父が亡くなり、私が「1000万円相当の家」、兄が「預金3000万円」を相続しました。あとで兄から「平等にしたい」と1000万円を受け取ったのですが、課税されますか?
今回は、相続が終わったあとに遺産を分割しなおしたときの税金や、遺産分割協議をやり直したいときの注意点などをご紹介します。
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
遺産の再分割に税金はかかる?
すでに遺産分割を終えた財産をふたたび分割すると、贈与税の課税対象になる可能性があります。これは、財産の再分割が遺産分割のやり直しではなく、すでに相続した人が保有している財産を、ほかの人へ贈与したという形になるためです。
例えば、父親の遺産4000万円を最初は長男が3000万円、次男が1000万円の家の割合で相続したとします。
まず、この時点で相続税はかかりません。相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」であり、今回のケースだと「3000万円+600万円×2人」で4200万円のためです。基礎控除内なので、相続に際して税金は課されないでしょう。
しかし、あとで長男が「やっぱり平等にしよう」と1000万円を次男に渡して、遺産を2000万円ずつにしたとします。すると、この1000万円は相続ではなく、長男から次男への贈与とみなされるでしょう。
もし、1000万円が贈与されたと判断されると、110万円(基礎控除)を差し引いた890万円が贈与税の課税対象です。このとき、税率は40%、控除額は125万円なので、231万円の贈与税が課されます。
支払うのはお金を受け取った側である次男です。負担を減らしたいのであれば、最初に遺産分割をする時点で平等になるよう話し合って決めた方がいいでしょう。
ケース別遺産を後で再分配するときの注意点
遺産分割協議をふたたび行うときは、状況によってはトラブルにつながる可能性もあるので、注意が必要です。今回は、ケース別に注意したい点を解説します。
あとで相続人の誰かがやり直したいと言った
一度遺産分割協議が終わったあとに、相続人の誰かが「もう一度話し合いたい」というケースです。この場合、相続人全員が同意していれば、やり直しはできるでしょう。また、あとから財産が新しく見つかったときも、その財産の分配を話し合うために遺産分割協議ができます。
さらに、遺産分割の内容に関して誰かに脅迫されたり重大な錯誤があったりしたときは、遺産分割協議への意思表示を取り消せる可能性があります。
民法第95条と第96条では、詐欺や脅迫、重要な錯誤があったときは、意思表示の取り消しができると定められているためです。これらの理由に該当するときは、相続人全員の合意がなくてもやり直せるでしょう。
遺産分割後に遺言が見つかった
もし、遺産分割後に遺言が見つかった場合、基本的には遺言の内容が優先されます。遺言が法的に問題ないか確認したあと、内容を確認して遺言通りに分配しなおすことになります。
しかし、相続人全員が以前遺産分割したままでよい、となった場合は、遺言通りでなくても問題はありません。ただし、遺言の内容を全員が知っていることが前提なので、まずは遺言の内容を全員で確認しましょう。
もし、遺言執行者がいる場合に遺言と異なる分割協議をするには、遺言執行者からの同意も必要です。また、相続人の誰か一人でも反対がいた場合、遺言書通りに分割するか、調停や裁判で分割内容を決める必要があります。遺言によって遺産分割内容が変わったときは、必要に応じて相続税の再計算や修正申告なども行いましょう。
あとから受け取ると贈与税が課される可能性がある
ほかの相続人が受け取った財産を、遺産分割協議後に受け取ると、贈与されたと判断され、金額によっては贈与税が課される可能性があります。今回のケースだと、1000万円の受け取りで231万円の贈与税が課される計算です。
なお、あとから遺産分割協議をやり直したいとき、相続人全員の同意がある場合や、同意内容に対して重要な錯誤や詐欺、強迫があったときなどは可能です。遺言があとから見つかった場合は、内容を確認したうえで相続人全員で遺言通りにするか、以前の分割内容のままにするかを決めましょう。
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修 : 高橋庸夫
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