「遺産分割協議」で家を譲ってもらうことになりましたが、管理できないので「現金」を相続したいです……! 協議のやり直しはできるでしょうか?
また、不動産の維持管理には、固定資産税などの税金を始め、修繕費や日々の手入れといった金銭的・時間的コストが継続的に発生します。そのため、相続人の事情によっては物理的な管理が困難になるケースもあるでしょう。
今回は、一旦成立した遺産分割協議をやり直すことが可能なのかどうかを解説し、やり直しが認められるケースについてまとめました。
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遺産分割協議の基本と法的な拘束力
遺産分割協議とは、亡くなった人(被相続人)の遺産を、複数の相続人がどのように分け合うかについて話し合い、合意を目指す手続きです。協議が成立するには、相続人全員の合意が必要です。
そして、一旦有効に成立し、相続人全員の署名・捺印がされた遺産分割協議書が作成された場合、その内容を変更するには、原則として相続人全員の同意が必要になります。つまり、一度合意した内容は、簡単には覆すことができないということです。
協議のやり直しが認められる可能性があるケース
ただし、遺産分割協議は、以下のような特定の状況においては、例外的にやり直すことが認められる可能性があります。
相続人全員の合意がある場合
最も確実な方法は、相続人全員が再度協議を行い、やり直しに合意することです。成立した協議であっても、相続人全員が「この内容では都合が悪い」「別の形で分割したい」と一致して望むのであれば、新たな協議を行い、新しい遺産分割協議書を作成できる可能性があるでしょう。ただし、全員の合意を得ることは、現実的には容易ではありません。
遺産分割協議に無効・取消事由がある場合
遺産分割協議が成立する過程において、特定の事由がある場合、その協議自体が無効となったり、取り消しが可能となったりすることがあります。例えば、特定の相続人がほかの相続人に対して、遺産の内容について虚偽の説明をしたり、不当な圧力をかけたりして合意を得たような場合は、取り消すことが可能です。
また、協議の内容に錯誤(勘違い)があった場合も、その協議は取り消しとなる可能性があります。例えば、協議の際に知らされていなかった多額の借金が後から発覚し、もしその借金の存在を知っていれば、家を相続するという選択肢は選ばなかったというようなケースです。
遺産分割協議は、相続人全員が参加することが条件です。もし、本来相続人ではない者が協議に参加していたり、相続人であるべき者が漏れていたりした場合は、その協議は無効となります。
新たな遺産が発見された場合
遺産分割協議の成立後、協議の対象となっていなかった遺産(故人が所有していた預貯金口座がほかに発見された、隠されていた不動産が見つかったなど)が発見された場合、改めて協議を行わなければなりません。
この場合、既に分割された部分の協議は有効なままとして、新たに発見された遺産についてのみ分割協議を行うことが原則とされているようです。しかし、新たに発見された遺産の規模や性質によっては、既に成立した協議全体を見直す必要が生じることもあるでしょう。
遺産分割協議で、一度合意した内容をやり直すことは容易ではないが、例外として認められるケースもある
相続人全員が合意した場合や、特定の無効・取消事由がある場合は、遺産分割協議の内容について、やり直しが認められる可能性があります。ただし、一度全員の合意を得ていると、遺産分割のやり直しは簡単ではありません。やり直しを希望する場合は、ほかの相続人と話し合い、合意を得ましょう。
もし、話し合いが困難だったり、法的な無効・取消事由に該当する可能性があると感じたりする場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
出典
日本公証人連合会 3 遺産分割協議
e-Gov 法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
