父から「預金3000万円は長男のお前に相続させたい」と口頭で言われました。この”口約束”だけで遺言は成立するのでしょうか?

配信日: 2025.09.11
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父から「預金3000万円は長男のお前に相続させたい」と口頭で言われました。この”口約束”だけで遺言は成立するのでしょうか?
親から財産を相続する際、「書面はないけれども生前に遺産を相続させると伝えられていた」というケースもあるでしょう。しかし、基本的に口約束だけでは正式な遺言とは認められないことに注意が必要です。
 
今回は、口約束だけでは正式な遺言にならない理由や、口頭で伝えた内容が正式な遺言と認められるための方法などについてご紹介します。
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口約束は基本的に正式な遺言にはならない

民法第967条において、「遺言は、基本的に自筆証書、公正証書または秘密証書によってしなければならない」と示されています。ただし、災害や病気などが理由で法律で定められている遺言書が作成できない場合は、特別方式遺言(危急時遺言など)が認められることもあります。
 
さらに、民法第960条では「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」と示されていることから、例外を除いて口約束だけでは正式な遺言として認められません。
 
もし、父親1人で遺言を用意する場合は、自筆証書になるでしょう。
 
民法第968条によると、自筆証書の場合遺言として認められるのに必要な条件は、以下の通りです。

・遺言を残す本人が自分で氏名や日付、遺言の全文を記載して印が押されている
 
・相続させる財産の目録をパソコンなどで作成して残す場合、目録1ページごとに遺言を残す本人の自書による署名と印が押されている
 
・記載した遺言書に変更が生じたときは、遺言を残す本人が変更場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、かつ該当箇所に印を押している

父親が亡くなったあとに、遺産分割協議で「口頭で相続させると伝えられた」と言っても、正式な遺言書がなければ、父親から伝えられた通りに相続できない可能性があります。
 

口頭で伝えることが遺言になる例とは

書面に残す方法のうち、公正証書遺言は自分で書かない形式の遺言書です。民法第969条では、公正証書による正式な遺言の条件として、以下が示されています。

・2人以上の証人の立ち会いがある
 
・遺言を残す本人が、遺言の内容について公証人に口頭で伝えている
 
・公証人が聞いた内容を筆記し、遺言を残す本人と証人に読み聞かせる、もしくは閲覧させる
 
・遺言を残す本人と証人により公証人が記載した遺言の内容が間違いないかを承認したあと、遺言を残す本人と証人のそれぞれが署名をして印を押す(遺言者が署名できない場合は、公証人がその理由を付記することで署名に代えることができる)
 
・公証人が遺言書は上記の全ての条件を満たしたうえで書かれたものであることを付記し、署名と印を押している

つまり、自筆証書形式でなく公正証書形式であれば、父親からの口頭でも遺言として認められる可能性があります。ただし、公証人が必須のため、父親から聞いた文章を自分で書いただけでは遺言書にはなりません。
 
父親が自分で文字を書けないなどの理由で口約束をした場合は、公正証書による遺言書を作成してもらいましょう。
 

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遺言が有効だったときの相続税の金額例

ここでは、以下の条件で遺言通りに相続した場合の相続税額を計算します。

・遺言により長男が預金3000万円、次男が2000万円の実家を相続
 
・法定相続人は長男と次男の2人のみ
 
・基礎控除以外の控除は考慮しない
 
・法定相続人以外で遺産を受け取った人はいない
 
・負債や葬式費用などは考慮しない

相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人数」で求められます。今回のケースでは、基礎控除額は4200万円となるため、課税遺産総額は合計800万円です。
 
まず、課税遺産総額を法定相続分通りに2分の1、400万円ずつと仮定して、長男と次男の負担する税額を求めます。国税庁によれば、400万円のとき、相続税率は10%のため、それぞれ40万円ずつ合計80万円です。
 
遺言などで法定相続分と異なる相続をした場合、この合計金額を実際の相続割合で分けます。長男が5分の3を相続しているため、負担する相続税額は「80万円×5分の3」の48万円です。
 

口約束だけでは基本的に正式な遺言にはならない

正式な遺言と認められるためには、基本的に書面に残す必要があります。口約束だけでは遺言とは認められないため、注意が必要です。
 
父親からの口約束を確実に遺言として残したい場合は、公正証書遺言を作成するのが適切です。その際は、証人2名の立ち会いのもとで父親が公証人に遺言内容を伝え、公証人が筆記し、署名押印を行う必要があります。
 
なお、法定相続分以外の割合で相続をした場合、相続税の負担もその割合に応じて変動します。相続税の負担割合についてほかの相続人とのトラブルを防ぐためにも、算出方法を理解し、正しい金額を明確にしておくことが大切です。
 

出典

e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第五編 相続 第七章 遺言 第一節 総則 第九百六十条(遺言の方式)、第二節 遺言の方式 第一款 普通の方式 第九百六十七条(普通の方式による遺言の種類)、第九百六十八条(自筆証書遺言)、第九百六十九条(公正証書遺言)
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和7年度版) 財産を相続したとき
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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