継父が「全財産1000万円を友人に渡す」と遺言を書いていたら、私は相続を主張できないのでしょうか?
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
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人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
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相続を主張できるかどうかは養子縁組の有無で大きく変わる
まず確認が必要なのは、継父と子が養子縁組をしているかどうかです。養子縁組をしている場合、法律上は実子と同じ「子」である法定相続人として相続権があります。
逆に、養子縁組をしていない場合は、法律上の親子関係がないため、そもそも法定相続人ではありません。この場合、遺言に名前が記載されていなければ相続できず、遺留分も主張できません。
遺留分という最低限の取り分を主張できる権利がある
遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)に法律上取得することが保障される「最低限の遺産の取り分をもらう権利」を主張できる制度です。養子縁組をしている相続人である場合にも、この「遺留分」という権利があります。たとえ遺言に「全財産を友人に渡す」と書かれていても、被相続人の自由な財産処分は制限されます。
遺留分の割合は、法定相続分の2分の1です。例えば、相続人が1人で財産が1000万円の場合、法定相続分は100%となり、その半分の50%が遺留分となります。つまり、継父が「全財産1000万円を友人に渡す」と遺言書に書き残しても、養子縁組をしている子は500万円を取り戻す権利があることになります。
遺留分侵害額請求の手続きには時効がある
遺留分を取り戻すためには、「遺留分侵害額請求」を行います。これは、遺言で財産を受け取った人に対し、遺留分に相当する金額の支払いを求める手続きです。重要なポイントは請求期限で、以下のいずれか早い時点で時効になります。
・相続の開始と遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内
・遺留分侵害を知らない場合、相続開始(死亡日)から10年以内
請求は内容証明郵便で行うのが一般的で、その後交渉や調停を経て支払いが行われます。遺留分は原則として、遺留分相当額の金銭で支払われます。
他の相続人がいる場合
もし、他にも相続人(例えば継父の妻や他の子ども)がいる場合、遺留分の計算は異なってきます。例えば、相続人が配偶者と養子縁組をしている子1人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子も2分の1となります。
遺留分はそれぞれの法定相続分の半分なので、養子縁組をしている子の遺留分は遺産全体に対しては4分の1になります。この場合、1000万円の遺産なら250万円が遺留分として養子縁組をしている子は請求できます。
まとめ
遺言書があっても、相続人が遺産から最低限受け取れる取り分は「遺留分」として法律で守られています。ただし、それを主張しなければ権利は消えてしまいます。継父の子であるといったような場合は、養子縁組の有無や他の相続人の状況を確認し、必要であれば弁護士といった専門家に相談するようにしましょう。
出典
国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき
最高裁判所 遺留分侵害額の請求調停
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)