため、金融機関が死亡を認識するまでの間は、キャッシュカードや通帳を使って預金を引き出すこと自体は可能ではあります。ただし、この期間に出金を行うと、以下のようなトラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。
 

親族間でトラブルが起こる可能性がある

他の相続人から、無断で預金を引き出す行為が「不正行為」と見なされることがあります。引き出したお金は相続財産として扱われるため、後に相続人間で争いが起こりやすくなります。このような行為は、親族間の信頼関係に亀裂を生じさせる可能性があるため注意が必要です。
 

相続放棄ができなくなる可能性がある

相続では、故人の財産(プラス)だけでなく、負債(マイナス)も承継します。借金が多額である場合などは、家庭裁判所に申述すれば相続放棄が可能です。
 
しかし、無断で預金を引き出すことは「単純承認」と見なされます。そのため、たとえ多額の借金が後から判明したとしても、相続放棄や限定承認をすることはできなくなります。
 

遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは

「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」とは、遺産分割の前でも、相続人が一定額の預貯金を単独で引き出せる制度です(民法909条の2)。
 
相続が発生すると、金融機関は故人の口座を凍結し、預金を引き出せなくなります。さらに遺産分割協議に時間がかかると、葬儀費用や当面の生活費を相続人が立て替える必要があり、喪主などの負担が大きくなることもあります。
 
こうした状況をふまえ、相続人が必要な支出に対応できるよう、本制度が導入されました。なお、払い戻した預金は相続財産の一部として扱われ、後日の遺産分割協議で調整されます。必要書類など、制度の取り扱いは金融機関によって異なるため、利用を検討する際は取引先の銀行に事前確認しておくといいでしょう。
 

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相続預金を払い戻す際の方法や注意点

遺産分割前の相続預金の払戻し制度では、家庭裁判所の判断により払戻しを受けることもできますが、各相続人が単独で金融機関の窓口に申請し、預金を引き出すことも可能です。
 
こちらは他の相続人の同意や裁判所での手続きは不要ですが、払い戻し額には上限があります。金額は以下の式で算出され、1つの金融機関につき150万円が上限です(民法909条の2前段)。
 
相続開始時の預金額 × 1/3 × 申請相続人の法定相続分
 
金融機関の窓口で預貯金の払い戻しを受けるには、銀行の場合、次の書類が必要とされています。

●被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本または全部事項証明書
●相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
●払い戻しを行う相続人の印鑑証明書

書類の不備があると手続きが進まないため、事前に取引先金融機関に必要書類等を確認しておくと安心です。
 

まとめ

「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」で引き出せる金額は、一定の計算式に基づいて算出され、かつ1つの金融機関につき上限150万円までと定められています。そのため、その範囲内に該当しているのであれば、100万円の葬儀代を相続前に引き出すことも可能です。
 
ただし、無断で引き出すと他の相続人の不信感を招く恐れがあるため、「葬儀代に使うため預金を引き出す」と一言伝えておくと理解が得られやすいでしょう。また、借金など未確認の財産が後から見つかる可能性もあります。内容をしっかり確認したうえで、この制度を上手に活用することが大切です。
 

出典

法務省 相続に関するルールが大きく変わります
e-GOV法令検索 民法
一般社団法人 全国銀行協会 遺産分割前の相続預金の払戻し制度のご案内チラシ
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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