地方にある先祖代々の墓。管理できないので「墓じまい」したいのですが50万円もかかるので払えない…… このまま放置するとどうなりますか?
親族との関係が希薄になった昨今では、自治体が担当するしかないのかもしれませんが、親族としては、放置して寝覚めが悪くなるのも困りもの。今回は、先祖代々のお墓について考えてみましょう。
(*)調査のうち、「特にない」「無回答」を合算した調査数
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
墓じまいの費用の目安を確定するのは意外と難しい
「墓じまいの費用」「目安」などというキーワードで、ネット検索をした場合には、たいてい、葬儀会社などのサイトが表示され、30万~300万円程度の目安金額が書かれているページがトップに出てくることが多いかもしれません(執筆者検索日時:令和7年7月21日時点)。
このようなキーワードで検索した方ならわかるかもしれませんが、「墓じまい」という言葉のなかには、たくさんの意味が含まれています。単に、今ある墓石を撤去すれば済むわけではありません。墓地のあった場所をさら地にして、遺骨を別の場所に移すまでをいいます。
具体的には、もともとのお墓を物理的に撤去するための費用、閉眼供養、遺骨を移すための行政費用(自分でするか、他人に依頼するかで費用が異なります)、新しいお墓の購入費用、もしくはお布施、開眼供養の費用など、細かい費用を考えると、実際の費用を○○円と確定させるのは非常に困難です。
先祖代々のお墓の管理ができない理由を挙げる前に、親族間の根回しを
「地方にある先祖代々の墓」がある地方出身者の方であれば、「お墓参りにはなかなか行くことができていない」と思う人も多いでしょう。
実家が近くに残っていれば、帰省のついでにお墓参りもできるかもしれませんが、実家もない場合は、わざわざお墓参りのために地方へ行くというのは、旅費宿泊費まで考えると現実的には足が遠のいていくことも仕方ありません。
定期的に行けなければ、墓地の草むしりもできず荒れていったり、掃除だけでも他の方に頼んだりして、別途費用が発生することもあるでしょう。
少子化のなかでは、夫の先祖、妻の先祖など、複数のお墓の管理が同時発生することもあることから、帰省したときなど、親族で話ができる機会があれば、「まだその時期ではない」「親が管理料など支払ってくれているからまだ大丈夫」などと思わず、「お墓はどうなっている? 今後はどうしたらいいと思う?」など折に触れて親族間で話題にしてみるといいでしょう。
「このまま放置したい」その前にするべき手続きとは?
もし、実際に墓じまいをするときに行うべき行政上の手続きの流れは、以下のような流れです。
(1)遺骨を新たに埋蔵または収蔵する墓地などを決める
※新しい墓地の管理者から「受入証明書(使用許可書、契約書など)」を受領する必要あり
(2)現在の墓地がある区市町村の窓口で「改葬許可証交付申請書」を受け取る
(3)現在の墓地などの管理者から「埋葬証明」を受け取る
(4)改葬許可証交付申請書と添付書類を提出して、改葬許可証を受け取る
(5)改葬許可証を現在の墓地などの管理者に提示して、遺骨を取り出す
(6)改葬許可証を改葬先の墓地などの管理者に提出して、遺骨を納める
墓じまいをするためには、「次の埋葬地」を決めなければ進めませんし、行政関連の手続き費用はほとんどかからないといっても、墓じまいは非常に面倒な手続きといえるでしょう。
近年、大地震が起きたときには、墓石の倒壊や地盤沈下などで倒れた墓石がニュースで報道されることも珍しくありませんが、このまま放置していては、修理などで余分な費用がかかることもあるかもしれません。自治体が代わりに改葬したとしても、後で費用を請求されることもあり得るでしょう。
このような事態になる前に、しっかりと墓じまいの方法とその費用の分担を親族で話し合っておきたいものです。
出典
厚生労働省 行旅病人及行旅死亡人取扱法、墓地、埋葬等に関する法律及び生活保護法に基づく火葬等関連事務を行った場合等の遺骨・遺体の取扱いに関する調査研究事業
執筆者 : 當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。