父の遺産「7000万円」を母と私、年の離れた弟で相続することになりました。弟は未成年なので、家族が代わりに手続きをしても問題ないですか?
今回は、未成年者の相続に関する手続きを家族が代理でできるのか、また未成年者を含む家族で相続したときの税額例などについてご紹介します。
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未成年者の相続は家族が代理で手続きできる?
未成年の家族が相続するときは、基本的に家族が代理で手続きをすることはできないので、家庭裁判所が指定する特別代理人を立てる必要があります。
未成年者も相続自体はできますが、法定相続人として相続することは法律行為となるため、代理人の同意が必要です。民法第5条では「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」と定められているためです。
しかし、民法第826条では「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない」とも示されています。
例えば、家族で相続をする場合、母親が子どもの相続に関する手続きを行うと、わざと子どもの相続分を少なく、自身の分を多くする可能性もゼロではありません。このようにお互いの利益に関係する法律行為に対して、公平を期すために特別代理人を選ぶ必要があるのです。
特別代理人は、未成年者の代わりに遺産分割協議を行ったり相続の手続きをしたりする役割を担います。そのときの相続と関係のない人であれば選任される可能性があります。
もし親が相続人でなければ法定代理人として手続きを進められる可能性はありますが、その場合でも一度専門家や自治体へ相談した方がよいでしょう。
家族3人で相続するときの税額の計算方法
まず、相続税には基礎控除として「3000万円+600万円×法定相続人数」が設定されており、基礎控除を超えた分に対して課税されます。課税される金額が分かったあとの税額の計算方法は以下の通りです。
(1)課税される金額を法定相続分で分けたとして各相続人に分配する
(2)分配された金額で各相続人の税額を求める
(3)求めた税額をすべて合算し、実際に相続した金額の割合で再分配する
(4)控除や加算がある場合は適用する
例えば、家族3人で以下の条件にて相続したときの税額を計算してみましょう。
・亡くなった父親の相続財産総額は7000万円
・法定相続分に基づいて相続する
・遺贈や相続時精算課税制度などは考慮しない
・相続人は母親と長男、次男
・長男は成人済み、次男は15歳0ヶ月
・控除は基礎控除、配偶者の税額軽減(配偶者控除)、未成年者の税額控除
まず、法定相続人数は3人なので、基礎控除額は4800万円です。つまり、基礎控除を引いた2200万円が課税対象となります。
法定相続分に基づくと、母親は2分の1、長男と次男は4分の1ずつ分配されることになります。母親の課税金額は1100万円で税率は15%、控除額は50万円のため、税額は115万円になります。長男と次男は550万円ずつなので、税率はそれぞれ10%、税額は各55万円です。税額の合計は225万円になります。
家族3人の法定相続分通りに税額を再分配すると、母親は112万5000円、長男と次男は56万2500円ずつとなります。ただし、今回のケースにおいて、母親は配偶者控除により相続税が課されません。
さらに、未成年者が相続する場合は「未成年者の税額控除」が適用されます。国税庁によると、これは、未成年者(18歳未満の方)が相続をする場合、「満18歳になるまでの年数×10万円」を控除できる制度です。
今回は次男が15歳0ヶ月なので、「3年×10万円」で30万円が控除されます。最終的に、家族3人の税額負担は母親が0円、長男が56万2500円、次男が26万2500円となります。
同じく相続する家族は未成年者の代わりに手続きができない
未成年者が法律行為をするときは、親権者など法定代理人による同意が必要です。
しかし、母親もともに相続する場合、未成年の子どもと母親の利益が相反するため、特別代理人を立てる必要があります。特別代理人はそのときの相続人でない親族などでなくてはいけないため、相続人である兄や姉も代理人にはなれません。
なお、未成年者が相続した場合、相続税には未成年者の税額控除が適用されます。18歳から離れているほど税額控除が多くなり、税負担は軽くなります。
出典
e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第一編 総則 第二章 人 第三節 行為能力 第五条(未成年者の法律行為)、第四編 親族 第四章 親権 第二節 親権の効力 第八百二十六条(利益相反行為)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4164 未成年者の税額控除
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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