入院していた父が亡くなり、150万円の医療費請求が…!父の口座から“勝手に”引き出しても問題ない?
本記事では、亡くなったあとの医療費の請求に対応するため本人の口座から資金を引き出すことに問題はないのかについてまとめました。
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目次
故人の口座は原則「凍結」される
口座の名義人が亡くなった事実が金融機関に伝わると、原則としてその名義のすべての口座は凍結されます。
故人の財産は、特定の相続人だけのものではなく、相続人全員の共有財産となります。誰かが勝手に預貯金を引き出して使ってしまうと、ほかの相続人の権利を侵害することになり、相続争いの原因となりかねないからです。
一度凍結された口座は、遺産分割協議書や相続人全員の同意書など、金融機関が求める所定の書類を提出し、相続の手続きが終わるまでは原則解除されないでしょう。
相続預金の仮払い制度とは
2019年の相続法の改正により、口座凍結により支払いに困るケースを解消するために「相続預金の仮払い制度」が設けられました。この制度で遺産分割協議の完了前でも、必要な手続きを取ることで相続人が預貯金を引き出すことが可能になりました。
仮払いには、金融機関で直接払い戻しを受ける、家庭裁判所の判断を得てから受けるという2つの方法があります。
金融機関で直接払い戻しを受ける場合は「相続開始時の預金額×3分の1×払い戻しする相続人の法定相続分」で求められる金額が上限です。また、一つの金融機関につき150万円までという制限があります。
家庭裁判所を通じた仮払いには金額の上限はなく、家庭裁判所が認めた金額となります。
しかし、仮払いを受けると「単純承認」(故人のプラスの財産もマイナスの財産も含むすべてを無条件で相続すること)とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性もあります。
また、遺言書で特定の相続人や第三者に預貯金が遺贈されている場合、仮払い制度を利用できないことがある点にも注意が必要です。
故人の口座から医療費を引き出すリスクとは
故人の口座から医療費を引き出した場合のリスクは、以下の通りです。
遺産を使い込んだと疑われるリスク
故人の口座から勝手に金銭を引き出した場合、ほかの相続人から「遺産を使い込んだ」などと疑われてしまうかもしれません。医療費の支払いという正当な理由があったとしても、事前の合意なしに実行すれば、不信感を持たれることにつながります。
相続放棄ができない可能性がある
故人の財産を一部でも使用したり、処分したりすると、単純承認とみなされる可能性があります。その状態で、仮に医療費以外の多額の借金が故人にあった場合、相続放棄ができず、借金まで背負い込むことになってしまうかもしれません。
高額療養費の払い戻しを受けるには
高額療養費制度は、あるひと月(月の初めから終わりまで)に医療機関や薬局の窓口で支払った医療費の自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。
故人が生前にこの限度額を超えて医療費を支払っていた場合、亡くなった後でも相続人が払い戻しを請求できます。
高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、診療を受けた月の翌月の初日から2年です。故人が亡くなった後でも、この期間内であればさかのぼって申請が可能です。
医療費を支払うためでも、勝手に故人の口座からお金を引き出すことにはリスクがある
金融機関の口座は、名義人が亡くなったことを金融機関が知った時点で凍結されます。その場合、故人の医療費を、口座から引き出すのは一般的に困難です。
また、凍結される前に勝手にお金を引き出すと、使い込みを疑われたり、相続放棄ができなくなったりするリスクが生じる可能性もあります。相続預金の仮払い制度を利用すれば、預金を払い戻すことが可能ですが、その場合も相続放棄ができなくなる点などに注意が必要です。
トラブルを避けるためにも、不明点や不安があれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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