父が急逝し、葬儀費用を父の預金からおろしたいのですが、兄から「遺産分割が終わるまではおろせない」と言われました。自分たちのお金でどうにかするしかないでしょうか…?

配信日: 2025.09.01
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父が急逝し、葬儀費用を父の預金からおろしたいのですが、兄から「遺産分割が終わるまではおろせない」と言われました。自分たちのお金でどうにかするしかないでしょうか…?
父親の急逝直後、葬儀費用をどのように賄うのかお悩みの方もいるのではないでしょうか。金融機関が死亡の事実を認識した時点で被相続人の口座は凍結されてしまうため、「遺産分割が終わるまで預金をおろせない」と言われると手が出せず途方に暮れてしまうことでしょう。
 
しかし、遺産分割前でも一定の条件下で相続預金の一部を引き出せる制度や、立て替えた葬儀費用を後で整理する方法などがあります。この記事では、相続開始直後の預金の取り扱いについて解説します。
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遺産分割前の相続預金の引き出し(払戻し制度)を使う

平成30年の民法等改正により、遺産分割が終わっていない段階でも、相続人が当面の生活費や葬儀費用など急を要する支出のため、被相続人の預貯金の一部を金融機関から払戻しを受けることができる「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」が整備されました。
 
この制度は相続預金が遺産分割の対象となる場合に各相続人が単独で利用でき、家庭裁判所に判断を委ねなくても金融機関窓口で一定額の払戻しを請求できます。
 

引き出せる額の計算方法と上限

相続人が単独で引き出せる額は、相続開始時の預金残高に対して次の通りです。
 
・相続開始時の預金残高×1/3×当該相続人の法定相続分
 
ただし、同一金融機関からの払戻しには150万円の上限があります。例えば、法定相続分が2分1の相続人が600万円の預金から請求する場合、600万円×1/3×1/2=100万円が引き出せる金額の目安です。
 

払戻し制度の手続きの流れと必要書類

払戻しを受けるためには、請求者が相続人であることと法定相続分が確認できる戸籍類(被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、請求者および他相続人の戸籍など)、相続関係を示す書類、払戻しを希望する人の印鑑証明書などを用意します。
 
金融機関により必要書類が異なるため、事前に窓口で確認しておきましょう。また、他の相続人に相談したうえで請求すれば、余計な対立を避けやすくなります。
 

注意点

払戻しを受けた資金は遺産分割の際に既に取得したものとして計算されるため、他の相続人との調整が必要です。また、相続放棄を検討している場合は、払戻しを受けたことで手続きに影響が出る可能性があるため、事前に専門家に確認しておくことをおすすめします。
 

葬儀費用を立て替えた場合の清算と整理

葬儀費用は被相続人の死亡後に発生する支出であり、厳密には相続債務ではありません。しかし、相続人の1人が葬儀費用を立て替えた場合、遺産分割協議でその立替金を他の相続人との調整要素として取り扱うのが一般的です。立て替えた金額は、後の分割時に「先取り分」や清算対象として扱われます。
 

証拠の残し方

後日トラブルに発展しないよう、葬儀費用を支払った領収書や契約内容、誰がどの費用を立て替えたかを書面化したもの(葬儀費用立替確認書など)を作り、他の相続人に通知しておくと有利です。争いになったときに立証できるよう、支出の日時・用途・金額を明確に記録しておきましょう。
 

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相続人間の対立があるときの解決方法

相続人の間で遺産分割について話し合いがつかない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てできます。調停では裁判所が双方の意向や資料を整理し、合意形成を支援します。申立書には、相続関係の戸籍、被相続人の財産の内容、立替費用の証拠(領収書等)などを添付することが一般的です。調停が不成立の場合、自動的に審判へ移行する仕組みです。
 

調停から審判へ移行するとどうなる?

調停で合意が得られなければ、裁判所が事情を総合的に勘案して分割方法を決める「審判」に移行します。審判に対して不服があれば告知後2週間以内に不服の申し立てをすることができますが、不服がなければ審判が確定し、その内容にしたがって配分が行われます。
 
こうした制度を通じて、立て替えた葬儀費用や仮に引き出した預金の扱いを含めた全体の清算が正式に決まるのです。
 

遺産分割前でも葬儀費用は預金から充てられるケースがある

遺産分割が終わっていなくても、一定の条件下で被相続人の預金の一部を払戻し制度で葬儀費用に充てられます。立て替えた葬儀費用は記録を残し、遺産分割協議や調停の場で調整を図る準備をしておく必要があります。相続人の間で対立があるときは調停を活用して解決を目指しましょう。
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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