父が亡くなり、通帳を確認したら「口座残高がほぼ0円」でした。生前に誰かが引き出していた場合、相続人として取り戻せるのでしょうか?

配信日: 2025.08.05
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父が亡くなり、通帳を確認したら「口座残高がほぼ0円」でした。生前に誰かが引き出していた場合、相続人として取り戻せるのでしょうか?
相続は人が亡くなったときに発生するものですが、相続手続きには相続財産の確認も含まれています。その確認において、亡くなった人(被相続人)の預金口座から生前に誰かがお金を引き出していることが分かった場合、相続人はそのお金を取り戻せるのでしょうか。本記事で解説します。
小山英斗

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

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相続財産とは

相続財産とは、原則として亡くなったとき(相続開始時)に、被相続人に帰属していた財産です。相続財産には「プラスの財産」だけでなく、「マイナスの財産」もあります(図表1)。
 
図表1

プラスの財産 預貯金、不動産 、有価証券、自動車、宝石、貴金属、美術品など
マイナスの財産 借金、未払いの税金、滞納家賃など

筆者作成
 
被相続人の相続開始時に、預貯金を預け入れている被相続人の口座残高が0円であれば、その口座には相続財産がないことになります。ただし、本来であれば相続財産として口座に残されているはずだったものが、誰か他の方によって生前に引き出されていた場合、状況によっては取り戻せる可能性があります。
 

取り戻せる可能性は、誰が引き出して誰が使ったかによる

被相続人の口座から生前に引き出されていたお金を取り戻せるかどうかは、「誰が引き出して、実際に誰がその引き出されたお金を使ったか」がポイントになってきます。考えられるパターンは4通りあります(なお、図表2での「第三者」とは、相続人も含めた被相続人以外の人です)。
 
図表2

引き出した人 使った人 取り戻せる可能性
被相続人 被相続人 被相続人本人が自分で使うお金なので、取り戻せない。
被相続人 第三者 第三者に対する特別受益に該当する場合、遺産分割協議の際に、相続財産として加えることができる。
第三者 被相続人 被相続人が使うために、被相続人の承諾の上で第三者が代わりに引き出した場合は、取り戻せない。
第三者 第三者 被相続人の許可なく第三者が預金を引き出して使っていた場合は、取り戻せる可能性がある。

筆者作成
 
図表2にある4つのパターンのうち、引き出したお金を使った人が被相続人本人である場合、そのお金は取り戻せないことが分かります。
 

被相続人が引き出して、第三者が使っている場合

被相続人が引き出して第三者が使っている(第三者に渡している)場合は、「特別受益」の考慮が必要になってきます。
 
相続人が被相続人から生前にお金などの財産を受け取っていた場合は、「特別受益」にあたる場合があります。特別受益と認められるのは、一部の相続人が婚姻・養子縁組のため、あるいは生計の資本(扶養に必要な金額の範囲を超えた多額なお金)などの贈与を受けた場合です。
 
この場合は、生前贈与された分が「相続分の前渡し」とみなされ、遺産分割協議の際に相続財産として加えることで公平に遺産分割をすることができます。これを「特別受益の持ち戻し」といいます。
 

第三者が引き出して第三者が使っている場合

被相続人の許可なく第三者が勝手に預金を引き出し、それを第三者が自分のために使っていた場合は、第三者が盗んでいるのと変わりません。
 
相続では、「相続するはずの預金が無断で使い込まれていた」などの場合に、第三者が不当に得ていた相続財産を、相続人が第三者に対して不当利得返還請求もしくは損害賠償請求することができます。
 
「不当利得返還請求」もしくは「損害賠償請求」は時効期間や起算点が異なり、不当利得返還請求は「返還請求権が発生したときから10年」、不法行為に対する損害賠償請求は「行為を知ったときから3年かつ不法行為時から20年」です。その他にも、要件や効果なども異なります。
 

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第三者が勝手に引き出した預金を取り戻すには

被相続人の預金口座から勝手に引き出されたと思われるお金があった場合、誰がどのような目的で引き出したのかを、正しく把握することが大切になってきます。
 
例えば、不当利得返還請求をするときは、まずは引き出した人物を特定することが重要です。しかし取引履歴だけではそれが分からないこともあるため、引き出しを行うための通帳や印鑑、キャッシュカードなどが誰によって管理されていたかを確認することも大事になってきます。
 
また、引き出した人物が特定できても、その引き出した目的の確認や、引き出した人が使った証拠があるかどうかも重要なポイントになってきます。その他にも、相続人が過去の口座の入出金履歴を銀行に開示請求するためには、以下の書類が必要となってきます。

●戸籍謄本(相続人であることの証明)
●本人確認書類(運転免許証など)
●被相続人の死亡届や住民票除票など

このような場合、時間がたつと証拠が失われる可能性が高いため、早めの調査が必要です。
 

まとめ

第三者が勝手に引き出した預金を取り戻すには、第三者の特定や、引き出した目的の確認とその証拠集めが必要ですが、実際には難しいケースが多いようです。また、第三者が親族であることが疑われるような場合、親族間でのトラブルに発展する可能性もあります。
 
被相続人の口座履歴に不審な多額の出金があることが分かった場合、早めに弁護士といった専門家に相談するとよいでしょう。
 

出典

国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
最高裁判所 遺産分割Q&A
 
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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