遺品整理に忙殺され「相続税の申告」が遅れてしまいました…。死後10ヶ月を過ぎたら支払う「税金」が増えるって本当ですか?
本記事では相続税について税法上のルールを解説しつつ、やむを得ず遅れそうな場合の対処法についてもご紹介します。
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「相続税の申告」は死亡日の翌日から10ヶ月以内に行う必要がある
国税庁によると、相続税の申告および納税は、「被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行う」必要があるとのことです。
申告書の提出先は「被相続人の死亡時における住所地を所轄する税務署」です。申告だけでなく、肝心の納税も期限内に行う必要があるため、特に遠隔地の場合は余裕を持って準備しましょう。
「相続税の申告・納税」が遅れた場合のペナルティー
相続税の申告や納税が遅れてしまった場合、各種加算税・延滞税といった表1のような「追徴課税」が課される可能性があります。
表1
| 税率 | 課税されるケースの概要 | |
|---|---|---|
| 延滞税 | 原則年7.3% 令和4年1月1日~ 令和7年12月31日までの期間:年2.4% |
納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までに納付 |
| 原則年14.6% 令和4年1月1日~ 令和7年12月31日までの期間:年8.7% |
納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降に納付 | |
| 無申告加算税 | 5% | 税務署からの調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合 |
| 納付すべき税金額に応じて10~25% | 税務署からの調査の事前通知の後に期限後申告をした場合 | |
| 納付すべき税金額に応じて15~30% | 税務署の調査を受けた後に期限後申告をした場合 | |
| 過少申告加算税 | 10% 期限内申告税額と50万円の いずれか多い金額を超える部分:15% |
期限内の申告について修正申告・更正があった場合 |
| 重加算税 | 過少申告加算税に代えて35% | 財産隠しや事実の仮装隠ぺいなどがあった場合 |
| 無申告加算税に代えて40% |
※筆者作成
「延滞税」は納税の遅れに対して課される一方、「加算税」は申告の遅れやミス、あるいは意図的な隠ぺいなどに対して課される税であるため、これらは同時に発生する可能性があります。基本的には「申告・納税が遅れるほど、また悪意あるケースほど税率が上がる」という認識でよいでしょう。
「相続税の申告・納税」が遅れそうな場合の対処法
こうした追徴課税はきちんと期限を守れば本来払う必要のない税金ですので、遅延は可能な限り避けたいところです。それでも申告や納税が遅れてしまう場合は、以下のような対処法が考えられます。
・未分割申告
一旦法定相続分に則って遺産分割を行ったと仮定し、その金額に基づいて申告する方法です。その際「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することで、「配偶者の相続税の軽減」や「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算」といった特例を、遺産分割協議の完了後に改めて申請できます。
・概算の評価額で申告
相続する土地・家屋などが多く、財産の評価額が確定しないために分割協議が進まない場合、概算の評価額で分割したと仮定し、申告する方法もあります。
少なく見積もってしまうと先述の「過少申告加算税」を追徴される可能性がありますが、多すぎた分は「更正の請求」を行うことで相続税の還付を受けることができるため、多めに見積もっておくとベターです。
・延納の申請
国税庁によれば、相続税などの国税は原則として金銭で期限までに一括納付する必要があります。
しかし、「相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合」には、納税者が申請することにより、納付を困難とする金額を上限として、担保を提供することで、年払いで納付することが可能です。ただし、延納期間中には利子税の納付が必要となります。
まとめ
相続税の申告や納税が遅れてしまった場合、各種加算税・延滞税が課される可能性があります。基本的に申告・納税が遅れるほど税率は上がり、追加で納める税金も増えるため、10ヶ月の期限を過ぎてしまった場合は、可能な限り早めに申告・納税を行った方がよいでしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4205 相続税の申告と納税
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4211 相続税の延納
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー