実家を片付けていたら、亡くなった母の通帳に「50万円」が残っていました。このお金を引き出す場合、相続税はかかるのでしょうか?
本記事では、相続の基本ルールや後から見つかった相続財産の取り扱いについて解説します。
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故人の口座にある預金は相続財産
亡くなった方が生前に所有していた財産は、たとえ少額であっても「相続財産」として扱われます。預金通帳に残されていたお金も例外ではなく、相続の対象です。
口座にあるお金も遺産として扱われる
遺産というと、不動産や株式などの高額な資産を思い浮かべがちですが、銀行口座に残された預金も相続の対象です。50万円という少額であっても、その預金は法定相続人全員で共有している状態とされます。そのため、一人の相続人が単独で引き出すことはできません。
死亡を知らせると口座は凍結される
故人が口座を持っていた場合、故人名義になっている金融機関それぞれに連絡が必要です。金融機関は、口座名義人が死亡したことを確認すると、口座を凍結します。凍結された口座からはすべての取引が停止されるため、通帳やキャッシュカードがあっても預金は引き出せません。
通常、死亡届を出しただけでは、市区町村の窓口から金融機関へ死亡通知がいくことはありません。金融機関へ知らせずに放置すると、特定の相続人が勝手に預金を引き出すなどのトラブルに発展するリスクがあるため注意が必要です。なお、葬儀の看板や新聞のお悔やみ欄などから金融機関が独自に情報を把握し、故人の口座を凍結する場合もあります。
手続き前の預金引き出しはリスクが大きい
金融機関に亡くなったことを伝える前であれば、預金を引き出すこと自体は物理的には可能です。しかし、他の相続人の同意なしに引き出すと、遺産の使い込みと見なされる恐れがあります。故人の葬儀費用の支払いが目的でも、無断で預金を引き出すことは避けたほうが無難です。
故人の口座から預金を引き出すにはどうする?
預金を正式に引き出すためには、相続人としての正当な手続きを経る必要があります。手続きの一般的な流れは、以下の通りです。
・金融機関に死亡した旨を通知し、凍結された口座の状況を確認する
・戸籍謄本などを用いて、誰が相続人であるかを証明する
・遺言書がある場合はそれに従い、ない場合は遺産分割協議書を作成する
・必要書類をそろえて金融機関に提出する
ただし、「払戻し制度」(簡易な手続きで預金の一部を引き出せる制度)が適用される場合もあります。
相続税はかかる?
相続財産に相続税が課されるかどうかは、遺産の総額が「基礎控除額」を超えるかどうかによって決まります。基礎控除額は、以下の式で求められます。
基礎控除 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
相続人が子ども2人であれば、基礎控除額の4200万円(= 3000万円 + 600万円 × 2人)までは相続税はかかりません。したがって、今回のケースでは相続税はかからないことになります。ただし、他の遺産(不動産や有価証券など)を含めて基礎控除を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。
故人の口座から預金を引き出す際の注意点
故人の預金を引き出す際、手続きをスムーズに進めるために知っておきたい注意点があります。本章では、主な2つの注意点について解説します。
書類の準備を計画的に進める
相続手続きを進めるには、被相続人と相続人の関係を証明するための公的書類(戸籍謄本、除籍謄本、住民票など)を用意しなければなりません。これには複数の市区町村から書類を取り寄せる必要があることも多く、思った以上に時間と手間がかかることがあります。
また、金融機関によっては独自の書式や追加資料を求められることもあるため、事前に問い合わせて確認しておくとスムーズです。
相続放棄がある場合は専門家に相談を
相続放棄を検討している相続人がいる場合は、一般的な相続手続きとは異なる対応が求められます。相続放棄については、「3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる」などの期限や手続き要件があるため注意してください。こうしたケースでは、税理士や司法書士、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続税は発生しなくても正当な手続きを
亡くなった母の通帳に残された50万円の預金も、相続財産に該当します。引き出すには、正当な相続手続きを踏む必要がありますが、相続税は「遺産の合計額」が基礎控除を超えないかぎり発生しません。とはいえ、家族間でのトラブルを避けるため、法律に従って対応する必要があります。不安があれば、専門家に相談することをおすすめします。
出典
一般社団法人全国銀行協会 ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度
国税庁 No.4152 相続税の計算
最高裁判所 相続の放棄の申述
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー