母から「お金のことはあなたに任せたい」と言われ通帳を預かりましたが、兄から「勝手に管理するな」と言われて困っています。親のお金は、誰がどう管理すべきなのでしょうか?
なかには、高齢の親の通帳など資産に関するものを預かったことで、ほかの親族から「使い込みではないか」「自分だけ遺産相続を有利にしようとしている」などと誤解され、トラブルに発展してしまうケースも見られます。
では、親のお金は誰がどうやって管理するのがよいか、家族みんなが納得できてトラブルを防げる方法を考えてみましょう。
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
親のお金を管理するときに起こりやすいトラブル…… その原因は?
親のお金は、基本的には親本人が管理するものです。しかし、加齢や体力の衰えなどを理由に、通帳の記帳や振り込みなどの手続きが難しくなることもあるかもしれません。
「このままではまずいかも」という不安感が出てきたとき、信頼できる自分の子どもに任せようと考えるのは自然なことです。実際に、「親のためになるなら」と喜んで引き受ける人もいるでしょう。
ただ、兄弟姉妹やほかの親族がいる場合は注意が必要です。「勝手に預かってお金を使い込もうとしている」などと、疑念を持たれるケースも少なくないからです。
こうしたトラブルが特に起こりやすいのは、兄弟姉妹間で情報共有がされていない場合、それぞれの親との距離感や関わり方に差がある場合、親が高齢で近いうちに相続が発生する可能性が高い場合などです。
また、親に認知症の症状が出始めているなど、判断能力の低下が見られる場合は、「本当に本人の同意があったのか」といった点が争点になることもあります。
さらに、将来的に相続が発生した場合は、「お金(資産)を管理していた人が有利に立ち回っているのでは」など、ほかの相続人から不公平感や不信感を持たれ、遺産分割協議がこじれることも考えられます。
自分は親のためを思って行動しているつもりでも、お金が絡むため家族間で誤解や疑念が生まれやすいのが難しいところです。最初の対応を誤るとその後の関係修復が困難になる場合もあるため、慎重に進める必要があるでしょう。
トラブルを防ぎつつ、安心して管理していくためにできること
では、どうすれば親族間の関係を悪化させることなく、親のお金を適切に管理していけるのでしょうか。例えば、以下のような工夫が可能です。
●親の意思であることを証明するため、依頼された内容を録音や書面などの形に残す
●家族間で「こういう依頼があってこういう手伝いをした」という情報を都度共有する
●親のお金を動かす場合は、請求書や領収書などを共有して使い道や金額を明確にしておく
●状況によっては、「任意後見制度」や「家族信託」などの利用を検討する
いずれにせよ、家族に黙って一人で進めるのではなく、早めに兄弟姉妹などにも相談して、合意できた時点で実行するのがおすすめです。場合によっては管理のために必要な作業を家族間や専門家との間で分担して行うことができるため、自分の負担を軽減しつつ、より適切な管理ができるようになる可能性があります。
まとめ
親のお金の管理で迷ったら、まずは兄弟姉妹などほかの親族に相談してみるのがおすすめです。誰にも知らせないまま通帳を預かったりお金をおろしたりすると、親族から不審に思われ、あとからトラブルに発展してしまう可能性があります。
早めに話し合いの機会を作り、なるべく細かく情報共有して信頼してもらえるようにしましょう。場合によっては、専門家の手を借りて任意後見制度や家族信託などを利用するのも一つの方法です。
出典
厚生労働省 成年後見はやわかり 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)
神戸地方法務局 「~相続で未来へ~わたしのエンディングノート」について 8 家族信託・配偶者居住権・居住用不動産の優遇措置
執筆者 : 馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表