お盆で親戚が集まると毎回「遺産分け」の話に…。親が生前にできる“トラブル回避策”はある?
実は、親世代が「生きているうち」に少しだけ準備するだけで、後々のトラブルがぐっと減らせる可能性があることをご存じでしょうか。本記事では、生前にできる対策について、身近なケースも交えながら紹介します。
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お盆の「遺産分け」話が繰り返される理由とは?
お盆に親戚が集まると、なぜか毎年「遺産分け」が話題になる人もいるでしょう。まだ親は元気なのに、相続の話ばかりでうんざりしている方も多いかもしれません。
実は、相続トラブルは特別な家庭だけの問題ではありません。最高裁判所の統計によると、遺産額が5000万円以下のケースが相続争いの大半を占めています。つまり、資産の多さに関係なく、誰にでも起こりうる話なのです。その背景には、次のような事情があります。
・法定相続分と感情のズレ
「長男が多くもらうべき」「介護した自分が優先されるべき」など、法律では割り切れない思いが、もめごとの原因になります。
・分けにくい資産の存在
家や土地など、不動産は簡単に分けられません。共有すると管理が大変になり、後々不満につながることもあります。
・情報共有の不足
「ちゃんと話せば分かる」と思っていても、実際は思い違いや誤解が生まれやすいものです。お金の話だからこそ、曖昧なままにせず、備えることが大切です。
こうした事情が積み重なり、お盆のたびに「今年こそは話をまとめたい」と思っても、結局話は進まずに問題が解決しないまま、同じことが繰り返されてしまうのです。
親が生前にできる「今すぐのトラブル回避策」3選
では、親が元気なうちにできる具体的な対策にはどんなものがあるのでしょうか。以下の3つは、すぐにでも始められる現実的な方法です。
1. 遺言書の作成
まずは基本中の基本、遺言書です。遺言書があれば、財産の分け方を明確にすることで遺族間の話し合いの負担が減らせ、トラブル防止に役立ちます。特に不動産がある場合は、「公正証書遺言」がおすすめです。公証人に作成してもらうので、形式ミスの心配もなく、安全性と法的効力が高い方法です。
2. 家族信託の活用
家族信託は、信頼できる家族に財産の管理を任せながら、自分の意志で財産の使い方を決められる仕組みです。特に、認知症などで判断能力が衰えたときにも安心して財産を託せます。受益者の利益配分や財産管理の指定も柔軟にできるため、多様なニーズに対応可能です。
3. エンディングノートの記入と共有
エンディングノートに自分の思いや財産の一覧、通帳の場所などを記録や共有をしておくと、相続人の混乱を減らし家族の納得感を高める助けになります。
ただし、エンディングノートに法的効力はなく、あくまで補助的なコミュニケーションツールです。そのため、法的なトラブル防止策としては遺言書の作成などが必要になります。
身近なトラブル事例と回避のヒント
実際に起こりがちなトラブルと、それに備える方法も見ておきましょう。
例えば、長女が親の介護を担っていたのに、遺産が法定相続通りで分けられたとしたら、「自分だけが負担したのに」と不満が出て当然です。親が遺言書で「長女の介護に感謝し、このように分けたい」と明記しておけば、他の相続人も納得しやすくなります。
また、長男が実家に同居している場合、「家を売って現金で分けたい」とする他の兄弟との間で対立することもあります。こうしたときは家族信託で「住む権利」を守りつつ、他の相続人にも公平な取り分を用意すると円満に収まります。
資産が何にどれだけあるか不明な場合も、話し合いは難航します。エンディングノートや財産目録を残しておくだけで、手続きのスムーズさが格段に上がります。
親のもしもに備えて、思いやりの準備をしよう
遺産分けの話は、避けていてもいつかは向き合うときがきます。だからこそ、親が元気なうちにできる備えが、大切な家族の未来を守るカギになります。
法律に基づいた遺言書や家族信託、そして気持ちを伝えるエンディングノート。これらを活用すれば、誰に何を残したいのか、どういう気持ちで決めたのかが伝わり、争いを防げる可能性が高くなるでしょう。
遺産分割のテーマは話しづらいかもしれませんが、家族を大切に思うからこそ、今から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
出典
最高裁判所 令和6年 司法統計年報 3家事編
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方
一般社団法人家族信託普及協会 家族信託とは?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー