父が亡くなり、「兄弟で法定相続分通りに分ける」予定ですが、兄は生前贈与で父から「500万円」受け取っていたそうです。遺産は「私の方が多く」受け取れますか?

配信日: 2025.07.29
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父が亡くなり、「兄弟で法定相続分通りに分ける」予定ですが、兄は生前贈与で父から「500万円」受け取っていたそうです。遺産は「私の方が多く」受け取れますか?
兄弟がいる場合や法定相続人が複数いる場合で、亡くなった方から誰か1人だけ生前に財産を受け取っているというケースもあるでしょう。例えば、店の開業資金として兄だけが500万円を受け取っているなどです。こうした場合、相続財産の分割方法が変わる場合があるので注意が必要です。
 
今回は、生前贈与で相続人の誰かのみが財産を事前に受け取っていた場合における相続財産の分配方法などについて紹介します。
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生前に受け取った財産があったときの相続はどう分割する?

もし生前に誰かだけが財産を受け取っている場合、特別受益として相続財産の計算方法が少し変わる可能性があります。通常であれば、相続財産のみを法定相続分で分ける、あるいは遺産分割協議で決まった割合で分けるなどで、各相続人の相続分が決まります。
 
しかし、特別受益があった場合は、その金額を加算したうえで相続する割合を判断します。ただし特別受益を受け取った本人がそれを認めない場合、トラブルになる可能性もあります。トラブルを防ぐためには、事前に特別受益があった証拠などを集めておくとよいでしょう。
 

特別受益があったときの相続財産の計算方法

先に述べたように、特別受益があった場合は、それも含めたうえで相続財産の分け方を決めます。例えば兄弟で長男が事前に500万円受け取った状態で父親が亡くなり、長男が受け取った金額以外に遺産が5000万円あったとしましょう。
 
もし特別受益がなければ、法定相続分で分ける場合、兄弟で2500万円ずつ財産を相続できることになります。しかし、長男は生前に500万円受け取っているため、法定相続分で分ける場合、5500万円の相続財産があるとして計算します。
 
特別受益がある場合の、法定相続分で分けるときの各相続人の相続財産は以下の手順で計算します。

(1)特別受益と遺産総額を合計する
(2)(1)の金額を法定相続分で各相続人に分ける
(3)特別受益を受け取っている相続人は(2)の金額から特別受益分を差し引く

今回のケースでは、兄弟の相続財産は以下の通りです。

●長男:5500万円÷2-500万円=2250万円
●次男:5500万円÷2=2750万円

なお、相続税には相続開始日によって異なるものの、最大で7年前までの故人からの贈与を相続財産に加算するルールがあるため、場合によっては特別受益でなくても相続財産に加算される可能性があります。
 

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基本的に生前贈与による特別受益は贈与税、通常の相続財産は相続税の課税対象

生前贈与で特別受益を受け取った場合、その金額は贈与税の課税対象です。また相続財産が基礎控除を超えていればその分も相続税が課されるため、特別受益を受け取っている人は、贈与税と相続税の2種類を支払うことになるでしょう。
 
以下の条件で長男が支払う贈与税、相続税の金額を計算します。

●兄弟は全員成人に達している
●相続した遺産は5000万円
●法定相続人は兄弟のみ
●長男は生前贈与で500万円を受け取っている
●特別受益を受け取ったのは7年以上前

まず、贈与税には110万円の基礎控除が設けられているため、500万円受け取っている場合、390万円が課税対象です。このとき、税率は15%、控除額は10万円のため、長男が負担する贈与税額は48万5000円になります。
 
次に相続税の基礎控除は「3000万円+法定相続人×600万円」です。今回は法定相続人が2人のため、基礎控除額は4200万円になります。相続税が課されるのは相続財産なので、5000万円から4200万円を引いた800万円に対して課税されるでしょう。
 
複数人で相続するときの各相続人の相続税額は以下の手順で求められます。

1 基礎控除後の金額を法定相続分で分けたとして、各相続人の税額を求める
2 各相続人の税額を合計したあと、実際の相続分で分ける
3 控除や2割加算などがあれば適用する

今回のケースで基礎控除後の金額を各法定相続人で受けた場合、400万円ずつになります。400万円の場合、相続税率は10%のため相続税は40万円です。2人の合計相続税額は80万円となります。
 
実際に相続した割合で80万円を分配し直すと、長男が負担する相続税額は36万円、贈与税と合わせると84万5000円です。
 

生前贈与が特別受益と認められれば贈与されていない人の方が相続財産は多くなる可能性がある

相続人のうち誰かだけが亡くなった人から生前贈与などによって財産を受け取っている場合、特別受益と判断される可能性があります。特別受益分も考慮して相続財産の分配を決めるため、特別受益を受け取っていない人は特別受益を受け取っている人よりも受け取れる遺産が多くなる場合もあるでしょう。
 
ただし、特別受益が生前贈与だった場合、相続税の計算時には特別受益分は含みません。相続税は各相続人が受け取った遺産の割合によって負担額が変わるので、計算時に間違えないよう注意しましょう。
 
不安がある場合や話し合いが難航しそうなときは、税理士や弁護士など専門家に相談するのも一つの方法です。早めに準備をしておくことで、後々のトラブルを避けやすくなるでしょう。
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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