亡くなった母は借金があると聞いていたので相続放棄をしたのですが、あとから「5000万円」の遺産が見つかりました…相続放棄は取り消せますか?
相続放棄を取り消したいときは、条件を確認しておきましょう。今回は、相続放棄の撤回や取り消し、また財産を相続したときの税金などについてご紹介します。
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目次
相続放棄は撤回できない
原則として、相続放棄後の撤回はできないでしょう。民法919条1項によると、相続を承認したり放棄したりしたあと、撤回は認められないと示されているためです。撤回とは、今までの相続放棄の状態はそのままに、撤回した時点から将来にわたって相続放棄をなかったことにしようとする行為を指します。
一方、取り消し行為は認められる可能性があるため、必要に応じて家庭裁判所や専門家に相談するといいでしょう。取り消しとは、相続放棄を決めたときまでさかのぼってその決定を無効とすることです。
民法919条2項では、相続の承認や放棄の取り消しを1項で示されている規定は妨げないと定められています。ただし、申請すれば必ずしも取り消せるわけではない点に留意しておきましょう。
相続放棄の取り消しが認められるケースとは
まず、相続放棄を取り消したいときは民法919条4項により家庭裁判所に申し出る必要があります。ほかの相続人に「私は相続放棄を取り消す」と伝えても、家庭裁判所に認められなければ取り消せません。また、家庭裁判所に申し出が認められる可能性があるのは、以下の条件に当てはまっているときです。
●未成年者が自己判断で勝手に相続放棄をした
●相続放棄に関して錯誤(勘違い)があった
●相続放棄を詐欺や強迫されたことで実行した
未成年者が自己判断で相続放棄できない理由は、民法第5条で「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」と定められているためです。
また、ほかの相続人から「母は借金しかなかったから相続しない方がいい」とだまされたり、脅されて相続放棄せざるをえなかったりしたときも、取り消しが認められることがあります。
ただし、認めてもらうためには錯誤や詐欺、強迫があった事実を証明できるものが必要でしょう。証明できなければ、認められない可能性があります。また、追認(取り消せるものを取り消さず有効だと認めること)ができるようになってから6ヶ月以内、もしくは相続放棄から10年以内に行わないと、時効となるため注意しましょう。
相続放棄の取り消しをすると相続税の課税対象になる可能性がある
相続放棄を取り消して財産を相続した場合、金額によっては相続税の課税対象になります。国税庁によると、相続放棄の取り消しにより新たに課税対象となった場合、期限後申告ができると示しているため、状況によっては期限を過ぎていても税金申告が必要です。
仮に、5000万円を一人で相続したとしましょう。相続税の基礎控除額は「3000万円+法定相続人数×600万円」のため、基礎控除3600万円を引いた1400万円が課税対象です。1400万円のとき、税率は15%、控除額は50万円のため、相続税は160万円が課されます。
相続放棄を取り消す前に、こうした金銭面や手続きの負担が増える可能性も考慮して判断しましょう。
相続放棄の理由が錯誤や詐欺、強迫なら取り消せる可能性がある
相続放棄の取り消しは、錯誤や詐欺、強迫によりなされたものであれば、可能でしょう。ただし、錯誤や詐欺、強迫によるものという証明が必要です。
なお、遺産を取得した際、金額によっては相続税の課税対象になる場合があります。期限後申告も可能なので、忘れずに税金申告しましょう。判断ができない場合は、専門家に相談することも選択肢の一つです。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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