田舎の実家を相続しましたが”空き家”状態です。放っておくと固定資産税が上がると聞いたのですが、早めに手放した方がいいでしょうか?
本記事では、空き家に関する税負担やトラブルの可能性、手放すか維持するかの判断ポイントについて解説します。
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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空き家を放置することによる税負担の増加
不動産を所有する場合は「固定資産税」と、地域によっては「都市計画税」が課税されます。これらの税金は、不動産の価値をもとに市区町村が定める「課税標準額」に基づいて税額が決まり、1月1日時点の所有者へ納税通知が届きます。
通常、住宅やアパートなどの敷地である住宅用地には「住宅用地特例」が適用されることで、税負担の軽減が図られています。この住宅用地特例は、200平方メートル以下の部分の「小規模住宅用地」と、200平方メートルを超える部分の「一般住宅用地」とに区分されて適用されます。
固定資産税と都市計画税の課税標準額は、図表1のとおりです。
図表1
| 小規模住宅用地 | 一般住宅用地 | |
|---|---|---|
| 固定資産税の課税標準額 | 6分の1に減額 | 3分の1に減額 |
| 都市計画税の課税標準額 | 3分の1に減額 | 3分の2に減額 |
※アパートなどの場合は、「戸数×200平方メートル」以下の部分が小規模住宅用地
※住宅用地の範囲は、家屋の床面積の10倍まで
内閣府 政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」より筆者作成
しかし、空き家が適切に管理されず放置されていることで「特定空家など」に指定されると、住宅用地特例が適用されなくなる可能性があります。特例が適用されない場合、固定資産税においては税負担が最大6倍にもなってしまいます。
「特定空家など」とは、以下のいずれかの状態にあると認められる空き家を指します。
・そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
このような状態になった空き家に対して、市区町村長から「勧告」を受けると、その住宅用地について、住宅用地特例の適用対象から除外されます。
空き家を放置しておくことのリスク
空き家を放置しておくことで、税負担が増える可能性以外にも、以下のようなリスクが考えられます。
・修繕費や維持費の負担増(屋根や外壁の老朽化や庭の雑草など)
・近隣とのトラブル原因の発生(害虫発生や倒木などのリスク、不審者の侵入など)
・売却価値の低下(放置が原因で建物の傷みなどが進行)
特に地方などでは空き家が売れにくくなる傾向があり、放置すればするほど「売りにくい不良資産」となるおそれがあります。
空き家を早めに手放すための選択肢
相続した実家を手放すことを考えているときは、図表2の選択肢を早めに検討するようにしましょう。
図表2
| 選択肢 | 検討内容 |
|---|---|
| 売却する | 不動産会社などに査定を依頼し、売却可能額を把握。 |
| 更地にする | 建物が古く再利用が難しい場合、更地にしたほうが売れやすくなる可能性がある。ただし、住宅用地特例が適用されなくなることに注意が必要。 |
| 空き家バンクの利用 | 自治体によっては「空き家バンク」に登録することで、移住希望者や企業からの問い合わせが得られる可能性がある。 |
| 寄付や無償譲渡 | 親族や地域団体へ無償譲渡をして、引き取ってもらう。 |
筆者作成
空き家を維持するのであれば「管理」と「活用」が大切
実家である空き家を思い入れから手放したくない場合や、すぐに売却できないような場合は、定期的な管理が大切です。屋根や外壁などの簡単な修繕や庭の手入れなどを行うことで、建物などの劣化を防ぎ「特定空家」の認定を避けることができます。
また、民泊や賃貸、自宅との2拠点生活などへの活用も検討するとよいでしょう。
まとめ
空き家は相続した時点で、資産であると同時に「負担」となります。放置することで、その負担がさらに増すことにもなりかねません。必要なら地元の不動産会社や行政の窓口にも相談しながら、できるだけ早い段階で売却や活用を検討するようにしましょう。
出典
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!
国土交通省 固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)