亡くなった父に「300万円」の「借金」があったことが判明…! 家財道具などを売却したあとでも「相続放棄」はできる?
借金については、相続人は相続を放棄することが可能です。本記事では、すでに遺品を処分した後でも相続放棄ができるのかどうか、その条件や手続き方法についてまとめました。
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目次
相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産を一切相続しないことを選択する手続きです。相続放棄をすると、プラスの財産(現金、不動産、有価証券など)だけでなく、マイナスの財産(借金、債務など)も含めて、すべての相続権を放棄することになるでしょう。
相続放棄は「全部か無か」の選択であり、よい部分だけを相続して悪い部分を放棄するという選択はできない制度といえます。
民法915条では、相続放棄の期限を「相続の開始を知ってから3ヶ月以内」と定めています。この期間内に相続財産の調査を十分できなかった場合など、正当な理由があれば家庭裁判所に申し立てをすれば、この期間は延長可能です。
相続放棄をすると、その効果は相続開始時(被相続人の死亡時)にさかのぼって発生します。法的には「最初から相続人でなかった」という扱いになり、被相続人のプラスの財産を受け取る権利を失う代わりに、借金などの債務も引き継がなくて済むでしょう。
遺品を処分してしまった後の相続放棄は可能?
相続について知った後に、相続財産を処分したり自分のものとして使用したりすると「単純承認」(相続財産のプラス面もマイナス面もすべて引き継ぐこと)をしたとみなされるかもしれません。
民法第921条では、以下のような行為があった場合に単純承認とみなされると規定しています。
●相続人が相続する財産の全部あるいは一部を処分した
●相続放棄をしないまま3ヶ月経過した
●相続人が相続放棄後に相続財産を隠したり、自分のものにしたりした
家財道具を売却することは「相続財産の処分」に該当する可能性があるでしょう。ただし、すべての遺品の処理が相続財産の処分となるわけではなく、以下のようなケースは単純承認とはみなされないことが多いとされています。
●故人の衣服や日用品など、金銭的価値の低いもの
●食料品など、放置すれば腐敗するもの
●遺体の埋葬や火葬、葬儀に関連する行為
●保存すると価値が著しく減少するものの処分
家財道具を売却した場合の対処法
家財道具を処分してしまった後でも、以下のような事情がある場合は、相続放棄が認められる可能性があるでしょう。
●処分時に300万円の借金の存在を知らなかった場合
●相続する意思ではなく、単に故人の部屋を片付ける目的だった場合
●処分した家財道具の価値が、借金300万円と比較して著しく小さい場合
相続放棄の手続きを行う際は、このような事情を記載して「相続放棄申述書」を家庭裁判所に提出します。また、今回のケースでは、家財道具を処分した理由や借金を知った経緯などを説明する「上申書」を添付する必要があるでしょう。
相続放棄が認められなかった場合の対策
相続放棄が認められない場合の代替策として「限定承認」があります。限定承認は、プラスの財産がマイナスの財産(借金)を上回る場合にのみ、その差額分だけを相続人が受け取れる制度です。
限定承認の申し立ても、相続開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があり、相続人全員が共同して申し立てを行わなければならないという制約があります。
相続放棄も限定承認も認められない場合は、債権者と直接交渉して、借金の減額や分割払いなどの条件変更を求めることも1つの方法でしょう。
借金があったことを知る前に家財道具などを処分しても、相続放棄が認められる可能性はある
亡くなった家族に借金があったことが判明する前に家財道具を売却してしまった場合でも、相続放棄ができないとは限りません。借金の存在を知らずに遺品整理で家財道具を処分した場合や、処分した財産の価値が小さい場合は、認められる可能性があるでしょう。
今回のようなケースでは、相続放棄を申し立てる際、家財道具を処分した経緯や借金を知った時期などを詳細に説明する上申書が必要になります。
家財道具を売却した後の相続放棄には専門的な法律知識が必要になることが多いため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
出典
e-Gov 法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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