80歳の父が病気で入院。「おしどり贈与」を利用して、実家の名義を母へ変更するか悩んでいるそうです。「相続税対策」とのことですが、節税になるのでしょうか?

配信日: 2025.06.14 更新日: 2025.07.02
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80歳の父が病気で入院。「おしどり贈与」を利用して、実家の名義を母へ変更するか悩んでいるそうです。「相続税対策」とのことですが、節税になるのでしょうか?
高齢の親が病気で入院すると、今後の相続や財産の整理について考える機会が増えます。今回のように、父親名義の実家を母親名義に換えることで節税につながるのかどうか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか? 本記事では、「おしどり贈与」という制度を使った場合の節税効果や注意点をわかりやすく解説します。
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おしどり贈与とは? 配偶者間の贈与が非課税になる制度

「おしどり贈与」とは、「贈与税の配偶者控除の特例」のことを指します。結婚して20年以上の夫婦間で、居住用の不動産やその購入資金を贈与する場合、最大2000万円まで贈与税がかからない制度です。これに通常の贈与税の基礎控除110万円を加え、合計2110万円までは非課税となります。
 
たとえば、夫から妻へ住んでいる家を贈与する場合、その評価額が2110万円以下であれば贈与税はかかりません。ただし、この特例は一生に一度しか使えず、贈与を受けた翌年3月15日までに受贈者がその家に住み、その後も住み続ける見込みがあることと、贈与税の申告が必要です。
 

実家の名義を母に変更して節税になるの?

一見すると、おしどり贈与を利用して実家を母の名義に変更すれば相続税が軽くなりそうに思えます。しかし、必ずしもそうとは限りません。
 
相続時には「配偶者控除」があります。「配偶者控除」とは、配偶者が相続する財産は「1億6000万円」または「法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは相続税がかかりません。つまり、夫が亡くなったときに妻が実家を相続すれば、よほど多額の資産がない限り(課税総額が1億6000万円を超えない限り)相続税は発生しないのです。
 
また、相続の際には「小規模宅地等の特例」が適用される可能性があり、その際には実家の評価額を最大80%減額して相続税課税総額を計算することができます。一方、贈与で名義変更してしまうと、この特例は使えなくなります。
 
したがって、贈与にかかる登録免許税や不動産取得税を考慮すると、今の段階で贈与を行うことが必ずしも節税になるとは言えないのです。
 

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おしどり贈与の落とし穴と注意点

おしどり贈与にはいくつか注意点があります。
 
まず、贈与税は非課税でも、登記を変更する際には登録免許税(固定資産評価額の2%)や不動産取得税(評価額の3%)がかかる点です。これらは数十万円単位の出費になる場合もあります。
 
また、実家の名義を父から母に変更し「おしどり贈与」をした場合、もし母が先に亡くなってしまうと相続税の課税対象になるため、結果的に相続税負担が増える可能性もあります。
 
そして、おしどり贈与は一度きりしか使えないため、他にもっと有効なタイミングがあった場合、その機会を失ってしまう恐れもあります。
 
制度の恩恵を最大限に受けるためには、家族構成や財産全体のバランスを見ながら、総合的に判断する必要があります。
 

まとめ:おしどり贈与は節税効果だけで判断しないこと

おしどり贈与は、条件を満たせば最大2110万円まで贈与税がかからず、不動産を配偶者に渡せる便利な制度です。しかし、必ずしも節税につながるとは限りません。
 
相続時には、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、贈与よりも税負担を軽減できる制度が整っています。また、登記にかかる費用が発生することや、おしどり贈与は一生に一度しか使えないため、タイミングを誤ると結果的に税負担が大きくなる可能性もあります。
 
最終的には、専門家に相談しながら、家族全体の資産や今後の相続計画を踏まえて判断することが安心です。制度を正しく理解し、合理的な形で準備を進めましょう。
 

出典

国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
総務省 不動産取得税
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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