「マンション転落事故の巻き添え」の悲劇…加害者遺族が“相続放棄”したら、被害者は「泣き寝入り」するしかない? 巻き添え事故で起こること・救済手段を解説

配信日: 2025.06.23 更新日: 2025.07.02
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「マンション転落事故の巻き添え」の悲劇…加害者遺族が“相続放棄”したら、被害者は「泣き寝入り」するしかない? 巻き添え事故で起こること・救済手段を解説
事故は、ある日突然訪れるものです。通勤途中、買い物帰り、公園を歩いているときなど、何の前触れもなく、誰かの不注意や予想外の出来事から事故に巻き込まれて命を落とすケースもあります。
 
例えば、マンションの上階から落下してきた物や人に直撃されるという「巻き添え事故」は典型的な例です。通常、このような事故では、落下した人やその監督者に損害賠償責任が発生します。
 
しかし、加害者が死亡していて、さらに遺族から「相続放棄」された場合には、賠償請求が困難になることがあるのです。
 
本記事では、巻き添え事故の損害賠償の仕組みと相続放棄の影響、そして泣き寝入りを防ぐためにできることを解説します。
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損害賠償とは? 巻き添え事故で何が起きるのか

損害賠償とは、他人の権利や身体、財産などを不法に侵害し損害を与えた場合に、その損害を金銭で補てんする法的義務のことを指します。
 
例えば、マンションの上階から物や人が落下し、下にいた人に直撃して死亡させてしまった場合、その加害者(落下した本人や監督者)には損害賠償責任が生じます。
 
重要なのは、加害者が死亡した場合でも、損害賠償債務は「負の財産」として相続人に承継されることです。つまり、被害者は本来、加害者の相続人に対して賠償を求めることができるのです。
 
しかし、相続放棄されてしまうと、請求先が失われてしまう可能性があります。
 

相続放棄とは? なぜ損害賠償請求が難しくなるのか

相続放棄とは、被相続人(故人)が残した財産や借金などを一切引き継がないとする法的手続きです。民法では、相続放棄をした者は「初めから相続人ではなかった」ものとして扱われます。
 
加害者(被相続人)が死亡し、相続人全員が相続放棄した場合、損害賠償債務の承継者が存在しない状況が生まれます。債務者不在の状態では、被害者は事実上請求先を失い、救済の道が閉ざされてしまうのです。
 
ただし、こうした場合でも救済手段が完全になくなるわけではありません。被害者は「相続人の利害関係者」の立場から、家庭裁判所に対して「相続財産清算人」を選任するよう請求できるからです。相続財産清算人には、加害者が残した財産を管理・処分する権限があります。
 
相続財産清算人は、損害賠償などの請求を考えている人に対して、あらかじめ決められた期限内に申し出るよう公告を行います。巻き添え事故の被害者が期限内に損害賠償請求権を申し出れば、加害者の財産が残っていた場合、その中から損害賠償として一部が支払われることがあるのです。
 
しかし、そもそも加害者にプラスの相続財産がなかった場合、損害賠償を請求するのは現実的ではありません。
 
たとえプラスの財産が残っていたとしても、債権者が複数いる場合、債権額等で按分されるため満額は回収できません。
 
また、相続財産の中に不動産があった場合、「売却代金から賠償金を全部回収できるのでは?」と期待するかもしれませんが、不動産に抵当権が付いていたら抵当権者が優先弁済を受けるので、やはり満額回収は難しくなります。
 

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泣き寝入りを防ぐためにできること

相続放棄によって損害賠償請求が難しくなるケースであっても、ほかに責任を問える方法はあります。
 
例えば、マンションにおける巻き添え事故の場合、マンションの管理者や管理組合に安全対策の不備があれば、管理上の過失として責任を問えることがあります。
 
また、加害者が「個人賠償責任保険」に加入していれば、その保険から損害賠償が支払われる場合もあります。個人賠償責任保険は、火災保険や自動車保険の特約として加入しているケースもあるため、確認してみる価値があるでしょう。
 
被害者側としては、まず事故の経緯を確認し、早い段階で弁護士などの専門家に相談することが、泣き寝入りを防ぐ第一歩となります。
 

まとめ

巻き添え事故の場合、加害者の死亡と相続放棄により、被害者の救済が難しくなる事態は起こり得ます。しかし、相続財産清算人制度、管理責任の追及、保険による補償など、複数の救済ルートが存在します。
 
重要なのは、事故後の迅速な対応と専門的知識に基づく適切な手続きです。複雑な法的問題を一人で抱え込まず、早期に専門家の助言を求めることが、泣き寝入りを防ぐ最も確実な方法といえるでしょう。
 

出典

e-Gov法令検索 民法
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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