実家を売りたい私と売りたくない兄。相続した家の「売却」でもめたとき、解決策はあるのでしょうか?

配信日: 2025.07.22
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実家を売りたい私と売りたくない兄。相続した家の「売却」でもめたとき、解決策はあるのでしょうか?
親の死後、実家などの不動産があると、相続人同士で意見が分かれやすく、争いに発展することがあります。
 
例えば、自分は「実家を売って現金化し、現金を兄弟で分けたい」と思っていても、兄弟は「親との思い出があるから家は手放したくない」と考えているケースなどです。感情や経済的な事情が絡み合う状況になれば冷静な判断は難しく、トラブルが長期化することもあるでしょう。
 
本記事では、兄弟間の不動産相続トラブルの背景と、法律・専門知識を使った解決策を解説します。
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なぜ兄弟で意見が対立するのか?

現金や預貯金と異なり、不動産は物理的に分けることができません。そのため、「売却して現金で分けよう」と考える相続人と、「住み続けたい」「手元に残したい」と思う相続人の間で利害が対立しやすいのです。
 
例えば、「自分が親の面倒を見ていたのだから家は譲ってほしい」との兄の主張に対して、弟は「それなら代償金(公平に分けるための現金)を支払ってもらいたい」と考えることがあり、金額で折り合いがつかないケースも珍しくありません。
 

不動産の評価方法にも問題がある

不動産の評価方法にも問題があります。固定資産税評価額と実際の市場価値が大きく異なることも多く、「代償金をいくらに設定するか」でもめる恐れがあります。感情面と金銭面のズレが、兄弟間の争いをより複雑にしてしまうのです。
 

売却を進めたいなら遺産分割協議がカギ

実家の売却は、単独の相続人の判断だけでは実行できません。法定相続人全員による「遺産分割協議」が必要であり、その内容を文書化した「遺産分割協議書」には実印の押印と印鑑証明書の提出が求められます。つまり、弟が実家の売却を希望しても、兄が反対すれば売却はできないのです。兄弟の協力を得られないかぎり、不動産の処分は進みません。
 

話がまとまらなければ遺産分割調停を申し立てる

相続人の間で合意形成が難しい場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」の申し立てができます。調停でまとまらなければ、最終的には裁判所が判断する「審判」によって分割方法が決まる流れになります。
 
ただし、裁判所が売却を命じるには、分割の必要性や相続人間の公平性などの根拠が重要です。
 

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遺留分の基本と請求手続きの方法

遺言書に「兄にすべての財産を相続させる」と明記されていたとしても、弟には最低限の遺留分が認められています。
 

遺留分の基本

遺留分を請求できるのは、図表1に挙げた相続人です。
 
図表1

優先順位 続柄 遺留分の割合
必ず相続人になる 配偶者 2分の1
第1順位 子(または代襲相続人である孫など) 2分の1
第2順位 直系尊属(親や祖父母) 3分の1
第3順位 兄弟姉妹(またはおい・めい) なし

法務省 大阪法務局「法定相続人(範囲・順位・法定相続分・遺留分)」より筆者作成
 
遺留分が認められるのは、配偶者、直系卑属である子ども、直系尊属である親や祖父母などのみです。法定相続人とは異なり、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
 
また、同一順位の相続人が複数いる場合には、遺留分の範囲で等分します。例えば、相続人が子ども2人のみの場合、遺留分の合計(総体的遺留分)は遺産全体の2分の1となり、これを2人の子で等分します。遺産が2000万円の場合は、以下の計算からそれぞれに500万円の遺留分が認められます。

子どもの遺留分:2000万円×1/2=1000万円
各人の遺留分:1000万円÷2人=500万円

 

遺留分侵害額請求とは?

自分の遺留分を侵害されている場合に、金銭を請求する手続きが「遺留分侵害額請求」です。不当に偏った遺言に対しても、遺留分侵害額請求を行えば、相続人の最低限の権利を確保できます。
 
なお、請求には相続開始を知った日から1年間の時効があることに注意が必要です。
 

専門家に相談することも視野に入れよう

兄弟間での相続トラブルは、当事者同士の感情がぶつかりやすく、冷静な話し合いが困難です。弁護士などの専門家に相談すれば、客観的な視点を持って問題を整理できます。
 
必要に応じて、調停・訴訟への移行もスムーズに対応が可能です。
 

相続トラブルを防ぐには正しい知識から

実家の売却を巡る兄弟間の相続トラブルには、感情が先立つことで長引く傾向があります。しかし、相続には法的な枠組みがあり、「遺産分割協議」や「遺留分侵害額請求」といった制度を正しく活用すれば、自分の権利を守りつつ冷静な交渉ができるでしょう。
 
なお、弁護士などの専門家は、相続問題の解決やトラブル防止に大きな役割を果たしますので、積極的に相談することをおすすめします。
 

出典

最高裁判所 遺産分割調停
法務省 大阪法務局 法定相続人(範囲・順位・法定相続分・遺留分)
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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