夫が亡くなったのですが、息子から「口座が凍結する前に現金を引き出しておいたよ」と言われました。相続において問題ないのでしょうか?
今回は、口座が凍結する条件や勝手にお金を引き出すとどうなるか、凍結後の口座からお金を引き出したいときの対応方法などについてご紹介します。
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
口座が凍結する条件
口座が凍結される条件としては、おもに以下が挙げられます。
●口座の名義人が亡くなった
●口座の名義人が認知症になった
●口座で不正取引が行われた
●口座が債務整理の対象になった
相続と関係があるのは、一番目の口座の名義人が亡くなったことによるものでしょう。名義人が亡くなって口座凍結をされるのは、銀行側がその人物が亡くなったことを知ったときです。役所へ亡くなった人の死亡届を出したからといって、すぐに凍結されるわけではありません。
また、もし銀行側が新聞の訃報欄などで名義人の死亡を知ったときは、遺族などに確認を取ってから凍結をすることもあるようです。
口座が凍結されると、お金の振り込みや引き出しなどはできなくなります。
お金を引き出すと相続を承認したと判断される可能性もある
もし相続放棄も視野に入れている場合は、口座からの引き出しは慎重に判断した方がいいでしょう。無断で口座からお金を引き出すと、相続を単純承認したと判断される可能性があるためです。単純承認は、「相続します」と宣言していなくても、実質的に相続したとみなされる行為を指します。
民法第921条によると、単純承認とみなされるのは原則以下の行為です。
●相続財産を処分した
●決められた期限内に限定承認や相続放棄をしなかった
●限定承認や相続放棄後であったとしても財産を隠したり私的に消費したりした
こっそりお金を引き出す行為は、財産を隠す行為と判断される可能性もあるでしょう。相続をしたと判断されると、金額によっては相続税の支払いが必要です。相続税は「3000万円+法定相続人数×600万円」の基礎控除があり、超えた分に対して税金がかかります。
例えば、5000万円の遺産を子ども一人と妻で法定相続分通りに相続したとすると、妻は配偶者の税額軽減制度があるため税金がかかりませんが、子どもには40万円の相続税がかかるでしょう。
もし相続放棄をする予定だった子どもが無断でお金を引き出し、相続を単純承認したと判断されると、意図せず税金負担がかかることになります。ほかの相続人との引き出したお金に関するトラブルを防ぐためにも、手続きをしたうえでお金を引き出した方がいいでしょう。
亡くなった人の口座から預貯金を引き出したいときの対応
銀行が名義人の死亡を確認したあとは、遺産分割協議が終わるまで凍結は基本的に解除されないでしょう。もし遺産分割協議が終わり相続が確定したあとであれば、手続きをすると凍結解除ができます。
また、遺産分割協議が終わる前にお金を引き出したい場合は、預貯金の仮払い制度を利用できる場合があります。預貯金の仮払い制度とは、金融機関ごとに上限が150万円か「亡くなった時点での口座残高×3分の1×引き出す人の法定相続分」のうち金額が少ない方の範囲内でお金を引き出せる制度です。
遺産分割協議が終わる前にお葬式などでお金が必要なときは、仮払い制度を利用するといいでしょう。
無断で引き出すと単純承認扱いになる可能性がある
名義人の死亡などにより口座が凍結すると、お金を引き出せなくなります。しかし、凍結される前に死亡を金融機関へ伝えずに勝手にお金を引き出すと、相続するつもりがなかったとしても相続を単純承認したと判断されることがあるため、注意が必要です。
もしお葬式の費用などを引き出したい場合は、預貯金の仮払い制度の利用も検討するといいでしょう。上限までであれば、金融機関へ申請することで必要な金額を引き出せます。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百二十一条
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修 : 高橋庸夫
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